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未経験でST独立は可能でしょうか

フォロワーさんからこのようなご相談をいただきました。

我が子が発達性読み書き障害です。
親の私がSTの資格を取得を取り、卒業後すぐにフリーランスでLDのお子さんの支援をする計画は無謀でしょうか?
どこか小児の施設で数年間の臨床経験を積んだ上でないと、やはり厳しいでしょうか。

(Twitterで行ったやり取りを抜粋し一部編集)

私の考えを述べさせていただきます。

このnoteの記事は、「セラピスト開業マガジン」という有料マガジンの記事のひとつです。言語聴覚士という国家資格で言語相談室を独立開業している寺田奈々が執筆しています。教室やセラピールーム、相談室を個人事業主(フリーランス)や独立開業、一人社長として創業するなどに興味がある方向けのマガジンです。


社会人経験者(20代・30代・40代・50代〜)が言語聴覚士になることも多い

言語聴覚士は医療系国家資格のひとつです。大学や専門学校というと、社会人未経験の18歳〜 24歳の若者が資格を取得し職業に就くイメージがありますが、看護師や介護士、理学療法士といった医療系の国家資格は、意外と社会人経験者・キャリア転向者が多いです。

とある養成校(大卒2年課程の専門学校)の発表している統計調査を拝見するに、入学者の平均年齢は32.7歳となっており、20代前半の社会人未経験の若者だけが志す職業ではないことが分かります。この傾向は引用した学校に特有の傾向ではなく、実際に私が資格を取得するために通った養成課程においても、新卒が半数程度で、残りの半数は社会人経験者でした。

お子さんの言語障害をきっかけに言語聴覚士になる方も

言語聴覚士(以下、ST)の場合、職業自体が社会であまり知られていないこともあり、STを志したきっかけがご自身のお子さんの障害や言語の相談であることも、決して珍しくありません。

ニュース引用:息子さんの吃音をきっかけに言語聴覚士になられた小林さん

未経験で独立は可能か

それでは、冒頭に引用したご質問、「ST資格を取得してすぐにフリーランスとして活動を開始することは可能か」について考えてみましょう。

まずは、法律的な背景としては可能です。ST資格を取得した未経験の人が「言語聴覚士」の看板を掲げて独立することに、特に制限などはありません。ただ、ST資格を取得して即座にフリーランスになる、というケースはあまり前例がない…というかこれまでには、ほぼ居ないと思います(※ 本人が希望して、非常勤やアルバイトの掛け持ちをする例はよくありますが、本来の「フリーランス」とは少しずれるかなと思います)。

なお、新卒で就労経験が無いか、アルバイト程度の経験のみでいきなりフリーランスで働くことが厳しいだろうことは、言語聴覚士に限らずあらゆる職業で明白です。
ここまで書かなくてもさすがに大丈夫かとは思いますが、被雇用経験・就労経験がまったく無いという場合には、いきなり独立ではなくまずは就職を推奨します。資産が無い人が会社組織の力を借りずに、社会保障や後ろ盾ナシに、その身ひとつで自分一人で生き抜いていくのはけっこう大変です。

他分野での独立経験が既にあるケース

臨床未経験独立で、いちばんスムーズに行くと感じるのは、他の近い分野での独立・フリーランス経験が既にある場合です。たとえば、ボイストレーナーとしてフリーでやってきた人が、STの学校に入り資格を取得して開業するケース。たとえば、学習塾や家庭教師、お教室などを開業されてきた人がそこにST資格を加えて開業される場合や教室の機能をグレードアップさせる場合。もともとお客さんを持っている方が職能範囲を広げたり、引き出しが増える分にはなんら憂いは無いどころかむしろ新たな強みになることと思います。

追記:そのほか、すでに持っているご経歴や資格との相性がよく独立しやすい職業には、「日本語教師」と「英語スクールの英語教師」があるかと思います。

就職先で経験が積めること

どんな経験が独立に有利にはたらきやすいかは、過去の記事で書きました。

そのほか、「就職」での臨床経験でしか身に付かないことを挙げていきます。

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