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「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」の感想(ネタバレあり)

「スパイダーマン: スパイダーバース」の続編。
公開から一週遅れて観たけど、結構お客さんは入っていた印象。
やっぱり実写程じゃないにしても「スパイダーマン」という名の付く作品だと子供から大人までまんべんなく観に来ている感じ。

前作の時の感想でも書いたのだけど「コミックのアニメ化」ではなく、「コミックのままアニメにする」という考えられない位高度な事をしていて、しかも作品ごとに絵柄のテイストの違う作品のキャラクターを各々の個性をそのままに一つの画面の中に共存させている感じが観ていて本当にクラクラする、もう完全にアート映画だと思う。

そのコミック的なアートを否定するようにグウェンが最初に闘うヴァルチャーが古典的なアートな絵柄で攻撃してくる感じが、エンターテイメントでありながら最前線のアート作品として走り続けている今作を象徴している様にも観えた。
でも観ている間はそんなこと考えられない位、冒頭から同じ画面の中に色んな絵柄のキャラクターが目まぐるしいスピード感で同居しながらバトルをしているせいで頭の情報量が追いつかずやはりクラクラしてくる。これが2時間以上続くので観ていてかなり疲れてくる感じ。

スパイダーマンという物語の否定と肯定

これまで散々観てきたスパイダーマンの物語は愛する人の死や、それでも乗り越えて闘う事の尊さを描いてきた訳だけど、「それは本当に良い話なのか?」という目線が入ってくるのが新しいし、そういう悲劇が無くてもスパイダーマンとして定義付けが出来るのか?という、前作以上にスパイダーマンをメタ的な視線で作っているのが面白い。

それでも結局支配する様な大人達の価値観を否定して、大切な人を守りたいという若い意志を貫き通すその姿は、やはりとてもスパイダーマンらしいし、「スパイダーマンを否定する物語」ではなく、ある意味定番化した「スパイダーマンを乗り越える物語」になっているのが感動的だった。

マイルス

前作の後スパイダーマンとして活躍しているが、なかなか苦労している。
将来や家族との関係、そしてスパイダーマンでいる事の板挟みに悩んでいて、グウェンと重なる様に描く事でお互いに共感し信頼し合い、同時に拗らせ合ったりもしていくのが、瑞々しくて面白かった。

そもそも生まれる運命に無いスパイダーマンだったという展開もビックリ。
更に本来そのユニバースで自分がどういう存在だったのかを突きつけてくるヴィランとして生きている自分との対峙もかなり衝撃的で、次回作で彼が文字通りの闇に堕ちた自分とどう対峙していくのか?そこで結構作品の評価が変わりそうかなあと思う。
ハッピーエンドに思えた一作目が裏返る様なダークな二作目になっているのが続編の展開として良い。

グウェン

グウェンのエピソードから今回の映画は始まるのだけど、今作は彼女のストーリーの配分がかなり大きいと思う。
前作でサラッと説明された生い立ちに大分肉付けされて描かれる。
これまで実写で観られていない女性版スパイダーマンの活躍が語られる冒頭のシークエンスがとても見応えがあっていきなり引き込まれた。

父親との関係性からマルチバースの世界へ逃げ込む形になっていたけど、ラストに向き合い理解し合う事で、同じ様に父親との関係に悩むマイルスに救いの手を差し伸べるべく1作目の仲間と共に再びマイルスの元へ集う展開が熱い。
父親との会話シーンの背景がどんどん抽象的になっていくのがとても味わい深かった。

ミゲル・オハラ

心底疲れ切った顔でスパイダーマンに関わるマルチバースを制御しようとしているスパイダーマンなのだけど、制御と支配は紙一重でスパイダーマンを生み出す為に悲劇を強要しようとしている様にも見える。
彼の体験談から語られるそうしないといけない理由もどことなく胡散臭さがあって、次作でどういう立ち位置になっていくのか気になる所。
それでも赤ちゃんを抱く所とかで垣間見える決して悪人では無い事を示す人間味の演出とかは上手い。

スポット

最初のどう見ても冴えない悪役から段々と覚醒していきマルチバースを移動して恐ろしい存在に成長していく過程が面白かった。
彼もマイルスと同じく元々ヴィランになるべくなったというよりマルチバースに関わった事でヴィラン化していった人なので、マイルスとは裏表の関係になっていきそう。
途中の色んなマルチバースを行き来する展開が楽しかったので次作ではもっと観たい。

スパイダーパンク

とにかくめちゃくちゃカッコいい。
今回のスパイダーマンの中で一番アナーキーな存在で、はみ出しモノのグウェンやマイルスがスパイダーマンの運命に風穴を開けようと奮闘するのをさりげなく後押ししている感じが面白い。
今作も活躍していたけど、次作でよりスパイダーマンの価値観の破壊していく彼の精神性が重要になりそうだし楽しみ。

そんな感じで相変わらずクオリティの高いアニメ作品ではあるのだけど、まだ風呂敷を広げた所なので次回作でどういう結末が待っているのかを観てみないと評価は保留という感じになりそう。

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