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「search #サーチ2」の感想(ネタバレあり)

前作「search/サーチ」の続編なのだけど、同一世界の別の物語という感じで、前作を観てなくても問題なく楽しめる作品になっていたと思う。

しっかり映画的なエンターテイメント作品

前作の出来事がドラマチック過ぎて普通のテレビドラマとして再現されている、という目線があるのが面白い。
劇中のドラマが「実話を映画的に演出する」というアプローチに対して今シリーズがやろうとしているのが「フィクションをリアルとして演出する」という真逆の作りになっていて、この劇中のやり方だと面白くならないというのをメタ的な視点で表明しているみたいだ。
それでもこの映画というか、このシリーズが素晴らしい所は、巧みな画面構成、編集、音楽、そして芯にある切実な「愛」のある物語性で、これだけトリッキーなやり方なのにちゃんとエンターテイメントな「映画」になっている所だと思う。

まずただ単にパソコン画面を見せている訳じゃなくパソコン画面内のどこをどれくらい切り取ってこちらに見せているのか、という画面構成力がめちゃくちゃ上手い。
その中でどれくらいのスピードでマウスを動かしているのか?どの位の間でクリックするのか?登場人物の心理を繊細に示せている。
誰のパソコンの画面なのか?という視線の変え方も、とてもスリリングで特に中盤の彼女のパソコン画面と見せかけてだんだん視点が引いてくると、黒幕が彼女のパソコン画面の全てを監視しているというのが分かる瞬間の思わず寒気が走る感じとかとても演出として巧みで痺れる。

また時世がかなりあちこちに飛ぶのだけど、編集力が凄く良いので、パソコン内の限られた情報の中で「これは過去の出来事」「これはリアルタイム」としっかり分からせてくれるのもかなり良く出来ていると思う。
それに合わせた劇伴も今登場人物がどういう感情なのか分かりやすく示していて、普通の映画だとウェットすぎるけど今作においてはバッチリハマっていると思う。

searchシリーズとしての物語の繋がり

searchシリーズの売りはもちろんその手法の面白さの一つでもあるのだけど、ちゃんと基本の家族の物語が、その独特な手法が合っているからこそただの面白アイデア映画になっていない所だと思う。

「愛する家族を探したい」という物語を柱に、(改めて言うのもちょっと恥ずかしいけど)僕らの生活に欠かせない「インターネット」という武器をなんとか駆使しながら、一生懸命足取りを追っていく姿が身近だからこそより切実に感情移入してしまう効果があると思う。ちゃんと物語を語るのに必要だからこの手法を選んでいるという説得力を感じた。


娘と母

主人公のジューンのキャラクターも凄く良い。
冒頭の母親からの過保護な扱いに反抗している感じが生意気で面白いし、母親が居ないのを良いことに羽目を外しまくっているシーンの編集のテンポ感とか観ていてめちゃくちゃ楽しい。
とはいえ母親が行方不明になったと分かるや否や、自ら行動を起こしていく所はやはりたった1人の家族をなくす事への恐れが見えて、はしゃぎまくっていた映画冒頭から顔つきが変わって一生懸命に調べていく様子にグッとくる。

母親の方も前半の描写は初見だと夫が亡くなってたった1人の家族を失いたくないから執拗に過保護になっている印象だったけど、後半で真相が明らかになってから、父親から彼女を守らないといけなかったからと後から全く違う印象になって浮かび上がっていく感じが巧みだと思う。

前作もそうだったのだけど、送ろうとして躊躇っていた愛を込めたメッセージが地獄めぐりの末にやっと送れる所で映画が終わっていくのが、画的には凄くさりげないからこそ、めちゃくちゃ感動的で良い映画を観れたという満足感が高かった。

その他登場人物だとコロンビアのお手伝いをしてくれるおじさんのハビもめちゃくちゃ良いキャラクターだった。
最初のこの人大丈夫かなぁ?という頼りない印象から彼自身の人間味が段々垣間見えてくる。
彼からすると親の為に一生懸命になるジューンを通して、自分の息子との関係性を見つめ直す展開になっていてラストの写真とかにもグッと来てしまった。

まあ後から振り返ると気になる所もあって、特に黒幕である父親の全体的な計画とか振り返るとそりゃ上手くいくのが無理あるでしょ!っていう感じだし、娘を手に入れる為にしたのなら絶対もっと良い計画があるだろとは思う。
短絡的に人を殺し過ぎなのは、彼が薬や娘への執着で狂ってるとも取れるのだけど、それにしちゃ悪知恵が働き過ぎでキャラクターとしてブレブレな印象。
まあ映画をサスペンス的に盛り上げるのを重視しているので、観ている間は気にならない様にしているのは流石としか言いようがない。

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