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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」の感想(ネタバレあり)

おそらく今年のMCU作品では最も注目されているであろう大人気「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の三作目にして最終作。

ジェームズ・ガン監督作品は、悪趣味バイオレンスとユーモアをたっぷり詰め込みながらも生き辛さを抱えた孤独な人達が自分の居場所を見つけようと藻掻いていくのを優しく、そして愛おしく、どの作品も描いてきたと思うのだけど、そのバランスが一番万人向けなのがこの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズだと思う。

ジェームズ・ガン監督作品

いかにもジェームズ・ガン的な悪趣味なビジュアルも今回は特に沢山あって素晴らしかった。
中盤の潜入ミッションになるピンク色の内蔵みたいな宇宙施設のデザインとかめちゃくちゃ気持ち悪くて、もの凄くジェームズ・ガン映画観ている感じ。内臓だけならまだ良いけど鼻毛みたいな毛がちょこちょこ付いているのが凄く汚い。
なのに中のデザインは「2001年宇宙の旅」っぽい雰囲気なのがなんとも凄いセンス。

気の毒なデザインのクリーチャー達もバリエーション豊かで見ていて可哀想だけど愛らしくもあるバランス。
しっかり改造される側の痛みも描いていて、他者によって自分の肉体が望んでないものに作り替えられる怖さがホラー的に怖く描写されていた。
ロケットの最初の友達の3人はその見た目の不憫さ故の純粋な友情を育んでいくシーンの数々が素晴らしくてずっと泣きながら観てた。

アクションシーンはこれまでのシリーズ中一番今作が良かった気がした。
特に終盤お馴染みの横並びの決め画カットからの殴り込み長回しのアクションシーンは最高にカッコ良かった。
これまでチームで何度も闘ってきた年輪を感じさせる息の合い様が気持ちいいし、二回観るとこのチームでのバカ騒ぎもこれで終わりというのが切なくも感じる。

ガーディアンズのメンバーは家族になった事で、ある意味それぞれが自分がやらないといけない役割に縛られてもいたとも思うのだけど、そこから旅立つ人、そこで踊り続ける人、どちらの人生も幸せを願い送り出すラストシーンが泣けてしょうがないし、それでもエンドクレジットの後のシーンでお馴染みの「Come and Get Your Love」が流れ出しガーディアンズの魂は決して消えないのを宣言してるみたいでまた泣いちゃう。

ロケット

一作目、二作目はピーター・クイルを軸にした作品だったけど、今回は冒頭の彼の目のアップから始まる所で分かり易くロケットが主役の目線の物語と宣言している感じ。
合間合間に入る回想シーンは死の直前の走馬灯で、彼がもう一度過去へ戻る地獄巡りでもある。
その果てに自らのトラウマと向き合い、かつての自分と同じ境遇の存在を救う事で改めて自分の居場所を確かめる物語だったと思う。

ラストの実験前のアライグマ達を見つけそこに書かれた「ラクーン」の文字。
そのルーツを受け入れて自ら「ロケット・ラクーンだ」と言葉と共にブラスターをぶっ放すカタルシス、それに答える様に共に怒る仲間達の攻撃が続いていくのが本当に泣けてしょうがない。

ガーディアンズはそれぞれが幸が薄い生い立ちの人達なのだけど、監督であるジェームズ・ガン自身もインタビューで答えている通り、血の繋がった家族以前に同じ生き物が宇宙にいないという孤独を抱えたある意味一番不幸な彼の目線でシリーズが締めくくられていくのが、ジェームズ・ガン作品らしい、とても優しいフィナーレだったと思う。

クイル

恋人だったガモーラが亡くなって、失意のど真ん中という感じ。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル」で皆から元気づけて貰ったけど、アル中へとまっしぐらで何なら前よりひどくなっている印象。
あの時はまだノーウェアの修繕とか「エンドゲーム」後のゴタゴタで忙しそうだったのもあって仕事で気が紛れていたみたいだけど、それも落ち着いてきたせいで、遅れて気分が落ちているんだと思う。

完全にガモーラが死んでいるならまだしも、2014年版ガモーラが生きている事によってより気持ちにけじめがつけられないのだけど、今回改めてガモーラと再会し、自分が愛したガモーラとは別人であるという事を認めて、最後には自分のルーツと向き合う事を選んでいく。
この自分のルーツと向き合う選択を出来たのは今作の主人公であるロケットの選んだ道の影響があると思うし、その辺が優しく響き合っている感じがまた感動しちゃう。

ガモーラ

クイルの所でも書いたけど、改めて今回のガモーラはあくまで「インフィニティ・ウォー」で亡くなったガモーラではないという差別化をしっかりしている感じで「マルチバースサーガ」に入ってからMCU作品は、他のバースの人物を同一化して語りがちなのだけど、ここら辺はジェームズ・ガンの人間描写力が光っていると思う。

支配的な父、暴力的な妹、まともな価値観の人が居ないガーディアンズの面々、そして恋人であるクイル。
インフィニティ・ウォーで亡くなったガモーラはそういう面々がいたから出来上がった人物な訳で、悪く言うとそういう「縛り」がなくなって自分にわがままに生きると、今作の様なちょっと暴力的なガモーラになるのが面白いし、メソメソしているクイルを何とも思っていないのが、逆に観ていて清々しいくらいに感じる。(もちろんどっちのガモーラが良いとか悪いの話ではない)

