「ヘルドッグス」の感想(ネタバレあり)
原田監督と岡田准一主演の作品は時代劇のイメージがずっとあったのだけど、今回は現代劇で岡田准一自ら振り付けを考えているゴリゴリのバイオレンスアクション映画という事でかなり楽しみにしていた。
岡田無双映画
期待通り現在の岡田准一だから出来る唯一無二のアクション映画になっていて、とても面白かった。
ここ最近でアクションがメインの大規模な日本映画だと「るろうに剣心シリーズ」や「HiGH&LOWシリーズ」などがあるけど、主演である岡田准一がアクションの振り付けも自ら考え演じているのがジャッキー・チェンとかトム・クルーズに近い事を日本でしようとしているみたいで本当に凄い。
もちろん演技もめちゃくちゃ上手い俳優さんだしバラエティのテレビ番組でも人気者なので日本アカデミー賞常連みたいな評価をされるのは分かるのだけど、もっとアクション俳優として世界的に評価されても良い人だと思う。「ジョン・ウィックシリーズ」とかに出て欲しい。
冒頭の登場したての歩き方からして強オーラが出まくっている感じがカッコいい。個人的には「ビューティフル・デイ」のホアキン・フェニックスが演じてた殺し屋とかもそうなのだけど、いかにも贅肉がない筋肉ムキムキの身体より、ちょっと肩とかがムチっとしてガタイがある身体の方が、より「本物」な強い殺し屋っぽい生々しさが出る感じがして、その辺も考えて身体作りしてそう。
前半の廃墟で雨ガッパみたいのを着ながら坂口健太郎とヤクザを皆殺しにする所のプロ感も最早ホラーの殺人鬼みたいな怖さがあって最高。
ただ本来、韓国映画の「新しき世界」とかと同じく胃がキリキリしてくる緊張感の中でヤクザの世界に潜入していく地獄めぐりの様な話になるのが普通だと思うのだけど、弱々しい印象のイ・ジョンジェと違い、見るからにめちゃくちゃ強そうな岡田准一が演じてることによって、潜入捜査モノとしての緊張感はそれほど無い作りになっていた。
主人公の生き死にに緊張するというより、岡田准一がどんなアクションでこの状況を切り抜けるのかを楽しむアクション娯楽作品要素が強い。
そういうバレるかバレないかというサスペンス描写は後半の大竹しのぶや松岡茉優に委ねられていて、この2人が幹部2人を殺すシーンはとても緊張感があって良かった。
最強キャラの筈のAチームの2人との闘いも苦戦はしてたけど、やっぱり岡田准一がどう倒すのか?というアクションの見せ場として、生きるか死ぬかの緊張感はないシーンになっていた。
最後の死にかけの人に長話するラストが「Mr.ノーバディ」とか「ビューティフルデイ」の雰囲気で味わい深くて好き。
原田監督
あまり登場人物に感情移入するタイプの映画じゃなく、主人公を含めどいつもこいつも最初から最後まで胡散臭く大分突き放した手触りの雰囲気なのだけど、あまりに突き放し過ぎて逆にコミカルになっているバランス感覚とかが面白い。女暗殺者の拷問シーンのブラックユーモア感とか、お坊さん登場シーンから笑っちゃうクマさんのお葬式シーン、やたら長いオペラ、等等忘れ難いギャグ(?)がいっぱいあった。
なので人が死ぬシーンもあんまり悲壮感がない感じ。
あとどう考えても浮いてる被害者遺族と加害者遺族との集まりの所もドキュメンタリーなのか舞台劇なのか何とも言えない変なバランスになっていて、この辺も凄い原田監督の映画作品を観ている感じがする。
あと原田監督作品は毎回ロケーションがどこも素晴らしい。観終わった後もずっと頭に残る場所ばかりで、特に最初の山の中のヤクザが工場に使うのに説得力があり過ぎる廃墟や、中盤とラストにでてくるスパリゾートの跡地など、この映画の為に用意されている様にピッタリはまっていた。
気になった所
正直登場人物のドラマ描写とかは雑に感じる所が多かった。
特に主人公と相性抜群の坂口健太郎側のドラマがかなり薄いと思う。親が死刑囚という設定が彼の重要なバックボーンだと思うのだけど、それが主人公とあまり関係しないし、そこを主人公が理解しようとするシーンもないので彼等2人の繋がりが弱い気がした。
そして三角関係になっていく主人公と松岡茉優との関係性もやっぱり強くないので、ラストに坂口健太郎が「俺とこいつどっちが大事なんだよ!」と叫ぶのだけど、主人公にとってどっちもあんまり大事そうに思えないから彼を撃ち殺した心の痛みがさほど伝わってこなかった。
その後2人の出会いのシーンを改めて入れられても切なくならなくて正直かなり微妙な後味で映画が終わっていった印象。
あと気になったのは主人公がかつての職場の交番に近づいて仲間のヤクザに名前を呼ばれている所を見られる場面はもうちょっと何とかならなかったのかと思う。
あんな完璧超人みたいな人がああいうミスを普通しているのが信じられなくて、最初はわざとしてるのかと思ったのだけど、後でマジでただ単に迂闊な行動だったと分かってずっこけた。
そんな感じで映画的には変な所もあるけど、岡田准一というアクション俳優の魅力が満載の映画にはなっていてとても満足な作品だった。今後もこういうバイオレンスアクション映画にもっと沢山出て欲しいなあと心の底から思う。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?