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スパイダーマン: スパイダーバース(ネタバレあり)

1回目はTOHOシネマズ二条のIMAX先行上映で、2回目はイオンシネマ京都桂川でULTIRAスクリーンにて鑑賞。さすがにボヘミアンラプソディーも勢いがなくなってきたので今の時期はどこの映画館も1番環境のいいスクリーンはスパイダーバースで、座席数が多いスクリーンは「ドラえもんのび太の月面探査記」がやってる感じ。

あとずっと思ってたけどTOHOシネマズのドリンクは爽健美茶があるのがいいですな。ノンカフェイン万歳。

感想は一言で言うと大満足!

新たなスパイダーマンであるマイルスの成長物語を軸にしながら、これまでおなじみのピーター・パーカー像に愛情を注いで描き、同時に「誰にでもスパイダーマンになれる!」と世界中の子供達の背中を押すような力強いメッセージも含めた超大傑作。僕の生涯ベスト1映画のクリードをスパイダーマンでやってくれた気がしてめちゃくちゃ泣かされた。

映画では描かれなかったピーター・パーカー像

メインの世界線のピーター・パーカーは今までの映画がある意味どれも先送りしていた彼の死をしっかり描いていてるのが偉い、そして辛かった。

冒頭でいきなりこれまでのサム・ライミ版でお馴染みの名シーンを入れて彼の10年が説明されるので、今回のお話ではあまり活躍するシーンがないのに、劇中のNY市民と同じく何年も寄り添ってきた「親愛なる隣人」が亡くなった悲しみが押し寄せてくる。そこでマイルスにスパイダーマンのコスチュームを渡す(買わせる)のがスタン・リーなのが憎い演出、最後のギャグも含めてまあ泣く。 

そしてマイルスの師匠にあたる別次元のピーター・パーカー像もスパイダーマンが迎えるもうひとつの未来としてめちゃくちゃ説得力あった。お金にもならない孤独な自警団活動をライフワークにしていたら、いずれ限界はくるし当然の様に彼女にも逃げられる。家で一人タツノオトシゴのTV番組を真剣に見てしまう所とか笑えるんだけど、20年も顔を隠してヒーローを続けて人生が狂ってしまった男の哀愁が伝わってきて痛々しい。このMJに振られたシーンでマスクを被った状態なのがピーター・パーカーとしての痛みをスパイダーマンになる事でごまかそうとしてるみたいで、「うわぁ、、、」ってなる。

マイルスの成長譚

もちろん今回の主人公であるマイルスの成長物語としても一級だった。

両親は存命でそこそこ裕福で頭も良いし、一見幸せそうにも見えるんだけど父親と叔父のアーロン、どちらからも愛情を受ける事で逆に自分がどういう人間になるべきか悩んでいる。こういう環境の悪さではなく自分の何者でもなさみたいな部分に悩んでいるのは「クリード」にも通じる現代的な若者像としてすごく受け入れやすい。

それとMCUのトムホスパイディと同じく、まだチームの中で役に立つ事が出来ない未熟さも大事な要素だった。何が正しいか分からない状況で必死に自分の道を探しもがく姿に胸を打たれた。

そこからようやく自分の殻を破り文字通りマイルスが「跳ぶ」シーンの美しさ。今まで何度も映画で観たスパイダーマンお馴染みのスイングシーンのはずなのにNYの夜景と見事にマッチした黒いスーツのカッコよさや急降下する前のガラスの破片の動き、計算し尽された画面設計、コミックから飛び出しできた様なスパイダーマンとしての身のこなしなど、実写にはないアニメならではの快感に満ちていた。そこに彼の精神的な解放感が重なってとんでもないカタルシス爆発シーンになっていて、言葉にならない。

ピーターとマイルスのメインストーリーの邪魔にならない形で他のスパイダーマン達もキャラが立ってるのはすごい。チームモノとしての交通整理力もバッチリだった。
あと叔父さんが亡くなったショックや、自分のせいでピーターがこのままでは死んでしまう無力感、そういうマイルスの心の痛みを全員がこれ以上ない程理解していると分かるのが感動的。
孤独を抱えここまで闘ってきたそれぞれのドラマを想像してしまう。 

ヴィランサイドの人間味

今回ヴィランも沢山出るけど、あえて大体のキャラは記号的にしていて、敵側の人間性はキングピンとアーロンに集約してた。
愛する人を亡くした悲しみを乗り越えられず、ずっと縛られているスパイダーマン達の写し鏡の様な存在のキングピン。Netflix版デアデビルのヴィンセント・ドノフリオ版に通じる人間臭いヴィランになっていて良かった。

そしてもちろん忘れ難いマハーシャラ・アリ演じるアーロン。
詳しくは説明されないけど父親のジェファーソンがマイルスに対して正しい道を歩いて欲しいと願っているのは弟と共に苦労していたからなんだろうなぁと分かるので、アーロンが流れ流れてキングピンが殺し屋として雇うまでの経緯を考えると切ない。
そんな世界の闇にいる側からマイルスにかける言葉は優しさに満ちてて、兄の様に堅い人間になって欲しくないのと同時に決して自分の様にもなって欲しくないと願うとてつもなく人間味溢れるヴィラン、、、ってこんな役マハーシャラ・アリしか出来るわけないな。

だからこそマイルスがピーターや父のいる善側の人間だけじゃなく、アーロンの意思も受け継いでいるのが分かるラストの必殺技を放つシーンは鳥肌が立つ位素晴らしかった。 

コミック愛のアニメ

もちろんお話だけじゃなく単純にアニメ映画としての完成度は観た人全員が驚くと思う。吹き出しやコマ割りが入ったり、劇画の質感やドット印刷の再現など異常なこだわりで、コミックのアニメ化ではなく、コミックのままアニメにするというちょっと考えられないくらい高度な事が出来ていて観てる間ずっとクラクラした。

監督は3人いたけど内一人のボブ・ペルシケッティさんは「リトルプリンス星の王子様と私」の脚本をやっていた人らしく、あまりに有名になった作品を新たな切り口で語り直す部分とか、今作と試みとして近い感じがする。

個人的には字幕派

吹き替えもかなり素晴らしかったけど、普段からハリウッド映画ばかり観てる身としてはシークレットゲスト含め字幕版の豪華キャスト具合がめちゃくちゃ楽しかったなぁ。男前ピーター・パーカーを担当したクリス・パインは短いのにかなり重要な役で驚いたし(吹き替え版はキャップの声でお馴染みの中村悠一さんでこれもいいチョイスだと思う)最後はクリスマスソングまで歌うサービスっぷりでめちゃくちゃ笑った


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