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【島根県松江市】小泉八雲ゆかりの地への旅: 松江城/ 喫茶きはる

1. 福井県から大阪府、島根県松江市へ:小泉八雲がつないだ縁

1-1. とんとん拍子に島根県松江市に行くことになる

唐突な話だが、2022年11月、帰国中であった筆者は、島根県松江市へ一泊二日の旅をした。

実はこの旅、noteで執筆したこちらの記事がきっかけとなってとんとん拍子に実現したものである。

これらは、2022年秋から2023年にかけてイタリア・ミラノの文化複合施設・TENOHA(テノハ)で開催された特別展『日本の幽霊:赤い橋を渡ってはいけない』(Fantasmi & Spiriti del Giappone – Don’t cross the red bridge)をレポートしたものである。

この展示は、ギリシア出身のアイルランド人小泉八雲(ラフカディオ・ハーン; Patrick Lafcadio Hearn(1850 - 1904))の『怪談』に感銘を受けたフランス人アーティスト、ベンジャミン・ラコンブ氏のイラストをもとに構成されていた。

2022年9月にこの展示を鑑賞した筆者はこちらをnoteの記事としたアップロードした。

するとこの記事を読んでくださった島根県松江市の観光協会の方から2022年10月に連絡があり、島根県松江市の観光協会のメールマガジンのコラムを筆者が書くことになった。

さらに話が進み、筆者が2022年11月にイタリアから日本へ一時帰国することを伝えると、2022年11月下旬に松江市の市民講座に筆者が登壇させていただくことになったのである。

(講座の情報はこちら)

イタリア・ミラノの展示から、まるでわらしべ長者のような展開で話がとんとん拍子に進み、島根県松江市に行くことなったのである。


1-2. 福井県から島根県・松江市への旅

筆者は日本での滞在先である地元・福井県から松江市に向かうことになったのだが、大阪を経由しないといけないため、JRであっても移動に6時間以上の時間がかかる(空の便はない)。

時間がかかる上に始発で福井を出発しても松江に到着するのはお昼過ぎ、それならば3分の1ほどの運賃で行くことができる高速バスを利用しようと思い立ったのである。

高速バスならば夜のうちに移動すれば、次の日は朝から松江市で行動することができる。

まず夕方から夜にかけて福井県から高速バスに乗り大阪へ(3000円ほど)。

大阪・梅田から島根県松江市行きのバスが出るまでちょっと時間があったので梅田のスターバックスで休憩。

当たり前なのだがさすが梅田、閉店時間間際でもスタバはほぼ満席であった。

こちらはウィラーバス用の梅田のラウンジ。

バスに乗る人が利用することができるラウンジの方が空いていたため、これならば最初からラウンジに行った方がよかったかなと思ったり。

歴代のウィラーバスの椅子が展示されており、座り心地もとてもよかった(展示品であるだけではなく、実際に充電しつつ座れる)。

松江行きのウィラーバスが到着、四列シートであったが乗客はさほど多くなくゆったり座り眠ることができた。


さて、つつがなくJR松江駅前にバスは到着したが時間は朝4時。

これからホテルを取るのももったいないし、チェーンのネットカフェは駅前から歩くと結構な距離があるということで、駅前にあるネットカフェ兼カラオケボックスに入った。

こちらのネットカフェは、インターネットブースとカラオケボックスに分かれていたのだが、個室で一人の空間を確保することができそうだったのでカラオケボックスの方を選んだ。

