人は集団の圧力に弱い

問題です。

下の写真をみて、左側の線と同じ長さのものは
右側のA.B.Cの内どれでしょうか?

一瞬、考えはしたと思いますが、上のカードでは、明らかに「C」が正確です。

これはアメリカの社会心理学者ソロモン・アッシュが行った同調実験です。

このテスト、1人ずつで行うときには正解率100%だったのですが、7人同時に行う時に6人の「サクラ」を仕込んで、その6人にわざと間違った回答させると、正解率が実に68%まで下がってしまったのです。

では、どうして1人ずつで行った時と7人同時に行い、6人のサクラを仕込んだ時では結果が違うのでしょうか?
そこには下記のような理由があります。

・おろかだと見なされたくなかった
・1人だけ逸脱したくなかったから集団に従った
・研究の結果を台無しにしたくなかった

実験後、間違った答えをいってしまった被験者の「声」を聞くと、2つのパターンが見えてきました。

(同調圧力に屈した場合)
1)間違っていると知りながら、間違った答えを言った。                2)みんなが正しい答えを言っていて、自分が間違っていると思うようになった。

 1)の場合には、「同調圧力」に対して「抵抗」する心理が残っているといえます。「自分は間違っていない」と思えているのですから、周りが「間違っている」と、事実を認識できているのです。

 2)のケースは、「同調」の程度が、1)よりも、さらに「高い」といえます。実験を繰り返していって、みんなが自分とは違う答えをいうので、だんだと「自分は間違っていて、彼らが正しいに違いない」と信じるようになってしまったのです。

以上のことから、「自分勝手な解釈」や「思い込み」をしやすい人は、「同調圧力」に屈しやすい傾向があるといえます。

(同調圧力に屈しなかった場合)
1)自分の判断に自信をもっていて多数派の意見は考慮しなかった。
 2)多数派が正しいとは思っているものの、自分が見たままのものを言わずにはいられなかった。

1)のパターンの人は、自分の答えに自信があり、自分が誤っていないことに強い確信をもっていました。

2)「どう考えてもCが同じ長さに見えて、自分は間違っていない」という「自己信頼感」がぎりぎりのところで、同調圧力に「抵抗する力」を生み出したと考えられます。

以上のことから、「他人の意見」よりも「自分の正しさ」に焦点を合わせる思考タイプ型の人物であることです。また、その「自分の正しさ」をいかに貫くかに、日頃から心のエネルギーを使う人であるということです。

アッシュ実験は、「同調」に関する心理実験として有名です。その語られ方は、「多くの人の意見を前にすると、人は集団に負けて自分の意見を簡単に変えてしまう」と、人間の「弱さ」に焦点をあて結論づけられるのです。

でも、アッシュ博士は、必ずしも、人間の「弱さ」ばかりを強調したかったわけではありません。
アッシュ博士は次のようにも述べてます。

集団の中に入ると、人はその場を尊重しようとしたり、他人を理解しようとして気をつかい、その結果として、集団に「引き寄せられる」という「同調」が起きるのだと。

特に日本人は""右向け右!""の精神が今でも根強く残っており、他の国の人から""自分の意見がない!"" ""弱い""など思われるかもしれません。

しかそれが日本人の美点であり、強さなのかもしれません。