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「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」の感想(ネタバレあり)

アポロ11号への月面着陸の噂からインスパイアされたロマコメ映画。
内容をちゃんと知らないで予告を見た時点では映画の出す結論によっては実際のNASAの偉業を侮辱することになるんじゃないか?、と少し不安に感じていたのだけど、史実はわかっているのに終盤での盛り上がりで「どうなってしまうんだ!」と、映画に夢中になってしまう位面白かった。

月面着陸自体は本当だし、宇宙飛行士たちが話している地球に向かって話す音声も本物で、本人達も撮影できていると思っているし、NASAの大半の人が本当に中継だと思っているという所で、アポロ計画の実際の関係者への配慮はしっかり出来ているのに安心した。
あくまで今回の映画オリジナルの面白い展開という事にしていて、NASAの人達がした偉業への敬意を忘れていない所にもグッとくる。

政府的に月面着陸に成功してもしなくても月の映像はフェイクの方を使うという決定になるのだけど、それを逆に出し抜くという方向にいくのがとても盛り上がる。
ドタバタでカメラを設置したせいでちゃんと映るか確認出来てないという不安要素から実際に撮れているのか?もしかしてフェイクの方が流れてないか?と、最早フェイクの方の再現クオリティも高すぎてどちらが流れているかよく分からなくなるのがまたすごい。
物語的には本物の映像が流れている方が良いのだけど、「そこに無い映像をある様に見せる」映画スタッフ達の仕事人っぷりが極まり過ぎて、誰もちゃんと見たことがない月を再現し、人類にとっての大きな一歩を表現出来てしまっている所にもグッときてしまう。

本物かフェイクか分からない膠着状態の中に満を持して登場する猫ちゃんも最高で、大の大人が猫一匹に必死になっている絵が笑えるし、この猫ちゃん大暴れによって映像が本物であったことが分かる流れがとても痛快。

主人公コールの冒頭の箒で危険物の漏れを確認していくシーンから笑えるのと、同時にそこら中で爆発するのが日常茶飯事で、NASAがいかに切羽詰まった状況なのかも分かるのが面白い。

そんな状況での現場責任者でいっぱいいっぱいになりながらも、チームを引っ張っていく。
ここでのNASAのチームの人たちもみんな絶妙にコミカルで、それぞれキャラクターとして印象深い人ばかりだし、一つのプロジェクトを成功させようと一致団結していくお仕事映画としての側面でも楽しめた。

コールを演じたチャニング・テイタムの冗談の通じない感じは、流石でめちゃくちゃ笑えた。ケリーが何かアクションをする度に頭抱えてるのが気の毒だけど、コミカルに演じきっていたと思う。

元々はパイロットで宇宙飛行士志望だったが選ばれなかった経験や、アポロ1号の事故によって飛行士達を死なせてしまったトラウマを切なく語る様な花を手入れする背中がグッとくる。

そしてもう1人の主人公スカーレット・ヨハンソンが演じたケリーも素晴らしい。
図々しくも男ばかりの職場に、会話だけでその場の空気を支配していく様がカッコいい。あの手この手でNASAのPRをしていくのだけど、インタビュー様に映える俳優を用意したりとめちゃくちゃ強引なのだけど、しっかり話題を掻っ攫っていく。

自分自身の過去すらも偽ってきた彼女が、真っ直ぐなコールとのぶつかり合いの中で、気持ちを通じ合わせていく様子がラブコメ映画として見応えがあった。
最後の偽りを捨てて、コールと向き合うキスシーンはラブコメとしてベタな終わり方だけど、感動的だった。

あと終始胡散臭いウディ・ハレルソンも味わい深い人物だったと思う。
真実を伝えることが重要では無く、人々が見せたいものを見せる役割で、終盤は悪役的なポジションにいくのだけど、ラストの猫に翻弄されてあたふたしてるのが笑えた。
それでいて「予定と違うけどこれはこれでオッケー」と割と納得してしまう感じが良かった。

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