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着替えるように暮らす 子連れお試し移住にも最適な「デュアルスクール」とは?

はじめに

コロナ禍もすっかり生活の一部となった昨今、いかがお過ごしでしょうか。在宅ワークもオンライン授業も「一部の人の特別なこと」ではなくなったように感じます。今回は、2016年〜2018年に小学生の息子を連れて今でいう「子連れワーケーション」を実施した時の話と、その先にある「着替えるように暮らす未来」のお話をしようと思います。

数日なら学校を休ませることもできるけれど

家族

株式会社ヒトカラメディアに所属していた2015年の秋、当時息子は小学1年生。会社の同意を得て、当時の軽井沢支店にて、1日子連れのお試しリモートワークを実験しました。子供は、東京の学校を欠席。ベネッセさんの教材や、ゲームアプリてんこ盛りのタブレットなどを荷物に入れて、いざ軽井沢へ。結果は散々でした。

私も同僚も上司も、東京で仕事をしている時と同様の量を持ち込んでいたので、ワーク(90%)+バケーション(10% 往復の移動+帰りの買い物)の大人は子供の相手をできません。大人がやってることに興味津々の息子をいなしながら、心の中で上司と同僚にお詫びしつつ、普段の50%程度の集中力で仕事をする最悪な時間でした。

いっそ、日中は子供を学校に通わせられればよいのに。

徳島県からはじまった「デュアルスクール」

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2016年春、ヒトカラメディアが徳島県にシェア型のサテライトオフィスをもっているご縁で、『デュアルスクール』の実証実験に参加してみないかと声がかかりました。徳島県で私がリモートワークをしている日中は、息子は滞在先最寄りの公立小学校に通うことのできる制度(※)。住民票の異動も不要。まさに願ったりかなったり。
(※1回目の様子は下記のブログをご覧ください)


デュアルスクールでは住民票の異動なしに滞在地の公立の小中学校へ通うことができるのはなぜか?それは「区域外就学制度」がポイント。従来の「区域外就学制度」は卒業間近の学区外への転出やなんらかの事情で住民票のある学区の学校に通うことが困難な場合、学区域越境して通学することを認める制度です。2017年夏、「地方移住に伴う区域外就学制度の活用について」の文科省からの通知により、既出の理由以外でも区域外就学制度の活用が認められるようになりました。

徳島県型の「デュアルスクール」以外にも類似制度あります

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徳島県型の「デュアルスクール」は地方へ滞在する期間は、専任講師が1名つくのが特徴でした。他にも地域地域による特徴があります

●長野県塩沢市

小規模校への国内短期留学。2022年1月25日現在、7つの学校が対象。ただし、新型コロナウイルス感染症の発生状況により受け入れをお断りする場合があるとのこと。

●秋田県

夏休みが短く・冬休みが長いことを利用した1週間弱の「短期留学」と、自分の都合に合わせて長期滞在も可能な「長期留学」があります。下記は令和3年度の募集要項。

「区域外就学制度」を活用した事例は他にも


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「デュアルスクール」や「国内留学」という名称は使われず、行政のWebサイトでも紹介はされていないけれども、「区域外就学制度」を活用して、実際に一定期間地方で暮らし・普段は都市部で暮らすが行われている地域があります。

●新潟県湯沢 

実際に体験した方のブログより。昔から、ウィンタースポーツが盛んなエリアであることもあり、スキー・スノボ大好き一家が冬の間滞在したり、宿泊施設にて冬の間だけ就労する方などが数多く長期滞在していた背景があります。


こども(小中学生)にとってのメリット・デメリット

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●メリット

・五感をフルに使う生活体験・自然体験ができる

・デジタル・デトックスができる

・居場所が複数できる

・地域によって、学校によって、クラスによって当たり前が違うと実感する

・都市では出会うことが難しい大人の働き方を知る

・親の働いている様子を身近に知ることができる

・放課後に自宅(滞在先)で友達と遊ぶことができる

●デメリット

・チームスポーツのスタメンの場合、長期に渡り練習を離れることで試合に出ることが難しくなる場合がある

→ 一方で、チームスポーツをやっていると、滞在先のクラブで参加する機会がある

・都市部の学校を不在にしている間、授業が進んでいくのはもちろん、その間の教室内で起きたことを知る機会がない

→ 今後、ICTを活用した授業の取り組みの一貫で、生徒と学校間での日誌のようなやりとりが生まれれば、情報の少なさも緩和できる

大人にとってのメリット・デメリット

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●メリット

・年次有給は、学校行事や看病のために確保しつつ、土日や平日の隙間時間を親子で自然体験や生活体験につかうことができる

・アウトドアを楽しむ場合、移動時間が少なくてすむ

・働き方の自由度が増すので、不本意な転職をしなくてよくなる

・親子時間の確保や自分の余暇時間の充実のために、仕事の生産性をあげるようになる

・在宅勤務のノウハウが蓄積するので、会社に所属する他従業員にも、リモートワークのコツを伝えることができる

・新たなアイデアや体験によるビジネスの種をみつける機会が増える

●デメリット

・滞在先のWi-Fi環境が貧弱だと、勤務中のストレスが増えてしまう

・滞在先が一箇所で一人の場合、勤務時間中の孤独感が募る

→ 近隣に時間貸しのシェアオフィスがあるとよい

おわりに

青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」によると、自然体験が豊富であること、生活体験が豊富であること、それぞれが自己肯定感と相関を示すことがわかりました。「令和3年版 子供・若者白書」では、居場所が増えるほどポジティブ感が強まることもわかっています。

複数の居場所、生活体験、ぴったりしっくりくる生き方。いずれも実体験なしにはわかりません。変化の多い時代だからこそ、自分の直感を養う機会をいくつももちたいものです。