現実
朝、目が覚めた。
しっかりと雨が降っていた。
「…だるいな。何で雨なんか降ってんだよ。」
癖毛だから、雨の日は湿気でうねって困る。
インスタを開くと、顔が良いだけの女性が奇妙なダンスをして褒められている。
不愉快だ。
適当に支度をして、外に出る。
通勤途中、ペットショップがある。子猫がこちらを見てピーピー鳴いている。
30万円。
生きてるだけで値段なんかつけられて。
可哀想。
私は子猫を一瞥して、足早に去った。
可哀想。
可哀想か?
30万円も価値があるんだぞ。
私なんか、1円の価値も無い。きっと。
電車に乗る。
朝から、皆死んだ顔して、下向いてスマホを触っている。
私は、そんな奇妙な集団の中に溶け込んだ。
動画を見る。
ユウト君。今日もかっこいいね。
私の、味気ない人生の、唯一のオアシス。
途中、広告が入った。
無料で見てるんだから仕方ないとはいえ、鬱陶しい。
軽く舌打ちをして、「スキップ」を押す。
押したと思ったけど、微妙に押し間違えたみたいで、広告が開いてしまった。
イライラする。
画面を戻そうとした時、
画面にでかでかとこんな文字が…。
「貴方の現在の価値は、45万3000円。」
…何だこれ。
他には何も書いていない。
あの子猫より、価値高いんだな。
奇妙に思うより先に、こんなことが浮かぶ辺り、私は終わっているのかもしれない。
あの子猫の方が、よっぽど可愛くて、人々に必要とされそうなのに。
次の日。
未知の生命体が、我々人間を品定めしに来た。
無論、私は売れ残っている。
良かった。
良かった…のかな?
あの子猫、今度迎えにいこう。
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