聴いてもらう経験が不足しているという前提から対話をデザインすること
ビジネスの現場でも「対話」が重視されています。
2022年のラーニングエージェンシー社の調査で、10年前と今の管理職像の比較調査が挙がっていました。
今求められる管理職象は”スピードと対話力、個人力の向上”とあるように、
対話を重視して1on1の施策を導入したり、部下やチームメンバーの意見を聴くことを職場、職場に影響を与えるライン管理職にも求める状況があると思います。
2022年1月のリクルート社の調査では、1on1ミーティング導入は7割の企業が導入済みとありました。
7割とは現場の切迫感も感じましたが、実態としてどれだけ機能しているでしょうか。
1、あるある聞き流しの実態
私が勤めていた職場でも、全社で上司部下の1on1、社員同士3人の対話の場の施策が導入されました。
しかし上司部下の1on1は、聞いているようで、上司の忙しさがなんとなく漂っているし、これまでの関係性を持ち込んでもいるので、タスク進捗やFBの他に今の生煮えの気持ちを素直に話すような、安全を感じられる環境ではありませんでした。
後者に至っては、業務で忙しいのに部内でもう一つ対話の施策が降りてきて、3人という激ムズなスケジュール調整の末に、何を話していいのかわからず、一定の聴く技術を持ち合わせていない人が集まり、趣味の話で”なんとか収める1時間”。諦めている人は内職をしながら適当に聞き流している実態もあります。
表面上は「他部署の人とも知り合えてよかったです」と言っているけれど、内心はもう2度とやりたくない、という怖い結果が待ち受けていたりします。
なぜこのような状況が起きるのでしょうか?
2、私たちは「聴いてもらう経験」が不足している
私は「相手の話に耳を傾けましょう」「関心を持ちましょう」「対話しましょう」など、
「相手の話を聴く」をスタート地点にするのは、難易度が高いのではないかと思うのです。
なぜなら、私たちはまず上手に「聴いてもらう」経験が不足しているから、というのが私の考えです。
「相手の話を聴きましょう」からスタートするのも、「聴いてもらいましょう」からスタートするのも同じことを言っているように感じるかもしれませんが、感覚的には違います。
話が戻りますが、10年前のマネジメントはトップダウン型が主流ですから、
ボトムアップ型で現状の課題意識や実行施策を引き出していくようなコミュニケーションを経験している人も多くはないという前提があります。
聴く行為は、純粋に相手に好奇心を向けて集中し、引き出したいという意欲を前提にします。
しかし実際にはその前に、自分の話を聞いてもらいたい人で溢れているという実態があります。
例えば会議一つとっても、我先に話し始める人、マイクの主導権争いをしているような場面に多々遭遇してきました(自分の戒めも込めて・・・)。
自分が見えた答えを口にしないと気がすまない状況。
このままでは、そういった勢いに負けて自分の意見を胸にそっとしまっておくこうと思う人も多くいると思います。
しかし、このような主導権争いの行動の背景に目を向けると、
言いたいこと、伝えたいこと、わかってもらいたいこと
あ、それは違う、など。各々が言いたいことをいっぱい抱えている状況があったりします。
これを吐露できずに、この人の話だけで終わってしまうのではないか。
聴きながら不安やフラストレーションを抱えている状況があるのではないかと推測しています。
結果、相手の話に集中できないし、また相手の話を聴いたことで自分の話すターンが短くなった、という苦い体験を積み重ねてきた人も多いのかもしれません。
このような状態だと、まず相手に集中して聴きましょうというメッセージを素直に受け取って実行することは難しいだろうと思うのです。
これでは、多様な意見を引き出したり、自律的な人材を育てるところまで施策を根付かせるのは難しいはずです。
3、「聴いて欲しいモード」から「聴くモード」への転換
「聴いて欲しいモード」から「聴くモード」への転換が必要です。
この転換を起こすには、聴くためのレディネス(前提となる知識や経験など)≒ 本人の成功体験が必要だと考えています。
だからこそ、「相手の話に耳を傾けましょう」ではなくて、
まず「あなたの話を聴いてもらいましょう」というメッセージからスタートしませんか?という投げかけです。
このスタート地点を踏まえた上で、では具体的に聴くためのレディネス、
つまり「聴いてもらった」という成功体験をどのように作り出すことができるかを考えていきたいと思います。
以前に実施したワークショップから少し活かせそうなエッセンスがありました。少し長くなったので次の記事でシェアしていきます。
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