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創作集-空想

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2022年2月の記事一覧

浄土

あたしは良い子でままはそんなあたしが大好きだからあたしは今日も良い子でいるままはとても優しいあたしも大好きだよああでも血も涙も貪って歪んだ視界の先のあたしのことを最近嫌っていてままは悪くないあたしが歪んでいるのままは化け物じゃない違う化け物じゃない化け物じゃないあたしはあたしの普通で生きていて他人の普通は異常でしかないこうやって今日も毛を目を口を胴体を脚を心臓を肺を胃を細胞を細胞を細胞を酷く惨く上

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少しだけ待ってて。

私を唯一愛していてくれていた筈の人が、突然居なくなった。
故意に自分を殺めた。
その事実を知った時、私は、思い出す限りの愛してるという言葉も柔らかい笑顔も少し小さな声も、その全てが急に気持ち悪く感じられた。
私は嘔吐した。
全てが嘘だった。
だって、私を愛しているのに、自ら命を絶つ訳がない。
不思議と、悲しみは襲ってこなかった。
私は、部屋にあるあの人の痕跡を全て消そうと試みた。
全てを捨てた筈な

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青春

幼い頃、私は近所の小さな花屋さんが好きだった。そこで働くおばさんと、その娘さんはいつも学校帰りの私に温かい笑顔を向けてくれる。
私は2人と軽く会話をして家に戻る。2人は私を可愛がってくれた。誕生日には素敵な花を一輪、プレゼントしてくれた。
私はプレゼントされた花が枯れていくことがとても嫌で悲しくて、泣いてしまうのだ。
それを伝えると、2人はある時ドライフラワーを拵えてくれた。
ドライフラワーは半永

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『』

ラムネ瓶が落ちた。
日差しを受けて、キラキラと光っている。
吸い込まれそうなほどに透き通ったその色は、懐かしい、暖かい昔の味を思い出させた。
高らかな音が鳴った。
バラバラに弾け、粉々になったようだ。
美しい物が、瞬間、鋭い破片となった。
柔らかい春の空気に侵略していくような繊細さで。
世界は、そこで終わりを告げた。

私は誰だ