お茶やポップコーンを取ってきてせっかくだからデンモクを触ってみることにした。

筆者が好きなイタリアのロックバンド マネスキン(Måneskin)の曲が七曲も入っていることに感動した。

これでMVも一緒に流れれば最高なのだが、イタリア語にちゃんとふってあるカタカナに少し感動した。

こうして外が明るくなる8-9時くらいまでカラオケボックスで一休みしたのであった。



2.朝の松江城散歩

朝の9時過ぎ、朝日が降り注ぐ中、松江駅前から松江城に向けて歩き出した。

水の街というだけあって橋からの眺めも美しい。

地元の人は車で移動してしまうのだろうが、およそ2kmの距離を20-30分くらいかけて歩く。

天気に恵まれたので歩くのも苦にならなかった。

松江城のお堀が見えてきた。


中をゆっくり歩いたり、天守閣に登る時間は残念ながらなかったので、周りを軽く散策。

2015年に国宝に指定された松江城は、2023年現在、全国に12しかない現存天守(江戸時代あるいはそれ以前に建てられた天守のこと)の一つである。

松江城の礎を築いたのは、豊臣秀吉と徳川家康に仕えた堀尾吉晴である。

堀尾吉晴は、孫の忠晴とともに、松江城とその城下町の整備に努め、1611年(慶長16年)に松江城は完成した。

その後、孫の堀尾忠晴は後継に恵まれないまま改易となったため、若狭小浜藩(現在の福井県)から京極忠高が藩主として松江にやってきた。

その後、京極家も跡継ぎがいなかったため、1638年に信濃松本藩から松平直政が藩主としてやってきた。

それ以降、1871年に廃藩置県の令が出されるまでおよそ230年間にわたって、松平家が松江を統治したのであった。

松江城

住所:〒690-0887 島根県松江市殿町1−5

開館時間:8:30-17:00

公式ホームページ:matsue-castle.jp


3.喫茶きはる

喫茶きはるは、松江歴史館の中にある和菓子とお茶を楽しむことができる喫茶室である。

筆者が「和菓子が好きです」と伝えると、観光協会の方が「是非ここに!」とお薦めしてくださった場所である。

畳ばりの松江歴史館は下足箱に靴を預けて入る仕様となっている。

畳の上を素足(タイツを履いていたが)で歩くのは何とも言えず気持ちよい、リラックスできる。

こちらがきはるのメニューである。

和菓子とお茶のセットのほか、ぜんざいや抹茶ゼリー、パフェ、ソフトクリームなどがある。


松江で松江の伝統的な和菓子を作り続けるのは、名工・伊丹二夫氏である。

ここでは、運が良ければ伊丹氏が菓子を創作する様子を見学することができる。

松江に和菓子文化が定着したのは、第7代目松江藩主の松平不昧(ふまい)公こと、松平治郷(1751-1818)が茶の湯文化を広めたことによる。

不昧公というのは、松平治郷の隠居後の名前であるが、不昧公は、松平藩の中興の祖として熱心に藩政に取り組んだ。

全て美しいのでついつい一つずつ写真を撮ってしまった。

京都で売っているような和菓子に比べて色も鮮やかで、サイズもわりと大きめな印象を受ける。

喫茶スペースからはよく手入れされた美しい庭園が見える。

色々迷ったが筆者がピンク色が鮮やかな山茶花という上生菓子。

白餡から作られるしっとりした練り切りをちびちび口に運びながらお茶を啜る時間がたまらない。

練り切りはそれだけだとのっぺりした味になる印象を受けるが、別の食材をトッピングしたり、組み合わせたりすることでするするお茶が進む不思議なものでもある。

個人的に、単体だとただ甘いだけというところや、手を加えることによって美しい形になるところが少し西洋のマジパンに似ていると思っている。

余談だが、お茶文化が発展した地域は、やはりその地域の藩主であるお殿様がいかに茶の湯を重視したがによると聞いている。

というのも筆者の地元の福井県には、和菓子屋さんはたくさんあるのだが、大半がテイクアウト専門でこのようにお抹茶と和菓子を同時に楽しめるお店というのは限定的である。

その一方でお隣の金沢や京都には、お抹茶と和菓子のお店がとてもたくさんある。

福井のお茶屋さんに聞いた話によると、現在の石川県では加賀藩のお殿様・前田家が煌びやかな文化を好んだために、茶の湯も発展した。

その一方で、現在の福井県では、越前国北庄藩(福井藩)を治めた松平家が武術や学問を好む家風であったため、茶の湯を含む文化よりも、文武が藩全体で推奨されていたという。

テイクアウトして自分の家でお茶を入れてお菓子を楽しむこともできるのだが、やはり和菓子好きとしてはお店でたてたお茶と和菓子を楽しむ時間は別格である。

和菓子とお茶でお腹がポッと温かくなった後は、小泉八雲記念館に向けて歩くことにした。

お城周りの地区一帯は綺麗に整備されており、とても歩きやすい。

こちらは小泉八雲記念館の近くにあるお蕎麦屋さん。

とても風情があるので一瞬こちらが記念館かと間違うかもしれないがお蕎麦屋さんである。

こちらは記念館の前にあるお土産屋さん兼カフェ。

物販スペースには人がたくさんいたので写真を写せなかったのだが、産地直送の野菜も販売しており、とてもリーズナブル。

買って帰りたいくらいだったが、帰りの荷物のことを考えて断念。

小泉八雲記念館についてはまつ別のnoteでまとめていくのでそちらを参照いただきたい。


喫茶きはる

住所:〒690-0887 島根県松江市殿町279 松江歴史館

営業時間:9:00-17:00(月曜定休)

