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少女バーディ 大人への階段の感想(ネタバレあり)

人生の折り合いの付け方

13世紀のイギリスが舞台で女性は良い縁談があるのが一番幸せみたいな価値観なのだけど、その「良い」というのがお金持ちに嫁いで、その見返りとして女性の実家にもお金を送られるのがウィンウィンの関係で、ほとんどの人がそれを疑っていない。
まあどうみても「人身売買じゃん」という感覚でこちらは見ているのだけど、主人公バーディがその価値観に対して「NO」を突き付けていく様子が見ていて爽快だし、基本コメディ映画なので重くないのが好ましい。

現代に比べると自分の生まれた環境から選べる生き方の選択は極端に少ないし、登場人物に感情移入すると観ていて辛い気持ちにもなるのだけど、今だって自分のなりたいものになれる訳じゃないし、この時代程じゃないにしても生まれた環境で辛い気持ちになる人もいる訳で、やっぱり「人生の不自由さ」に嘆きながらもなんとか折り合いを付けて必死に明るく生きていこうとする人達の逞しさは普遍的でとても勇気を貰える。
原作は児童文学らしいのだけど、10代の少女から色んな人の人生を見る視線がとても瑞々しい。

登場人物それぞれが可能性が限られた人生の中で折り合いを付けながら楽しく生きていこうとしている様子が愛おしく観られる作品だと思った。

バーディ

結婚させられそうになるのをあの手この手で逃げていく様子が面白いだけど、友人の結婚相手が完璧に子供だったり、想いを寄せていた叔父があっけなくかなり歳上のお金持ちの女性と結婚したり、それを近くで見ている彼女の立場からすると辛いと思うのだけど、どことなくコミカルさも入れて描いてるバランスがなんとも不思議な味わい。

ただそういうコミカルさの中にもしっかりとしたメッセージ性もあって、特に娘の事を金儲けの道具としてしか考えていない友人のがめつい父親に「私達の価値を決めないで!」と怒りをぶつける所は凄くグッときた。

結局彼女が結婚はしないという選択を続ける事を選んで映画は終わっていく。
当然今の時代感とも違うので現代的な価値観を押し付ける様な綺麗事に見えるラストだと嫌だなぁと思っていたけど、あくまで家族はみんな貧乏だし、まだ父親の縁談の攻撃は続くし、もしかしたら良い人が現れて結婚をするかも知れないし、何か明確に状況が好転して終わっていく訳じゃ無いけど、「どうなっても自分は自分である」という事を彼女自身が納得している様な感じがして、そこに感動があった。

ゲーム・オブ・スローンズでリアナ・モーモント役でお馴染みのベラ・ラムジー。ゲースロではキリっとした印象だったけど、今回のはじける笑顔で泥だらけになって走り回っている姿も愛らしい。
ゲースロ繋がりで言うとオベリン・マーテル役のペドロ・パスカルとW主演の「The Last of Us」のドラマも楽しみだな。

あと叔父さんの結婚相手の女性が何とも不思議な味わいの人で、バーディが途中から好きになっていくのも納得の魅力があった。
色んな事を乗り越えてきたからこそ醸し出される図太さと優しさみたいなものがかっこよかった。

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