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『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(1987)未知との遭遇かも?

幽霊も一人二人と数うべき   宇多喜代子


実は、ホラー苦手。苦手だったのだが、何故か観てしまった。二十年くらい前だと思う。
当時、香港の映画といえば、ジャッキーとその一味か、ブルースリーしか観たことがなかったのだが、今作を観て、幽霊役のジョイウォンに興味を持ち、色々観た結果、カンフーものではない、「香港ノワール」というジャンル(代表作は『男たちの挽歌』(1986)だろうか)があることを知った。

これは大きな収穫だったのだが、それはまた別の機会に。

ちなみに、ジョイウォン関連で観たのは、
『傷だらけのメロディー』『殺したい妻たちへ』『ジョイ・ウォンの緑の大地』『大丈夫日記』『ゴッド・ギャンブラー』『風にバラは散った』『ジョイ・ウォンの霊界伝説』『スパイゲーム』『銃弾に追われた街』『ジョイ・ウォンの紅い愛の伝説』『ジョイ・ウォンの幽霊伝説』『復讐は薔薇の香り』『シティーハンター』『北京原人 Who are you?』

『北京原人』は置いといて、Wikipediaで確認したのだが、よくこんなに観てるなと。
というのも、今のようにネット配信のなかった時代、ビデオレンタルしか選択肢のなかった時代に、しかも劇場公開のあまりされることのない作品であるのに、これだけのものが揃っていたとは。流行っていたのだろうか?

さてお話だが、無一文の書生が、雨をしのぐため荒寺で一夜を過ごすことになった。どこからともなく聞こえてきた琴の音に誘われた書生は、琴を奏でる美女と出会った。

この美女、実は幽霊なのだが、知らぬは書生ばかりなり。で、書生以外の登場人物はもちろん、観客側も分かっており、「志村、後ろ後ろ!」状態。

この幽霊は、男を誘惑し、油断しているところを別の何者かが襲う。この様子を見ている女の幽霊は、なぜか涙を流し、悲し気な表情を見せていたので、この何者かに無理やりやらされているのではないだろうかと推察される。

今作を観ていると、色んなお話を思い出した。
・書生の背中にお経が書かれていたため、幽霊が逃げた→耳なし芳一
・幽霊が冷たい息を吐く→雪女
・道士が術によって妖怪を倒す→陰陽師
・何者かの造形①→『ゴジラvsビオランテ』のビオランテ
・何者かの造形②→「絵本百物語」の豆狸

これだけで、だいたいどんな感じなのかわかると思うのだが、これだけの作品を取り入れたのかということではなく、逆にこれらの作品が今作の影響を受けているのだ。

というのも、
1782年 耳なし芳一の元とされる「臥游奇談」
1841年 絵本百物語
1904年 耳なし芳一、雪女「怪談」小泉八雲
1989年 『ゴジラvsビオランテ』

※陰陽師に関してだが、陰陽師と思ったのは確かなのだが、中国には古来より、術をかける道士がいたと思われるので、除外する。

で、今作が原作としているのは、「聶小倩(じょうしょうせん)」なのだが、これは「聊斋志异」のなかの一説。これは、幽霊や妖怪などの怪異談を集めた短編集である。
この本が刊行されたのが、1766年であるからである。

この妖怪やゾンビの特撮部分の不気味さと気持ち悪さや、香港お得意のワイヤーワークは抜群である。

幽霊も一人二人と数うべき   宇多喜代子

そういえば、幽霊の数え方ってどう数えるのでしょうか。考えたこともなかったことに気づいた。とはいえ、元は人間であったのだし、この世に未練を残し、成仏できないのだから、人としてきちんと成仏させてあげたいものだ。きっと幽霊もそう願っているはず。

『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(1987)
監督:チン・シウトン
脚本:ユエン・カイチー
出演:レスリー・チャン/ジョイ・ウォン/ウー・マ


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