今作ではあくまで妹が心配で付いてきているだけの一時の共闘であるスタンスを崩さないので、決して別の人生の可能性に引っ張られる事なく、自分の生きたい場所でたくましく生きていくラストも凄く良かった。
それに何と言ってもスタローンの所に居れば安心だろという説得力が凄い。

ネビュラ

「インフィニティ・ウォー」の指パッチンでほとんどのメンバーが消えた中、ガーディアンズをチームとして支え続けたのが彼女とロケットだった訳で、多分2014年版ガモーラよりも絆は深いと思う。
だからこそ治療が成功した時に、ロケットも「ネビュラは?」とまず尋ねるし、その後ロケットの無事を聞いて誰よりも彼女が喜んでいる所では思わずもらい泣きしてしまった。
あの新しい左腕はロケットからの「ホリデースペシャル」で貰ったバッキーの腕のお返しの改造なのかもなぁとぼんやり思ったりした。

自分の事を好きになれない事をマンティスに咎められていたけど、ラストでここ数年ずっと他人の為に生きてきた彼女が自分の夢を口にして、心の底から喜びを表現して踊る所でまた涙してしまう。

マンティス&ドラックス

「ガーディアンズオブギャラクシーホリデースペシャル」でもドラックスと2人で主役だった訳だけど、改めて今作では父娘の関係性がフューチャーされていた。お互い喪失した家族を補い合う様に生きていたけど、ラストにその親離れ子離れを描いていて、ドラックスの心配そうな表情が泣けるし、ずっと自分は「踊らないやつ」と言っていた彼が新しい生き方を選ぶように踊り出すシーンでまた感動してしまう。

そういえばポム・クレメンティエフは次のミッション:インポッシブルに出るらしいのでそちらも楽しみ。

グルート

一作目がおじいちゃん、二作目が赤ちゃん、IWが反抗期、で今回が青年という感じで身体の雰囲気もマッチョだしヴィン・ディーゼルに近い印象。
首だけになった後の回復力も早く肉体も全盛だし、宇宙船運転したり何気に今作では一番人の言う事を聞けるちゃんとした子だった。
中盤のクイルとのガンアクションシーンがめちゃくちゃカッコ良かった。

ラスト更にデカくなってデザインが変わっている感じを見るとあのチームで今後もMCUで活躍するのかなぁと期待してしまう。

アダム・ウォーロック

ウィル・ポールター演じるアダム・ウォーロックも良かった。
純粋過ぎて嫌な人になりがちな印象だけど、今回はコミカルさも合わせた役で天然ギャグの数々が楽しく、宇宙超人版ジャイアンみたいな雰囲気。
アイーシャとのポンコツ親子コンビももうちょっと見たかったので、彼女があんな感じで退場になって少し残念。

ロケット殺そうとしてちゃっかり最後仲間になっていくのが引っかかりそうだけど、よくよく考えたら元々はソヴリン人のバッテリーをロケットが盗んだ事が争いの火種だったりするので、それで重傷を負ってしまうのは自業自得なバランスにもなっているので、そこまで無理がない様にも思う。

アダム・ウォーロックといえばコミックの方では結構重要な役柄だったので、今後のMCU作品でまず間違いなく重要になってくると思うし、再登場が楽しみ。

そういえばウィル・ポールターといえば僕は「リトル・ランボーズ」で初めて観たのだけど、今回スタローンも出ている事もあり「リトル・ランボーのあの子が憧れのスタローンと同じ映画に出ている」という所に勝手にしみじみ感動してしまった。

ハイ・エボリューショナリー

演じたチャック・イウジは、ジェームズ・ガン作品だと「ピースメーカー」のマーン役でお馴染みな印象だけど、そちらのツッコミ担当的な真面目な役とは真逆のマッドサイエンティスト。

完全な生物を作り出し、それのみで構成された世界を作り出すというのが目的だと思うのだけど、体力面や記憶力の高い子供達を既に作り出しているのに、ロケットの持つ色んなものをクリエイトする「閃き力」が最期のピースで必要という構図が面白い。
めちゃくちゃ悪人ではあるけど、幼少期のロケットのやりとりとか絶妙に表情豊かだし、自分にもない「閃き力」を醜い生物の筈のロケットが持っている事が許せない怒りを隠さない感じとか、記号的じゃない人間臭さも感じるバランス。

彼が持つ「ありのままを否定する」という考えた方がおそらくジェームズ・ガン作品の正反対のモノで、だからこそ最後の悪役に相応しい気がした。

気になった所

中盤の動物達が地球の様に暮らしている星を爆破する展開が結構ドライでちょっと気になった。
あの人達がガーディアンズに協力する所が人情味があっただけに、跡形もなく死んでいく展開は驚いた。
それどころじゃないのは分かるけど、ガーディアンズの面々も全く助ける気がないのも薄情とまでは言わないが、なんかちょっとモヤッとする。

あと個人的にガーディアンズのメインテーマ曲が好きだったのだけど、今回は1,2を担当したタイラー・ベイツからジョン・マーフィに変わった事も影響しているのか、あんまりメインテーマ曲が流れないのが気持ちが上がりきらない気がしないでもないかなぁ・・・。

それと欠点では無いのだけどメンバーそれぞれのドラマを描き切る事に舵を切った結果、一本の映画としてはかなりバランスは悪い印象もして、もちろんファンなので最初から最後まで感動しっぱなしではあったけど、一作目の様に誰が観ても楽しめる傑作というタイプの作品ではないのかなとも思う。

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