公式ホームページ:matsu-reki.jp

参考:「松江の茶の湯」『山陰中央新報社』



4.松江市のホテルでゆったり過ごす夜

松江市でのイベントを終え、ホテルに到着した。

こちらのホテルは観光協会の方に紹介していただいたところで筆者がいつも利用するAirbnbやお手頃な宿とは大違い、とても豪華である。

海外で旅を続けていると、日本のホテルほど水回りが綺麗なところはないなと思ってしまう。

夕食は地元の居酒屋さんで美味しいお刺身など色々いただいたのだが、写真に収めたのがこれだけで…

鳥軟骨の梅和えと鳥ささみの梅だれかけ、どちらも梅づくしになったが、海外に住んでいるとなかなか梅を食べることができないので梅フレーバーに植えていたのであった。


次の日の朝、ホテルの朝食会場に向かった。

これもまた一人旅をしていると朝食なしの宿か朝食なしのプランを選ぶことが多いので、久々のホテルでの朝食であった。

イタリアのホテルの朝食といえば、ブリオッシュなどのパン類とシリアル、果物、チーズやハム、コーヒーとオレンジジュースといったようにシンプルな選択肢しかないので、日本式の豪華なホテルの朝ごはんに心が躍った。

和食も洋食もあり。

また筆者は、下の写真に写っているホテルの朝食独特のトロトロのスクランブルエッグが大好物である。

骨までバリバリ食べることができるようなこのような干物もなかなか海外では食べることができないので、この時は本当に何を撮ろうか迷った。


美しい朝焼けを見ながら和朝食をいただいた。

ミラノだと納豆3パックで4-5ユーロ(2023年2月現在 約570-710円)もするし、海苔やしらすもなかなか手に入らないので贅沢な朝食である。

小さなのどぐろの干物に松江特産の練り物、焼き海苔に海苔の佃煮、納豆、しらす、高菜、温泉卵などなど…

白いご飯によく合うものばかりである。


この日は夜福井に帰り着くまでまともに食事を取れないのでたっぷり朝食をいただいた。

先に言及したトロトロのスクランブルエッグを小皿に、ピンクグレープフルーツとパイナップルも追加した。

朝から1日のメインの食事をしたような日であった。


5.島根県松江市から大阪を経由し福井へ

観光協会の方に別れを告げ、松江市から大阪に向かうウィラーバスに乗った。

全く混んでおらずゆったり、数時間の快適な旅である。

松江を10時台に出発し、大阪には15時台に到着、16時台に大阪梅田から福井へ向かうバスに乗った。

この時、大阪から福井までのバスの乗客は筆者一人であった。

この大型バスを3時間、3000円くらいで一人で貸切なわけであるが、これだとガソリン代や高速代の方が高く着くのではと思ったほどである。

運転手さんによるとこれは路線バスなので乗客ゼロでもバスを走らせるそうである。

ただでえ、福井県は人口が少なく県外に出るための交通の便が悪いので、これ以上路線が廃止にならないことを祈るばかりである(やはりここ2-3年のうちに色々な高速バスが減便・休止した)。


夜20時前に福井市に到着、長い旅であったが、観光協会の方からいただいたお土産を帰宅後に広げてみた。

島根の特産のあんぽ柿やまるまるした肉厚なパプリカ、ありがたく自宅でいただいた。

またこちらはホテルの売店でバラ売りされていたの購入してみたお菓子。

見た目が鮮やかでふわっと軽い食感ながらも甘い豆がよいアクセントになっている。


以上、島根県松江市に訪問したレポートである。

関西や関東を拠点にしていると、なかなか山陰地方に行くことはハードルが高いが、思い切って行ってみて、街並みや空気を肌で感じることができた。

時間が許す限り、海外・国内問わず、このような弾丸旅をまたしてみたいと思っているのであった。

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