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「ドラキュラ デメテル号最期の航海」の感想(ネタバレあり)

同監督作だと「スケアリーストーリーズ 怖い本」を以前鑑賞したのだけど、そちらがめちゃくちゃ怖かったし、前評判も高かったので結構楽しみにしていた。

まず舞台である船、デメテル号がとても魅力的で、序盤は船の構造や、乗組員たちにとってのかけがえないの居場所である事を丁寧に説明してくれるので、観ているこちらも船の中に何があるのか?どことどこが繋がっているのか?誰がどこに居るのか?がイメージしやすくて、映画が進むにつれドラキュラが人を襲う描写が派手になっていくのだけど、襲われる場所が刷り込まれているから逃げ場のなさとかが分かり易くて、よりモンスターパニック映画としての怖さに集中出来る感じ。
船に描写に関しては木造の雰囲気とかがとても生々しくて実在感が強く、出来るだけCGとかじゃなくセットとかでこだわってる様に見えるし、お話のスケールの割に映画としては以外とリッチな見栄えのシーンが多いと思う。

そしてもちろんドラキュラの能力等に関しては観ている観客は誰もが分かっているのが前提でいけるし、そもそも映画冒頭の船が座礁しているのを画的にもみせつけてくるので「これは悲劇で終わりますよ」と宣言している作りになっているし、観ている間中ただただ乗組員達の絶望的な状況が気の毒になってくる。
雰囲気は違うけど「タイタニック」のホラー版って感じもする。

特に「カモンカモン」で名演を見せていた天才子役ウディ・ノーマン君が演じる船長の幼い息子がどうなってしまうのかが観ながら常にハラハラしてくるし、実際彼の最期はあまりにも凄惨で葬儀の所で一度蘇る展開とか本当に意地悪で酷い。

そんな感じでドラマは全体的に重いのだけど、悲劇が待っているのは分かっているからこそ、「もう助からないとしても人生の最後に自分がどういう選択をするのか?」という人間として尊厳を持って人生を終えたいという意地みたいなモノが見えてくる終盤の登場人物の心情とかは観ていて大分熱くなった。
それぞれが自分の命に代えてもイギリスにこいつを送り届ける訳にはいかないという使命感に燃えて闘うシーンとかはもう心も体もボロボロなのになけなしの勇気を振り絞っている感じで「がんばれ!」と応援しながら観てしまう。

あらすじは知っていたけどキャストとかはロクに確認していなかったので、もっと小規模な作品だと思っていたら観た事ある有名俳優ばかりで何気に豪華だし、この悲劇の物語を体現する為にピッタリな幸の薄そうな表情が光る名優ばかりで彼らのドラキュラによって人生がめちゃくちゃにされる哀愁がめちゃくちゃ見応えがある。

最近だと「ブギーマン」でも最初の方から悲惨な事になっていたデヴィッド・ダストマルチャンは今回もまあ気の毒な事になっていく。
最初の「この航海が終わったら船をお前に託す」と言われた所から、どんどん追い詰められ船を沈める役割を担う事になる流れも本当に可哀想だし、ラストのそれをも邪魔しようと殺しに来るドラキュラの鬼畜さがマジで酷い。

あとドラキュラの非常食として連れてこられた、こちらもあまりに気の毒過ぎるアナ役のアシュリン・フランシオーシも「ナイチンゲール」から引き続き幸薄い表情の演技が鬼気迫る感じだった。何と言っても目の暗さが尋常じゃない女優さんだと思うので今回役柄にぴったりハマっていたと思う。
終盤の人生の不自由さに抗う様にドラキュラに銃をぶっ放すシーンはめちゃくちゃカッコイイ。
そんな生き方を自由に選べなかった故に死に様は自分で選んで燃えていくラストも哀しいけどグッときた。

先にも書いたけど、そんな暗い顔のキャストの中での唯一の希望がトビー少年を演じたウッディ・ノーマンなのだけど、露悪的にも感じる酷い最期になっていくのが本当にショッキングだった。映画好きとしては「カモンカモン」のあの子がこんな事に、、、ってビックリが大きい。
彼の父親役のゲースロでお馴染みリーアム・カニンガムもめちゃくちゃ渋みがあって頼りになる感じだったのに、息子が亡くなって心が壊れていく感じがマジでキツかった。

こういう哀しい運命の人々の中で主人公は外から来た人間という感じで、映画を観ているこちらの目線にとても近い存在。演じたコーリー・ホーキンズの知性と人の良さがにじみ出る感じでこちらもハマっていたと思う。
ラスト悲劇を背負って闘う覚悟を見せていく顔つきで映画が終わっていくのも良い切れ味だった。

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