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ひとりで生きるの向いてないんじゃない

10年以上一人暮らししてきて、ひとりでいることが当たり前になってから、ひとりがいちばん楽だと思っていた。

内向型だし、疲れやすいし、初対面からすぐに距離を詰めてくるような距離感がバグっている人が苦手だし、集団行動も嫌い。

HSPなこともあってひとりでいるのがいちばん消耗しないはずなのに、反面ずっとひとりで家に閉じこもっていると、なんだか知らないけどぜんぜん力が出なかった。

だんだん気分が落ち込んでくるし、ソファにひっくり返ったまま気分が上がることなく、生産性ゼロな一日が終わるのだ。

仕事で誰かに会う平日の方が元気で、週末誰とも会わないと底辺まで気分が落ち込んでいることもザラだった。

わたしの気分は、仕事始めにおはよう!と言ってくれる同僚や周りの人によって保たれていて、朝どんなにどんよりしていても、一日が終わる頃にはみんなに引っ張られて元気になっている。
そんな毎日だった。
二十代のころの情緒が不安定だった時なんかはとくに。


今はそこまで不安定じゃないので、ひとり行動や一人旅を楽しむ余裕くらいはあるし、ひとりでいるのだってそれなりに好きだと思う。

でも仕事を長い間していなかった時期や、社会にまったく関わる必要がなかった何回かの時期(ニート期)は、わたしは毎回、完全無気力になってなにもすることができなかった。

ほんとうの意味でひとりになると、なんの力も湧いてこなくなってしまうのだ。

誰かのためじゃないと、もしくは誰かと一緒じゃないとがんばれないし、そもそもがんばる理由が見つけられない。

だれかを守ろうとしたり、力になろうとしたり、同じ目標に向かって一緒に誰かと協力したりする時の、あのどこから湧いてくるのだかわからないパワーはどこからくるんだろうか。

30代にしては転職も多くて、自由きままに選んできたと思った仕事でさえも、わたしは誰かの存在があったからやってこれていたんだと思った。

もちろん仕事そのものや自分が誰かのためになることもうれしかったけど、本当に楽しかったのは自分と同じ温度でクライアントのことを一緒に考えたり、議論できたり、時には本気で仕事でケンカができたり、助け合える仕事仲間がいたことだった。

働き方を変えたり場所や環境が変わってそれらの人たちと離れた時、「ああ、あのチームだったから楽しかったんだ」と思った。

時間や場所が融通がきくようになって、前よりもっと恵まれた環境で働いているはずなのに、あのときみたいな楽しさをまるで感じないのはみんなが居ないからだった。
なのにわたしは職種さえ同じだったら、ひとりでも問題なくやっていけるんだろうと思っていた。

なんで、自分ひとりの力で全部上手くやって来れていた気になっていたんだろう。

一度そういう環境に身を置いてみればわかるが、自分が「本当に良い仕事がしたい」と思った時、同じ温度で一緒に仕事をしてくれる人たちの存在というのはありがたすぎて言葉にできないくらいの一体感や感動がある。

一人じゃ絶対できないことでも、チームになって誰かの力になることができたとき、背中を預けられるなにか同士のような感覚になるというか。

自分がいちばん今の仕事へのモチベーションが高かった頃、そういう稀有な関係性の仕事仲間に恵まれていたのに、わたしはいつも自分一人でなにかをやりとげている気になっていて、誰かの力で成り立っていたことに気づいていなかった。

ひとりが好き、ひとりがいちばん気楽。

ずっとそう思ってきたのに、周りの人たちに支えられてきたことをかえりみることができなかった自分の未熟さと視座の低さがいまごろとんでもなくアホみたいに思った。

人間関係は疲れるもの、ストレスが溜まるもの。

そんな思い込みで苦手意識を持っていただけだったのかもしれない。かならずしも、ぜんぜんそんなことばかりじゃなかったのに。

ピラミッド社会のようなトップダウン型の組織は今でも嫌いだし、干渉されるのも指図されるのも管理されるのも嫌いだ。

やっぱり仕事は自分のペースでしたいし、縦社会は性に合わないけど、横並びでフラットな、得意分野を分担できるような組織もしくは仕事仲間とだったらきっと楽しいんだよな、と思った。

HSPなこともあって必要以上に人間関係に警戒したり、傷つかないように予防線を張る癖がずっとついてしまったけど、なんでもかんでも決めつけて遠ざけていたら大切なものまで見失ってしまう。

そもそもわたしは一人で生きるのに向いてないということをそろそろ自覚した方がいいように思う。実際向いてない。

一人「も」好きだけど、基本的には誰かいないとダメだ。もう認めなさい。そうしないと良い仕事もできないし、あのどこからか湧き出てくるパワーが充電切れになるのだから。

とりあえずあしたからは、「ひとりがいちばん楽!」といういままで何度も繰り返してきた根拠のない言い聞かせ呪文を、言うのをやめて誰かの存在に感謝しながら生きようと思う。

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