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「シンデレラ(2021年版)」の感想(ネタバレあり)


最新版シンデレラ

実写シンデレラというとディズニーが2015年に公開したケネス・ブラナー監督バージョンが記憶に新しい。
僕はそちらのバージョンも結構好きで、ディズニーアニメ版を古典としてその良さをかなり大事にした作品だと思う。
お話はアニメ版と大きく変わらないので、今回のバージョンに比べると価値観とかは古いという言い方も出来る。
でもケイト・ブランシェット演じる継母が悪役でありながら、「シンデレラの様に心が美しくなれない人」という切ない一面を強調してる所とか、シンデレラの中で一番の見せ場の(だと個人的には思っている)、魔法で美しい青いドレス姿に変わっていく所のカタルシスなど、何気にツボの抑え方が上手くて「シンデレラってこういう所が良いよね」と改めて再認識させてもらった記憶がある。
ケネス・ブラナー監督作ではかなり好きな方の作品。

それに対して今回の実写版はより現代的なエンターテイメント映画になる様に、ストーリーを結構変えてる所も多いし、元々のおとぎ話のシンデレラの要素をギャグ的に自分で突っ込んだりして、「シンデレラ」に代表されるディズニープリンス的な古い女性像を意識的に否定している感じが面白い。
「花嫁探しに舞踏会が必要?」というセリフとか身も蓋もなくて笑った。
僕が感動したのはラストのナレーションの「シンデレラじゃなく彼女の名前はエラ」というセリフで、一人の女性として彼女を見て!と物語の中から言われている気がした。

あとミュージカル要素をかなり前面に押し出しているのだけど、ディズニー的なミュージカルではなくクイーンとかマドンナとか懐メロ的な有名なヒット曲を登場人物の心情に合わせてバンバン流している感じで、古典として存在する「シンデレラ」の価値観をぶっ壊そうとする気概を感じる。

それでいて元の「シンデレラ」のポイントである、どんな状況でも腐らず美しい心でいる事の大切さとかもしっかり描いて、シンデレラである事の意義もちゃんとあるのが良いと思う。

葛藤とミュージカル

エラは自分のデザインした服を売って商売人として一人立ちしたい、王宮の方では王子が国を治める器がなくて、代わりに妹の方が国をよくしていくビジョンを持ってて何より本人がやる気に満ち溢れている。

映画が始まって登場人物が出揃った時点で、彼彼女たちがどうなればハッピーエンドになるか適材適所な配置が分かる様になっているのに、現実と同じく前時代的な考えや風習から抜け出す事がとても大変で「これはこういうものだから」と言われてそこから進歩出来ない。
「思い通り生きたい」という登場人物の切実さをミュージカルに昇華してそこから軽やかに世界を変えていく様子が観ていてとても気持ちが良い。
あとここで、シンデレラに立ちはだかる継母役がアナ雪で元祖ありのままの自分クイーンのエルサを演じたイディナ・メンデルなのも面白い。

ミュージカルシーン自体はディズニーとは違いかなりコミカルさを推した様な感じで差別化を図ろうとしている。愛を歌いたいピアース・ブロスナンに対して「歌うの?」と冷や水かける演出とか笑った。

誰にも優しい結末

悪役であるはずの継母にもちゃんと生身の人間として、シンデレラに意地悪をしている理由付けをしっかり描いているのに感動した。
というか彼女自身もかつてシンデレラと同じ葛藤を抱えていた人物だったという過去が明らかになり、自分の様になって欲しくないと心から願っての行動で、だからこそラストのシンデレラと2人で歌うミュージカルシーンは素晴らしくて思わず泣いた。

それと基本的に男性陣のキャラクターはほぼ全員駄目なのも面白かった。
男性がしっかりしないので女性の方が王位や商売などの主導権を握っていく結末は最近のディズニー映画とかでも多いけど、男性側も同等にちゃんとした人がいるのが普通だと思う。
ただ今作は王子はプー太郎のまま終わるし、王様も前時代的な古い考え方から完全に抜け出せた感じはしないのだけど、そういう駄目な人も駄目なまま愛らしくハッピーに映画が終わっていく感じは結構新鮮だった。

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