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「ジュディ・ブルームよ永遠に」の感想(ネタバレあり)

Amazonプライム・ビデオオリジナル配信限定作品。
アメリカの児童小説作家であるジュディ・ブルームのドキュメンタリー作品。

僕はジュディ・ブルームという作家を知らないで観たのだけど、彼女がどういう影響をもたらしたのか冒頭のシーンでテンポ良く分かりやすく語られるので全く問題なく楽しめた。

こういう偉人系のドキュメンタリー作品のタイプとしては本人が存命で創作秘話や私生活の話を聞けるし、現在著名人になった人達がリアルタイムでいかに幼少期に影響を受けてきたのか?その時の時代の肌感覚がどうだったのか?も語られるので、こういう言い方が相応しいか分からないけどドキュメンタリーの題材がかなり沢山ある作品だと思う。
それ故に要素が色々あるからこそ、語り口が散漫になりがちだと思うのだけど今作はジュディ・ブルームという女性の人生を丁寧に整理して語ってくれるのでとても見やすいドキュメンタリーになっていたと思う。

最初の結婚の直前に父親が亡くなった事で、自分の気持ちの吐き出せる相手が居なくなったと、話しているのだけど、そこから専業主婦になって自分の気持ちを押し殺す様な生き方になっていく。

そんなウチに秘めたものを解き放つ様に、子育てがひと段落したタイミングで自分の気持ちを絵本にしていくのだけど、才能無いとか散々出版社から言われながら自分の創作に向いている方法が小説だと見出していく。
ここら辺のエピソードが本人は今は笑いながら話しているけど、創作活動の壁みたいなものも感じて当たり前だけど試行錯誤があって今の形があったんだろうし、それでもやめない彼女の創作意欲のパワーとかを感じて結構この時点で僕は感動してしまった。

ちなみにこの時の夫は彼女の創作活動に対して、「妻は紙と鉛筆だけあれば満足してる。百貨店の買い物とは無縁で助かる」みたいなアメリカンジョークを話してたというエピソードが入る事で、彼女が悪くは言わないけど感じの悪さが伝わってきてこの時点で後の顛末をこちらに予感させる。

そんな中書いた思春期の少女達にとってのリアルを自分の思春期に感じていたものを落とし込みながら書いた「神さま、わたしマーガレットです」という作品なのだけど、ここのどんな作品なのか?分からないこちらにもかいつまんで説明してくれるアニメとか小説本文の切り取り方が上手いので、ドキュメンタリー作品としてわかりやすいし見ていてポップで楽しい。

で、ここから彼女の作品に影響を受けた著名人のインタビュー映像がどんどん入っていく流れも良かった。
彼女が世に作品を出した事で影響を与えた事と、この映画自体の演出も彼女1人の語りから色々な人の彼女の物語に対するリスペクトを語るシーンが入る事で、この映画の語り口も拡がっている感じがして、観ていて「本当に良かったねー」という高揚感があった。

その後も作品をどんどん出して若い子達に影響を与えていく様子が語られていくのだけど、そこから面白いと思ったのは若い子達のファンレターを受け取り、その何通かに返事をして文通をしていく事になっていき、そのやりとりを紹介してくれるくだり。
ファンレターを書いてるのは思春期の女の子ばかりなのだけど、ここでの創作者と受け取り手の本人達にとって大切で切実な時間だったんだなぁという部分に感動してしまうし、それによって彼女の創作意欲が増していく様な、ある意味で作る側と受け取る側の希望の姿を体現してるみたいでそこにグッと来てしまった。

劇中に出てくるフォーエバー・・・のタイトルの本は永遠は無いかもしれないという皮肉の意味で付けられたというエピソードが出てきて、それに重なる様に彼女の最初の結婚生活が望んだものじゃなかったという語りも重なってくるだけど、このドキュメンタリーの最後にもう一度「フォーエバー」と言う言葉が別の意味で提示されるのが本当に感動的で素晴らしかった。
彼女の精神性が残り続ける事を信じようという希望を込めているみたいで、思わず泣いてしまう切れ味の終わり方だった。

あと彼女の書籍のストーリー説明をする際のアニメーションの表現が素晴らしかった。
直接的に関係の無い抽象的に関連する様な表現が何度か出てくるのだけど、その辺がとてもセンスが良くて見入ってしまう。

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