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創作集-空想

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2021年6月の記事一覧

遺書

黒い、黒い沼にいつの間にか嵌り込んでいました。一体いつからでしょう。どうせなら、色の無い水槽に溺れたかった。いや、元は美しい池だったのかもしれません。そこに、徐々に徐々に黒いドロドロした液体を流し込まれて汚染されたのかもしれません。
私は、恵まれた人間だったのかもしれません。だから、全ての原因を創り出したのは私自身です。私は我儘でした。鏡の中の世界を、正常な世界だと思い込むくらいには、夢に溺れてい

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水槽

水槽

母が死んだらしい。
そう言われても、何も感じることが出来ない。

「50%の確率で毒ガスが噴射される箱に猫を入れた時、その猫が生きているか死んでいるかは箱を開けてみるまで判別出来ない」

かなりあやふやで掻い摘んだ説明だが、シュレディンガーの猫という有名な思考実験である。
結局、人間は自らの視覚を通じてその場面を目撃しないと、出来事を認識出来ないのだ。
よく分からないが、ともかく、「母が死んだ」と

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「宇宙は、存在しちゃダメなんだよ。」って、ムズカシイ事言ってた3年1組35番のフクヤマさんは、10年間死んだフリをしているらしい。

かくれんぼしてて、鬼が勝手に帰ると、監禁罪になる場合があるって。それはそうと、3年2組19番モリタくんは、いつまで隠れてるんだ???

男のような風貌をしている。しかし、私は歴とした女だ。
深夜コンビニ、偶に交通整備のバイトをしながら、ボロアパートに住んでいる。

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混濁

意識を一旦脇に置いて、その意識を再び脳に戻した時、AM4:00。
目の前の、ガラスのコップの底に薄ら沈む、葡萄味のジュースの様な色した空に目配せし、寝惚け眼を擦りながら軽くシャワーを浴びる。その間10分。
テレビを付けると、甲高い声のおばさんによるテレビショッピング。映し出されている電話番号に電話をかけて、繋がった瞬間にブチ切り。という遊びをして、独りで大笑いしてる辺り、精神科に行った方が良いのか

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コンビニ

外はうだるように暑い。
しかし、店内は冷房が効きすぎているようで、寧ろ寒いくらいだった。
調節したいけれど、どこにボタンがあるのか教えてもらっていない。

「450円になりまーす。」

初めから、やる気など無い。ただお金を稼ぐためだけだから。
丁寧な接客などする必要は無い。別に、そんなことしたところで給料が上がるわけでもない。
客に不快に思われたって、どうせ私には関係の無い人だ。

こんなド深夜に

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喫茶にて

こんな所に、喫茶店なんてあったんだ。
結構長いこと住んでるのに、初めて知った。

小さくて、ボロい喫茶店。
こんな時代じゃ、すぐに潰れてしまいそう。

中もボロかった。
机も、少しささくれだっているし。寡黙そうな店主が1人。私を一瞥して、特に何も言わずにメニュー表だけ持ってきた。

何にしよう。
無難にアイスコーヒーかな。
あと…プリン。喫茶店のプリンって、何かいいよね。

仕事を辞めた。
ブラッ

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現実

朝、目が覚めた。
しっかりと雨が降っていた。

「…だるいな。何で雨なんか降ってんだよ。」

癖毛だから、雨の日は湿気でうねって困る。

インスタを開くと、顔が良いだけの女性が奇妙なダンスをして褒められている。
不愉快だ。

適当に支度をして、外に出る。

通勤途中、ペットショップがある。子猫がこちらを見てピーピー鳴いている。
30万円。

生きてるだけで値段なんかつけられて。
可哀想。

私は子

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