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【雨降って地固まる|琉球新報 落ち穂 vol.11 2020年12月15日掲載】

(これまでに執筆した記事を振り返っています。)
去った12月5、6日に南城市糸数城跡で予定していた野外音楽イベント「Soundscape Okinawa」が天候不良により延期になった。そのため再調整で大変だったが、周囲の方々や関係者の「お疲れ様」という労いの言葉に救われた。
 
このイベントは、同じ県内に住んでいてもほとんど接点の無い、他所者の私たちが南城市玉城糸数区へと足しげく通い、短期間ではあるが地域の方たちと交流して作り上げたのが特徴的である。
 
例えば、歴史や地域について学ぶフィールドワーク以外にも、ベルリン在住のアーティスト田口行弘さんの映像作品から着想を得て、マンホールのデザインを型取りしたスタッフTシャツを制作するなどした。当初、その手法に驚いていた区長さんも、いつしか笑顔になって、配色についてアドバイスしてくださるなど、楽しんでいただいたようだ。その時に、お互いの心の距離がぐっと縮まったように感じ、そこがアートの力だと思い嬉しかった。

また、県内のドイツ関係者にも支えられており、彼らとの交流は私にとって、英国で経験した沖縄県人会の集まりに似ている。ドイツでは「スタムティッシュ」という模合に似た集まりがあり、毎月、同じ居酒屋で集い、語り合う習慣があるという。沖縄と欧州の類似点や感性が響きあう理由として、歴史への関心と芸術文化に対する造詣の深さがある。そこにはお互いを助け合ったり、連携したりというユイマール精神もしっかりと根付いている。

そんなローカルとグローバルな地域の要素が掛け合わされて生まれたのが、音の野外術館「Soundscape Okinawa」だ。ジャンルを超えた音楽、クラッシック、歌三線、アフリカ楽器、エレクトロニック、ヒーリング音楽などが糸数城跡の自然を舞台に共鳴する、これまでに無い経験だ。

この記事が掲載される頃には、イベントは終了しているが、「雨降って、地固まる」というように、開催云々よりも、ここに至るまでの制作過程や関わった人々の交流が非常に重要であったと思う。この場を借りて、ご協力いただいたり、ご参加いただいた皆様へお礼を申し上げたい。

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