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「あなたはどうやって言語聴覚士に出会いましたか?」を教えてもらいました

みなさんこんにちは。
ことばの相談室ことり、コトリドリルを主宰している言語聴覚士(ST)の寺田奈々と申します。

Twitterで、「言語聴覚士(ST)、どうやって探したらいいのー!」という保護者の方のお声が目に留まりました。
言語聴覚士である私がお会いするのは、すべて「無事(?)、言語聴覚士である私に出会えたみなさん」です。
ですが、お子さんの言葉の遅れや言葉の発達が気になる、など、ことば・読み書きのお悩みで言語聴覚士に出会うのは、とても難しいと聞きます。支援が必要な方・ご家庭の数に比べて、小児や難聴領域の言語聴覚士がとても少ないからです。

いったい、どうやって出会えたのでしょうか?
STに出会えたみなさまに、いったいどのように繋がることができたか、聞いてみました。

大勢の方(30人〜)からお返事をいただき、とても貴重な情報が集まったスレッドが出来上がりました。
お時間のある方はぜひ、元ツイートにアクセスしてご覧になってみてください。
ご回答を寄せてくださったみなさまに感謝いたします。

お住まいの市区町村・自治体の支援からSTに繋がった

まずは、お住まいの市区町村・自治体の支援からSTに繋がったケースです。

育児や発達で気になることがあれば、まずは公的機関、つまりお住まいの自治体の公的支援に繋がることが非常に重要です。

私の主宰することばの相談室も民間の事業者ですし、民間・自費の施設にもよいところはたくさんあります。ただ、保護者の方の不安な気持ちにつけ込むような怪しげな業者がしばしば居ることも、残念ながら事実です。

市区町村・自治体に問い合わせる重要性は、業界内に居る者としては当たり前なので、世間のみなさまもご存知かと、つい呼びかけを省略してしまうことがありますが、「第一選択は公的支援」は繰り返し伝えていかねばなと感じます。

ご自身で情報収集してSTに繋がった

次にご紹介するのは、ご自身で情報収集し積極的に探しにいくことでSTに繋がることができたケースです。

言語聴覚士養成校(=言語聴覚士の専門学校・大学)に、言語相談室が併設されている場合があります。
すべての都道府県にはあるわけではないですが、通える範囲にある方は調べてみるとよいと思います。相談支援の窓口が見付かるかもしれません。
自己負担がかかることもありますが、養成校に併設された相談窓口は教育や研鑽、学生の指導を目的とされているため、費用は抑えられているケースが多いです。
書かれているような「自ら積極的に情報開示していく方法」はすべての方が取り入れるには難しい面もあるかもしれませんが、必要な情報を探しているときに有効な方法であると思います。

リタリコ発達ナビは言語聴覚士がいない施設も多く載っているため、2022年10月時点では、言語聴覚士の在籍情報を得ることは少し難しいかもしれません。

言語聴覚士(ST)が在籍している児童発達支援事業所、放課後等デイサービスの情報は、私たちSTも把握が難しいです。
なにせ刻一刻と状況が変わっていきますし、在籍していても常勤ではなかったりすることがあります。また、スタッフは複数居るので、在籍して居るSTが担当についてくれるとは限りません。
常に在籍していると看板に掲げるほどSTスタッフを確保するのは難しいという状況があると思います。

自力で探し当てた

次は、年齢制限で断られてしまったけれど、最終的に自力で探し当てることができたケースです。

次も年齢制限などでなかなか繋がることができなかったが、最終的に訪問STに会えたというケースです。

紆余曲折の末、言語聴覚士(ST)に繋がることができたのは本当によかったと思いますし、大変なご苦労があったことと思います。
このように、ご負担を強いてしまう現状を一人のSTとして不甲斐なく、申し訳なく思います。

実は同じSTでも、一般の病院リハビリテーション科に勤務するSTよりも訪問看護ステーションのSTのほうが、お子さんを担当しやすいという事情があります。
訪問看護ステーションのSTは、現段階で小児の実績がない場合であっても、利用の希望、申請がある場合には検討してくれることがあります。制度上は可能なので、経営者の方針、在籍しているST自身の希望などが反映され開始に至るケースが増えてきています。なお、訪問リハビリテーションを利用するには、「医師の指示書」が必要になります。指示書を書くのは訪問看護ステーション所属の医師ではなく、通院先の小児科の医師などでも可能です。まずは、かかりつけの病院や発達相談をしている病院があればそちらで聞いてみてください。
あるいは、直接お住まいのエリアを周っている訪問看護ステーションを探して問い合わせをしてみて下さい。

マッチするまでに少々胆力が要るかもしれませんが、1件小児の依頼が制約すると、2件、3件とその地域で広がっていくことも多いです。ぜひ最初の一石を投じていただけると幸いです。

STを見つけることができたが、繋がることができなかった

言語聴覚士(ST)を見つけることができたにもかかわらず、遠方であったり、STが常駐していなかったりで、定期的に通うことが難しい・できないというケースもありました。

また、最終的に繋がることができたケースのうちにも、必要性は認められたにも関わらず年齢制限で断られてしまう経験をお話しくださった方がたくさんいらっしゃいました。

自治体の言語聴覚士の支援は、就学~小学校2年生くらいで終了・卒業となってしまうところが多いです。
学校側に「ことばときこえの教室」という通級指導教室があるところもありますが、必要なお子さんがうまく繋がっていかないケースもまだまだ見受けられます。

支援がまだ必要なお子さんが制度の区切りで終了になってしまったり、あるいは就学後に言語聴覚士の支援が必要であると気がついたり感じたりすることもあります。たとえば、学習障害(LD)のお子さんや吃音のお子さんなどは、学齢期以降にお悩みが出てくることも多いものです。
学齢期のお子さんのST支援拡充が手薄になってしまっているという現状があります。

おわりに

日本の医療福祉制度は、"申請主義"と言われます。自ら動いた方、問い合せをした方が、支援の対象となる行政システムです。困っているけれど、声を挙げられない・助けの手を伸ばせない方は居ないことになってしまう仕組みでもあります。
行政だけではなく、医療、教育、福祉いずれも同じようなシステムですね。

  • 忙しい

  • 調べるのが苦手

  • 今、まさに切羽詰まっていて余裕がない

  • コミュニケーション障害があり、困っている旨を伝えるのが難しい

そのような方は、支援が必要なのにもかかわらず調べたり問い合わせたりするのに必要なリソースがないために、支援にたどり着けない状況に陥ってしまいます。
言語聴覚士の支援が必要な方のなかには、「コミュニケーションの支援を受けるための申請で、コミュニケーションの壁がある」という、なんとも皮肉な状況に陥ってしまう可能性もあるわけです(例:吃音や難聴の為に電話で相談予約を取るのが難しい、知的障害の為に難解な手続きができない)。

本記事ではSTに繋がれたケース、繋がれなかったケース、みなさまのさまざまな体験談や事例をご紹介しました。
地域資源や年齢などの条件がそれぞれに異なるので、もしかしたら、そのままご自身に使えることは少ないのかもしれません。
けれども、いくつもの体験談を知っていくことで、少し先の見通しやイメージが付けやすくなり、本記事が行動へと移るひとつのきっかけとなれば嬉しく思います。

今回の内容についてはVoicyでも発信していますので、興味のある方はぜひ放送も聞いてみて下さい。

言語聴覚士の支援を必要とするすべての方が、言語聴覚士に出会えますように。

作成協力 てくてくりょういく


いただいたサポートは、ことばの相談室ことりの教材・教具の購入に充てさせていただきます。