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かめの視線

『うさぎとかめ』って知ってるよな。
あの話って、うさぎのように油断したらダメだよっていう話でも、かめのようにコツコツ頑張りなさいって話でもないんよ。
あの話で伝えたいことはね・・・」

高校1年生の秋、僕は野球部でレギュラーを目指していた。

先輩は確かに上手い。
でも練習への取り組み姿勢は自分の方が上だ。今はかめでも、最後にはうさぎからレギュラーを奪ってやる。
ライバル意識だけが強くなり、しだいに相手を蹴落とすことばかり考えるようになっていた。

なのにどうやっても先輩からレギュラーを奪うことができない。結局、競争に負けた僕は落ち込んでやる気を失ってしまった。

そんなときに、別の先輩がしてくれたのが冒頭の話だ。

「『うさぎとかめ』って知ってるよな。
あの話って、うさぎのように油断したらダメだよっていう話でも、かめのようにコツコツ頑張りなさいって話でもないんよ。
あの話で伝えたいことはね、本当の競争相手は「他人」ではなく「自分」だということなんよ。

うさぎはかめを競争相手にしていたから、大幅リードで油断してしまった。
かめはうさぎではなく「ゴール」を見ていたから、距離を積み重ねることができた。
つまり、相手を超えようとするのではなく、昨日の自分を超えられるように一歩ずつ進みなさい(成長しなさい)ということ。

そして先輩はこう続けた。

「競争相手は昨日の自分にする。
ライバルに対しては、勝つことを目的に競争するのではなく『学ぶこと』『成長すること』を目的にする。
そうすればライバルは倒す対象ではなく、学ぶべき・尊敬すべき対象になる。自分を成長させてくれる大切な存在になるんだよ。

結局、先輩からレギュラーを取ることはできなかったけど、たくさんの技術を教わり、自分たちの代ではレギュラーになることができた。
そして何よりも、この「かめの視線」は、社会人になった今でも自分の成長を支えてくれている。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
この話が誰かの夢の実現につながりますように。

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