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『やさしい猫』中島京子【読書感想文#1】

こんにちは!
私たちBONDは入管問題に取り組む団体です。今回から初の試みとして「BOND×読書感想文」企画を始めます!入管問題について多くの方々に知ってもらい理解を深めてもらうために、定期的に入管問題に関する書籍を中心に紹介していきます。

早速ですが、#1として紹介するのはこちらの作品です!

『やさしい猫』 著:中島京子

感想文の書き手は、BOND学生メンバーのMさんです。ぜひ最後までお楽しみください~


・はじめに

私は最近まで、日本で外国人が収容されていることを知りませんでした。そこでは、心身の健康を奪われ、命まで落とす人がいます。それなのに、多くの人が目を向けず、変わらないという理不尽な現状には、人々の差別意識が大きく関係していると私は思います。

中島京子さんの小説 『やさしい猫』が入管行政について取り上げていると知り、どんな物語なのだろうと興味を持って手に取りました。


・要約

マヤの母、ミユキさんは、スリランカ出身のクマさんと出会います。ふたりは愛し合っていましたが、彼が 「外国人だった」 ことで、当たり前の幸せが奪われていきます。

入管に収容されている人やその家族が直面する苦しみを克明に描き、入管職員や弁護士、田舎のおばあちゃん、クルド人の男の子… それぞれの思いに寄り添う小説です。


・感想

どんなに理不尽な扱いを受けても、マヤちゃんやミユキさんを守ろうとするクマさんの優しさに、何度も涙がこぼれました。ひとつの物語として、また自らの人権意識を問い直す機会として、巡り会えて良かったと心から思います。

また、収容されている家族と面会を重ねるシーンや、裁判に関わる家族の葛藤が描かれた場面も、実際のものと限りなく近く感じられ、とても読み応えがありました。

日常や 「家族」 という大切な関係を壊されて、「(入管は) 何を何から守ってるんだろう」 と呟いた、語り手のマヤちゃんの言葉が、私にとても重く響きました。仮に 「日本を外国人から守る」 のだとすれば、外国人全員を 「犯罪者」 のように扱うことに他なりません。
外国人が悪いことをするというイメージは、私たちの社会にしばしば存在します。でも、立ち止まって考えてみれば、「外国人」 というくくりはあまりに広く、全員を悪者として捉えることは不当であると気づきます。国へ帰れと悪意を持って連呼する人々に限らず、私たちは無意識のうちに差別へと加担してしまっているように思います。

ひとりひとりのあたたかい思いが、入管職員の機械的な対応によって、ある日突然、粉々にくだかれてしまう。こんなことが許されていいのでしょうか。同じ 「人」 なのに、自分には関係ないと言えるのでしょうか

収容には期限がありません。また、たとえ収容を解かれても、心の傷はすぐには癒えません。解雇や、それに伴う結婚の延期といった、誰にでも起こりうる事情が重なっただけで、ある日突然 「逮捕」 され、帰国か無期限収容の二択を迫られて、こんなにも苦しまなくてはならないのでしょうか。「確実に前までのクマさんではない」 という言葉からも伺えますが、収容された人の人格までをも変えてしまう、入管の冷酷さに、そしてこうした入管の方針を容認している 日本社会の隠れた暴力性に、怒りと恐怖で身悶えしました。


・おわりに

多くの人々に、内なる差別意識を自覚させ、行動を起こさせる力がこの本にはあると思うので、たくさんの方に届くことを願っています。


どうだったでしょうか?気になった方は、ぜひ『やさしい猫』(著:中島京子)を手に取ってみてください。

次回の投稿もお楽しみに~