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【詩】髪結いの宴

星空
噴水の水音と甘い果物の香り
残暑の天幕に集う
若き髪結いの友が
奏でる音楽で結ばれる宴と縁

ぬかるみに嵌まったかのような
君との憂いがこびりついた心

暮らすため、仕事につくため
音楽を禁じられ
対面で会えない日々を
思い出す

君が「会いたいなら来て」と言った時、
私も本当は会いに行きたかった
だけど、罰に怯えて
会いに行くことができなかった

ただただ耐えて心を壊し
出来上がったのは
歪な言葉の連なり

周りの期待に応えて、
自己犠牲を払うより
もっと自分に素直な生き方の方が
君との縁も大切に出来たかもしれないな

そんな憂いと後悔を
優しく包んでくれる髪結いの歌声
無邪気にはしゃぎ、歌う聴衆の声
温かい髪結いの家族たちの愛情
屈託のない笑い声

出会った頃は、こんな風に
何も考えず素直な気持ちで
君の音楽に感動し、喜び、涙し、癒やされていたよ
友と分かち合っていたよ
それなのに、私はいつから、
そんな純粋な気持ちを忘れてしまったのだろうね

だけど、君と別れた今、
惨めや葛藤や不安や後悔の先で
別の尊いものや
美しいものを見つけたよ
君から離れたからこそ、得られた幸せが
ここにある

だから、今度こそ素直になって
君に「ありがとう」と言いたい

2度と会えなくても、この地平線で
繋がっていると信じて
自分を慰める夜


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