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④福祉の現場で培われた死生観、人生観

🧑‍💻:「看取り」を経験する中で、人はいつか
  死ぬんだ、明日もどうなるか分からないん
  だ、ということのリアリティーを感じたと
  いうことですか?

🙋‍♀️:「死生観」って難しいですよね。うー、
  やりたいことをやってやりたくないことは
  やらなくていいと思えたということも、例
  えば、病院で働いている友だちと福祉や介
  護について話をするんですけど、選択肢が
  たくさんある中で、人は毎日選択をして生
  きている
じゃないですか?

  でも、それがだんだん高齢になって身体的
  にできなくなって、自分で選べなくなって
  きたときに、それをお医者さんが決めるの
  か家族が決めるのかってとっても難しいじ
  ゃないですか?老衰して話せない、伝えら
  れないというときに。人の意思決定の支援
  ってどの現場でも難しい
と思うんです。

🧑‍💻:とっても難しいことだね。

🙋‍♀️:高齢の分野で言うと、ある人が食べるこ
  とがすごい好きで、人生において食を楽し
  みに生きてきて、その人は「口でご飯が食
  べられなくなったらもう何もしないで死に
  たい」って病院で言うんだそうです。そう
  いう人が結構いるそうです。
  だけど、実際にその人が話せなくなったと
  きに病院では例えば胃ろう(手術によって
  お腹に開けた穴にチューブを通し、直接、
  胃に食べ物を流し込むこと)など、いろん
  な選択肢があるんですね。それを家族が決
  めてしまうことも多いそうです。

🧑‍💻:そうなんだね。

🙋‍♀️:家族の気持ちもよくわかります。もし、
  私が最初から病院勤務だったら「何が何で
  も生かす」という死生観というのか、価値
  観になっていたと思うんです。
  私の友だちも特別養護老人ホーム(特養)
  の福祉の現場で働いてから、病院勤務にな
  ったんですけど、特養で働いた経験があっ
  てよかったってずっと言っています。
  福祉的な視点であれば、その人が食べたく
  ないというのであれば、90歳を超えて胃
  に穴をあけるなどの大掛かりな手術をする
  のではなく、好きなものを食べて痛みなく
  穏やかに点滴も入れずに最期を迎えてもら
  おうという、その支援ができる特色が福祉
  にはあります。
  もちろん場所によって、考え方によっては
  違うとは思うんですけど。

🧑‍💻:考えさせられますね。

🙋‍♀️:福祉の仕事によって大切な生き方を得ら
  れたなって思います。そしてさらにそれを
  担当している利用者に返していくこともで
  きるんです。
  例えば、「野菜をなんとか食べさせなき
  ゃ」って思うよりも、利用者さんも話をし
  ていて「好きなもの食べよっか」ってなっ
  た時にご家族に「なんか餃子が食べたいみ
  たいです」って言ったら「じゃあ買ってき
  ます」ってすぐに買って持ってきてくれた
  りするんです。
  本人が100歳近くになって食べたくない
  もの、昔は好きだったけど今は食べたくな
  いもの、それを意思表示しているのに「こ
  れ食べないと、長生きできないよ」とは言
  えないし、違うと思うんです。
  それができる仕事っていいなって思うんで
  す。

🧑‍💻:そういう価値観を持っている人がまわりにいることがいいよね。

🙋‍♀️:そうだし、職員のそのような仕事の姿勢
  をご家族が見てくれているので。

🧑‍💻:自分がどこで死ぬのかって本当に想像が
  つかないんだけど、でも最期の時に自分を
  理解してくれたり、ありのままでいいよ、
  食べたくなければ食べなくてもいいよって
  言ってくれる人がまわりにいる状況で死に
  たいな。

🙋‍♀️:そうですね。煙草吸いたいなら吸えばい
  い。寿命が縮まっても、それが気持ちいい
  なら吸えばいいとかあるじゃないですか。
  例えば若いカップルの喧嘩でも「彼氏が煙
  草吸うのが嫌だ」って話もよく聞くんです
  が、吸いたいから吸ってるんだし、本人が
  気にしないんならいいんじゃん?と思うか
  ら、自分に迷惑がかからないなら好きなよ
  うに生きてって自分はなったし…。

🧑‍💻:なった?

🙋‍♀️:なりました。

🧑‍💻:前はそうではなかった?

🙋‍♀️:以前は、彼氏が私に隠れて吸っているの
  を知ったとき「これは無理だ」ってなった
  んですよ。

🧑‍💻:うん。

🙋‍♀️:例えば、じゃあ結婚して子どもできたと
  きにパッとやめてくれないじゃんって。や
  められないくせに、その場しのぎで「その
  ときがきたらやめるよ」とか…言うのはい
  いけど…まあ…「やだ!」って言ってまし
  た。
  寿命が縮むし、お金もかかるしって今考え
  れば一般論を押し付けてたなって思うんで
  す。
  今は、吸いたきゃ吸えばいいし、飲みたき
  ゃ飲んで二日酔いになってもいいんじゃ
  ん?ってなってます。私に迷惑かけなけれ
  ばって。

🧑‍💻:ある種リバタリアニズムでもあるのか
  な?そこに直結していくのだとしたら、と
  ても興味深いですね。「今を生きる」とい
  うこととリバタリアニズムとの関連性です
  ね。お話を聞いていて、自分の中でその二
  つが背中合わせになりました。今後の自分
  の課題になるかもしれません。すみませ
  ん、話を戻します。

🙋‍♀️:私の中で変化がありました。福祉の仕事
  を3年間する中で。親にも老後の話をする
  ようになりました。施設に入るんだったら
  東京から行きやすいところにしてねって。

🧑‍💻:価値観の変化、いろんな変化があったん
  だね。

🙋‍♀️:まわりの人との付き合い方も変わりまし
  た。

🧑‍💻:ここまでお話を聞かせてくれてありがと
  うございました。最後に介護士を目指して
  いる人、福祉の業界に入る人に一言もらえま
  すか?

🙋‍♀️:人の人生百年のうちの最期のイベントっ
  て「死」だし「看取られ」だと思うんです
  よね。縁もゆかりもなかった方の人生最大
  の節目に立ち会えるということはなかなか
  経験できないことだと思うんです。もし介
  護、特養という道を通らなかったら自分の
  家族の老後について考えなかったと思い  
  す。福祉のいろんな制度を使う人の老後と
  か、障害のある方の老後とか考えるきっか
  けになりましたね。
  とにかく、今、めちゃめちゃ生き急いでい
  てすごい充実しています。

🧑‍💻:本当に今日は長い時間ありがとうございま
  した。これからの活躍に期待していますし、
  応援しています。またお話聞かせてくださ
  い。そのときはお互いがどんな成長をしてい
  るか、楽しみにしています。

🙋‍♀️:ありがとうございました!

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