おばあちゃんのごはん

小さいころおばあちゃんと住んでいた。
おじいちゃん、おばあちゃん、母、兄、わたし。
母が働いていて、おばあちゃんがご飯を作ってくれていた。
おばあちゃんのごはんは、なんというか微妙だった。
多分基本はおいしかったと思うが、まずかったもの、口に合わなかったもののほうが記憶に残るんだな、と今になると思う。
油は捨てずに何度も使うので、揚げ物は真っ黒だった。
冬の週末は鍋が多かったが、ポン酢で食べる水炊きは、子供のわたしにとって、残念以外の何物でもなかった。
おばあちゃんのよく作ってくれたもののひとつに、おみいさん、というものがあった。
何が入っていたのか、詳しくはわからないが、どろどろの里いも、ニンジン、少量の肉、その他を味噌で溶いたものだったが、残念を通り越して、食べるのがきつかった。
子供だったからかな、と思っていたが、最近母とおみいさんの話をして、母もおいしくなかったといっていた。
でも誰もおばあちゃんにご飯の文句を言わなかった。
思春期になって、私は正論をふりかざし、真っ黒の揚げ物を食べるとがんになる、などといっておばあちゃんを責めた。
悪かったな、とは思わない。
おばあちゃんが悪かった、とも思わない。
そのときそのときで、たぶんみんなが一生懸命だったのだろうと思う。
ご飯を作り続けたおばあちゃん。
家事の一切をおばあちゃんに任せて、いつも仕事を優先していた母。
嫌なことを嫌といえず、こじらせたおしていたわたし。
寡黙で厳しかったけど、おばあちゃんのごはんには全く口を出さなかったおじいちゃん。
あと兄。
おばあちゃんのおみいさんは食べたいと思わないけど。
私が出会った食べ物の中でも、ずっとこれからも記憶に残る逸品だと思う。
おばあちゃん、ありがとう。
おばあちゃん、ごめんね。

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