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芸人を辞めてから気づいた大切なこと。

芸人を辞めて5年ほど経ちました。M-1をきっかけに芸人をしていた時期がありました。苦労したことは山ほどありますが、今日は漫才のネタ作りの話をします。

ワタシがチャレンジした漫才のネタには「流れのなかでボケていくかたち」と「同じシーンを何度もやり直させるかたち」の2種類があって、もともとは前者、「流れのなかでボケていくネタ」を作っていました。

ファミレスのネタなら、
注文でボケる

料理でボケる

お会計でボケる
・・・。

でもそうすると時間がかかります。ボケを理解させるツッコミのセリフがタイムロス。また流れのなかで進行するので1つ外すとそれ以降全く笑ってもらえないリスクもありました。はじめたばかりのワタシたちにはものにできない感じがありました。

結果がなかなか出せず、次第に「同じシーンを何度もやり直させるかたち」へシフト。面白いところを切り取っていく作り方をはじめます。「もう一回やって!」を繰り返して「じゃあオレがコッチやるから」と続くスタイルですね。

その背景にはM-1もありました。最近の流行りは分かりませんが、そのころ周りでは「ボケの数」や「スピード感」がひとつのものさしになっていました。

M-1をはじめとする賞レースの1回戦はネタ時間が2分しかありません。その条件下で無名の芸人が勝ち抜くには2分間に起承転結をそしてなにより笑いを盛り込む必要がありました。

・・・というのは簡単ですが、起承転結と笑いの両立は難しかった。笑いに走って起承転結への意識は次第に薄くなっていきました。結局、支離滅裂の内容に。自身も無くなっていきネタは相方に任せるようになります。

今思えば、もう少し冷静に構成を考えることが出来なかったかなぁ。と思います。ボケの順番も工夫していたつもりでしたが確証を得られるほどではなかったと思います。

ネタ作りのなかで面白いことを見つけると、その可能性を信じて、熱い気持ちでネタを作ります。そして演じます。極端な言い方をすれば「面白いに決まっている!」とお客さんの反応を見ずに決め付けていました。結構な自信ですよね(笑

でも、大事なのはお客さんが笑うかどうかです、当たり前ですけど。向かい側に座るお客さんは冷静です。ネタを始めて、面白いポイントに行き着くまではいたって冷静なんです。その冷静なお客さんを笑わせないといけない。いま芸人としてネタを書くなら、思考の基点はここに置きます。

つまり客観的にみること。お客さんの冷静さをイメージが出来るかということは芸人、表現者にとって重要なポイントだと思います。それが出来ないなら、受け手に聞いてみる。

ワタシたちファンは芸人やネタに対して、面白い・面白くないとついつい言ってしまいますが、見せ方が違うだけで、基本的に芸人さんは面白い。というか「自称面白い」を名乗れる人はみんな面白いと思います。

ただ「笑いを取る」ということには不確定要素が多すぎる。そのなかでシチュエーションを作ったり、フラグを立てたり、人に優しくできたり、自分がたくさん笑っていたり、出来る限りの手を尽くせる人がプロではないでしょうか。だから芸人じゃないけれどプロ相当、のようなかたもたくさんいると思います。

だから見せ方は大事です。「芸人は全員面白い」「全部のネタが面白い」と思ってライブを観るとすこし違った楽しみが出来ると思います。ココが面白いと思っているのならこうしたほうが伝わるかも。と思うこともあるかもしれません。

そして、相手の気持ちが分からないときは素直に聞いてみることが大事です。先日、久しぶりに当時の仲間が出演するお笑いライブを観にいきました。ネタを見た後に、当時親しくしていた芸人が、ワタシにネタの感想を聞きにきてくれました。芸人を辞めて5年以上経つのに。。

年齢を重ねると、見えないものが見えてくる。
若さからくる勢いのようなものも大事だけど、
周りに耳を傾けることも大事。
これはネタ作りに限った話ではない。

「あのシーンでなんであのギャグ言わなかったの?」「言うのを忘れてました。」「お客さん、言うの待ってたよぉ。」・・・当時の自分が若かったことに最近気付いた、どこかでまた、芸人に憧れている。

お客さんの期待することが分からなかったら、素直に聞いてみた方がいいと思う。期待されていることがわかってこそ、やることが見えてくる。

#実体験 #エッセイ #教訓  #お笑い #芸人 #コラム #ビジネス


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