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充電式で、生きていく。双極性障害の暮らし【11】カウンセラーの友人と行動療法2

 それから何回かに分けて、取り組める範囲でその本に取り組むことになった。
 
 その本はいくつもの章に分かれていて、リストにチェックをしたり、自分が感じたことをノートに書き出したりした。
 分厚い本ですべては取り組めなかったが、読む範囲を友人が指定してくれた。また、小分けに少しずつ取り組んだので、文章も問題なく読めた。
 
 不安などの感情に圧倒されそうになったら、自分を傷つける行動から「注意をそらす」方法、五感を用いて気持ちを落ち着かせる方法、自分の感情に気づき、受け入れる方法など、さまざまなことを本から学んだ。
 
 友人に会った時は、取り組んだ内容の確認をし、感じ方を深めてもらった。マインドフルネスも載っていたのだが、難しくてできなかった。集中力が低下していたからかもしれない。
 
 中でも有効だったのは「コーピング思考」だった。
 不穏な考えがやって来た時、つらい状況に陥った時に、自分でリストアップした言葉を見たりして確認するという方法だ。
 
 私は「これは一時的なものに過ぎない」「私は大丈夫だ」と唱え続けた。
 デフォルトが超不安な状態だったので、めちゃくちゃ唱えていた。
 後は、見えているものの数をひたすら数えたり、見えたクッションの色を「赤、緑、黄色、緑…」など声に出したりしていた。
 
 最初は難しかったが、ずっとやっていると、だんだんと注意をそらせるようになってきた。いろいろな新しい考え方が、自分の中に入ってきた。

 「匂いで落ち着かせるの、いいよ」と聞いて、ルームフレグランスを買ったり、「安全基地(自分がもっとも安らげる場所)」の写真をスマホの壁紙にして、いつでも見られるようにしたりした。
 
 自分が落ち着ける環境を整え、対策を講じることで、絶え間ない不安に襲われるという状態から少しずつ変化してきた。

 隙をついてやってくる嫌な思考をブロックし、楽しいものや美しいものに目を向けられることが増えていた。
  漫画や本が読めるようになってくると、アプリで読める漫画を片っ端から読んでいったり、文章の本にも何冊かチャレンジしていた。イラストエッセイなどもよく読んでいた。

 1冊終わった頃には、「うつの底は、抜けたかも」という感覚になっていた。コーピング思考のおかげで、日中の過ごし方がだいぶ楽になっていた。
 病気になって「できなくなったこと」ばかりが目立ち落ち込んでいたが、そんな状態でも「できたこと」があるのだ。それも励みになった。
 
 友人は「あまみさん、よかったねえ!」と、ただただ喜んでくれた。
 感謝しかなかった。
 友人がいなかったら、もっとずっと、水の底で苦しんでいたかもしれない。
 少し、水面が近づいた気がした。

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