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地方都市で粛々と

髪型を変える行動は、容姿を整える以外に気持ちを整理してくれる力もある。カットして床に落ちた髪の毛束を眺めながら、自分の内面にあった悪いものが取り除かれていく…と思った人も少なくないでしょう。午前中に髪を切ればその日の清々しく過ごせることが約束され、気が滅入った時にはそっと背中を押してくれるような軽快さを手に入れられる。髪型を変えることがコミュニケーションの潤滑油になる場合も。



自己紹介が遅くなりましたが、茨城県水戸市でnoiloniという小さな美容室を運営しているコバヤシナオキと申します。これまでもnoteを始めては中途半端に挫折しての繰り返しでしたが、懲りずにまた始めます。


美容室の有名な話といえばその数。コンビニや郵便ポストよりも多く、全国で約25万件 (2019年3月末の衛生行政報告書では251,140件) あり、約53万人の美容師が存在します。世の中がこんな状況なのでここから更に増えることは考え難く、どちらかというと減っていく一方でしょう。他人事ではないので手遅れにならないよう今できることを取り組み、アフターコロナなのかウィズコロナなのか、何が起こるか予測できないからこそ、知識も体力も備えていきたいですね。もう元に戻ることはないですから。



理美容業界はサービスの性質上、濃厚接触が避けられない。休業要請の対象にならなかったことに対して思うこともあるけどここでは言わない。決まったことに対して届かない意見をnoteに吐露しても無駄なエネルギーの消費だから。そして美を提供する立場の人間の言動として正しいのかと考えると自分の美的感覚には相応しくない。



安定的な生活の中で必要とされた理美容室。とはいえリスクは0ではない以上、堂々と呼びかけることもできない今、Youtubeやzoomでのオンラインでの髪型の相談をしたり、ヘアアレンジやカットのやり方をレクチャーすることに力を注ぐようになるのは自然の流れでしょう。これからはVRを使ったレッスンの開発も進められています。美容師になりたての頃に有線から流れてくるDefTecのMy Wayを聞きながらシャンプーをしていた時には「オンライン美容師」なんて言葉が出てくるのは全く想像できなかった。



ただ、デジタル化やオンラインに移行することだけが「未来」なのかって疑問に思う部分もある。美容師向けの本はもちろん、経営、マーケティングの本もたまに目を通すが、個人的にはデザイナーと言われる方々の考え方がとても自分の考えとリンクしていく。特に原研哉さんの書籍や動画をたくさん見ているがこちらの動画で自分のそのモヤモヤした気持ちを晴らしてくれた。全部見応えあるけど、26:00辺りからでけでも見て欲しい。さらっと言語化して納得させるのって本当にすごいことだと思う。このように話している。


未来っていうのは12345、その次は678が未来だと思ってたんだけど、未来はそうじゃなくて、4と5の数字の間に無限の数を見つけることに実は未来がある。日常の中にものすごいデザインの発見がある。




目の前の人の髪を綺麗にするということは大前提で、世の中には2種類の美容師がいる。


「スポットライトを浴びたいか」

「スポットライトで照らしたいか」


表に立ちたいか、裏方でいたいかの差であって、どちらも自分の中の理想の美容師像に向き合っている。僕は後者の考え。最初は華やかな表舞台に憧れた時も少しはあったけど、年を重ねるごとに自分自身を冷静に客観視できるようになった。「所詮は裏方」ではなく「黒子が良い」。自分自身の解像度が高くなった今、やるべきことは明確になっている。地に足つけ、頭雲抜け、愚直に前に進むのみ。今は自分を必要としている人に光を照らしたい。




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