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支援学校の就労面談で、子どもがユーチューバーになりたいと言ったら②

前回は障がいを持つ子どもが「夢の職業を選択したがる理由」と「親はいつか亡くなってしまう」ということを説明する理由について触れました。

詳しくはこちら

今回はその続きです。

一人暮らしに必要な生活費を知る

子どもが将来のことを考えるとき、重要な部分が欠落している場合があります。

それは「収入がいくらあれば生活しているのか」ということです。

食費や家賃など大まかに見積もることはできているかもしれませんが、なんとなくのイメージでしか捉えられていないということがありますよう

親子間で、想定している生活費の金額のギャップが大きいと、就職に対するイメージが食い違い、話し合いの中で喧嘩の原因になるリスクがあります。

なのでらまずは「いくらあれば生活できると思うのか」と尋ねてみることが、きっかけとなります。

その上で、このくらいの金額が必要なんだよということを、伝えてみましょう。

生活費の具体的な金額を家族のなかで口にする機会は少ないのではないかと思います。

というのも、お金のことを子どもの前で話すのはみっともないという風潮があるからです。

でも、それではリアルなお金の価値を学ぶことはできません。

今の生活がこのくらいの金額で成り立っているという感覚があった方が、就労条件を考えるときに現実的な感覚を持って考えられるようになるからです。


僕の場合は、自分の給与額から、家賃や食費、電気代、貯蓄などの具体的な金額、収支状況に至るまで説明しました。

「いまの生活」という身近なところから例えると、お金と将来の生活はリンクしやすくなります。

ここまで具体的に説明すると、僕の子どもにも現実が伝わったようでした。

その上で、自分で生きていくための生活費について相談すると、現在の生活とのつながりを感じながら考え、話し合うことができました。


夢の職業を否定せず、就職の選択肢を絞る

生活費の現実について共有した後でも、子どもは芸能人になりたいと言いました。

芸能人になればお金の心配はないというロジックです。

その意見を、僕は否定できませんでした。

子どもにとっては、「生きていく上での希望」だったからです。


だから、就労先に芸能人という職業も含めて、労働内容や給与、選んだときにどのような生活になりそうなのかについて、話し合いました。

芸能人やユーチューバーが高等支援学校の実習先と比べて、将来の職業としてどうなのかということも考えていくのです。

ただ、芸能人やユーチューバーとして働く人が、どういう方法でなれたのかや、収支金額や就職倍率、想定される努力量などは、子どもが調べることはできません、

なので、親が調べていく必要があります。


たとえば芸能人だと、採用になるためにはオーディションに合格しないといけないこと、オーデションの内容や倍率など。

ユーチューバーなら1回再生の単価や、動画作成にかかる技術や設備費用などです。

もちろん、実習先の給与も比較します。

ただ、実習先の仕事内容は経験できるので、そこは省くことができました。


夢に触れる体験を通じて、現実と向き合う


自閉症や知的障がいがあると、頭の中だけで考えることには限界があります。

そういうとき、実際に体験させるというやり方も効果がありました。

支援学校の実習で行く先の企業では、実際に働く体験ができます。
それと同じように、子どもの希望する職業についても間接的に体験をさせてみるのです。

僕の子どもは妻の計らいで、オンラインで芸能事務所のオーディションを受けてみました。

そして落選しました。

また、住みたいと言っていた東京にも2人で実際に訪れてみました。

東京は地方と違って、地下鉄や道が入り組んでいてわかりにくいと感じたようでした。


「東京で芸能人になる」という選択肢と並行して、高等支援学校での訓練や実習を通じて就労体験も進みます。

学校の実習では、当然厳しい意見を言われることもありました。

社会人として厳しい評価を伝えられたことは、自身の社会的需要について考えるきっかけになったようです。

子どもの進路は最終的に、経済的自立を目指し、その後に夢に向かってできることを探していくという内容でまとまりました。

そのとき、子どもは納得したのですが僕は将来的にも安定した職場に定住することを推したい衝動にかられました。

でも我慢しました。

親が決めた職業で将来的に失敗しても親は責任がとれないからです。


働きはじめた今でも、「芸能人になりたい」という夢は現実的ではないと考えています。

でも、そういう気持ちを持ち続けることに対して、いまの僕は肯定的に捉えています。

ただ、稼いだお金を使うだけの生活よりも、自身の方向性を模索している生活の方が、豊かな人生を歩めるのではないかと考えるからです。


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