代表・金子直矢インタビュー 【ショート】
“かかりつけ医のトレーナー版”を目指して
パーソナルトレーナーをより生活に身近な存在へ
――ミッションとして掲げる“全ての人に生涯頼りにできるお抱えのトレーナー・ヘルスケアスペシャリストを”について、意図を教えてください。
“かかりつけ医のトレーナー版”というイメージを持っています。
自分が担当しているお客さまにはシニア層も多くいて、50~70代となると「入院するほどの病気やケガじゃないけど、何か体に不具合がある」という方がほとんどです。
身体に全く問題がない、あるいは関心がないという人の方が少ないことが見えてきました。
こうした人ほど、運動したい気持ちはあれど運動をすること自体に不安があり、自分一人で行うことにハードルを感じていたりします。
医療領域ではかかりつけの医院があるように、ヘルスケアについても理学療法士や鍼灸師、インストラクターなどと連携し、一人ひとりに身体の相談役がつく社会になれば――というイメージです。
現状だと「パーソナルトレーナーをつける」ことに対してかしこまってしまう方も多くいて、その垣根をなくせればいいなと思っています。
ヘルスケアがシームレス化する時代に適したサービスを
いま、前述したような専門家たちのすみ分けがなくなってきていると言われています。
従来、トレーナーの業務は理学療法士や作業療法士が扱うQOL(Quality of life)の層に隣り合う層として、スポーツのパフォーマンスの向上やケアが主目的だったものが、変わってきている。
「この間、腰の手術をして病院でリハビリしてたんだけど、もう退院になっちゃって、、、、」というような方もクライアントとして訪れるようになっています。
そうなると、私たちもリハビリの知識が必要になってくる。
「ジャンプ力をつけたい」「筋肉を大きくしたい」という感じではない要望が実は多いんです。
なので、連携が必要になってくるし、トレーナー自身にも他の領域の知識やスキルが求められていると思っています。
例えば、いま担当しているあるお客さまは、私のトレーニングに来ているのとは別に、月に1、2回は私と連携する理学療法士(PT)の所で身体の柔軟性などをチェックし、肩が痛ければケアをするようにしています。
そのPTから私の所に「今、肩が硬いから、そういうメニューを入れましょう」とフィードバックが来ます。そこに「じゃあこちらではこういうトレーニングを組み込んでおきます」と対応するというような、各領域のスペシャリストが密に連携しているからこそできるサイクルが生まれています。
世界最高峰のホスピタリティの場で培った経験を、クライアントへ
――業務を行う上で特にやりがいを感じるのはどういった部分ですか。
お客さまから感謝の言葉をいただくことですね。「今までできなかったこんな事ができるようになったよ!」というのが嬉しい。
「この前、孫と出かけて、いつもなら置いていかれるんだけど、同じペースで歩けたよ」とか。
――成果が目に見えた時、ですね。
還暦を迎えたお客さまが血液検査を受けたところ、数値のほとんどが“赤色”か“黄色”(信号)でした。
元々見ていた理学療法士が私の所にすっ飛んできて。じゃあ、これから1年かけて何か目標を作りましょう。懸垂をする動作は体力的、筋力的な要素も必要な上、体重も落ちないとできないことなので、いかがですか?と提案しました。
結果、1年後その方は自体重で3回懸垂ができるようになり、血液検査結果も“緑”になって、ゴルフのパフォーマンスも上がったんです。
カウンセリングし、現状を把握し、目指すゴールを聞き、他のゴールを提示することも想定しながら可視化していく。うまくいかなければ軌道修正を都度図る。これを二人三脚で進める。
このように成果が出てクライアントの喜びが見えると、嬉しいです。
――業務に置いて特に気を付けている、神経を使っている部分は?
対クライアントの仕事なので、自分がやりたいだけのトレーニングを提案してもダメで。お客さまがどう感じて、乗ってきてくれるかが大事です。
本質は接客業なので、どうしたら高いモチベーションを維持しながら取り組めるかを常に考えています。
――トレーナー業界全体を見渡しても、長く顧客と関係性を築くことに注力するあなたのような考え方を持ったトレーナーは決して主流ではないように思います。 その考えにしても、今言及した接客業という捉え方に関しても、金子直矢がこれまで歩んできたキャリアがマインドセットに大きく影響しているように思うのですが。
5つ星のラグジュアリーホテルに勤めた経験は大きいと思います。
トレーナーである以前にホテリエでしたから。トレーナーというカテゴリーより大きい枠組みの中で、一流の接客、おもてなし、コミュニケーションを学べました。
トレーナーの中には、知識は豊富だけどクライアントとのコミュニケーションを疎かにしている人もいます。
反対に、コミュニケーション力はあっても知識、スキルが足りない人も。実際には両輪が求められていると思います。
スペシャリストたちが、チームで健康をケアするムーブメントを
――今後の目標、ビジョンを聞かせてください。
ここまで話してきたような考えを共有できる仲間を増やして、組織として継続させていきたいです。
今、担当しているお客さまに対する責任があって、可能であれば一生自分がご担当したい、という気持ちでさらに向上できるよう努めています。
その上で、第一線で活躍している職人たちとチームを作り上げ、お客さまのヘルスケアのトータルサポートができる場を作りたいと思っています。 すでにPTや看護師、ピラティスやダンサーといった仲間が集まってきています。
それと、もっと長いスパンの目標を言うと、この高齢化社会の日本で弊社がこれから経験していくことを、いつか海外に輸出できるのでは、とも考えています。
日本のトレーナーのレベルは海外と比べても決して劣ってないんですよ。
日本の追体験をするように高齢化社会に入っていく国に対して、日本の事を事例として示せるのでは、と思うんですよね。
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