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(イベントレポート#2)11/4~11/6貝塚オープンファクトリー2021

11月4日(木)~11月6日(土)に貝塚で初となるオープンファクトリーイベント:貝塚オープンファクトリー2021が開催されました。南海社員たちも計6会場に参加、現地に行くことで改めて気付いた貝塚の産業・歴史・文化を紹介します。

貝塚オープンファクトリーへの想い

「生まれ育った貝塚・泉州の企業・まちを元気にしたい」
貝塚オープンファクトリー実行委員長:延生 康二(えんしょう こうじ)さんの考えから計画が始まりました。

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(南海沿線のいいしごと#2)大阪府貝塚市:延生 康二さん」でも貝塚への想いや貝塚オープンファクトリーのメイン会場となったコワーキングスペース:ポートフォリオ立ち上げの狙いを公開中です!是非、合わせてご覧ください。

「元々、交流のあった工場等へのお声がけはもちろんですが、近くにあったけど繋がりが無かった会社の方達にも『オープンファクトリーを一緒にやりませんか?』と直接お話をしに行きました。そうして集まった皆さんと話し合いを重ねて、アイデアを出しあって、、、本当に一から手作りで企画をして開催まで漕ぎつけることができました」

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「一番心配だったのはお客様が来てくれるかどうか。初めての企画なので、認知してもらう所から始めなくてはならなかった。また、初めてなのは工場の方達も同じで、皆さん『オープンファクトリーって何?』『どうすれば良いの?』というのが正直な反応でした。それでも、工場で話を進めていくうちに理解をしてもらえ、無事に開催することができました。延生金属の場合ですと、工場の皆さんやはり最初は戸惑っていましたが、だんだんと張り切って準備をしてくれるようになり、工場内でお客様が通るルートなどが整備されて、『こんな広かったっけ!?』とホント驚くほど工場がきれいに整理整頓されました笑」

貝塚オープンファクトリー:イベントレポート

実際にどんなことが貝塚オープンファクトリーで行われたのか、現地で見て聞いたことを紹介します。

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貝塚オープンファクトリーはメイン会場である貝塚駅前のコワーキングスペース:ポートフォリオで集合し、貸切バスに乗って行きたい工場へ向かいます。ポートフォリオの中では工場行きのバスを待つ人達が待ち合わせ場所として使ったり、食事をしたり、仕事をしたり、更にはオープンファクトリー参加企業の製品が展示されていたりと、さながら小さなバスターミナルの様でした。

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ちなみに、ライターはガパオライスをいただきました。食事をすると3時間利用可能になるので、お得感もありました笑

レポート:リングヂャケット

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リングヂャケットは国産の高級スーツを製作している会社です。貝塚の工場ではスーツの型紙作成から生地の裁断、縫製、袖付け、仕上げまで行われていました。

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スーツづくりの設計図とも言える、型紙からリングヂャケットのこだわりが!「人体の立体的な曲線に沿った着やすい、だけどビシッとキまる格好良いスーツを作っています」。腕を動かしやすいように、肩を前方に振った特徴的な型紙を用いつつ、生地をアイロンで曲げながら縫製することで、腕を動かすときにもスーツが突っ張らない設計と縫製仕様になっています。

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縫うのはミシンと手縫い。一着一着、人の手で本当に丁寧に縫われています。
「型紙も縫製も、その技術はリングヂャケットの社内で脈々と引き継がれていきます。一方で、より良い方法を追求し続けていくことで、高い技術力を持つことができます。リングヂャケットは職人がいてこその会社でもありますね」
工場には若い男性・女性の職人さんたちも多くいらっしゃいます。縫製の技術に魅かれて全国から入社してくるそうです。

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工場設備の半分近くを占めていたのはアイロンを行うプレス機。案内していただいた方々も「うちのアイロン技術は凄いよ」「良いスーツには、中間プレスやアイロンがけが大切」「正直に言えばほつれなどの縫製不良と違って、中間プレスやアイロンワークといった工程は気付かれにくい。だけど、そこにこだわるから『リングヂャケットのスーツ』ができるんだ」とおっしゃいます。同行していた他の裁縫工場に勤めているという女性は「こんなにこだわるなんて考えられない」と感動していました。

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そして、工場見学が終わって戻ってくるメイン会場:ポートフォリオでは完成品の展示販売が行われていました。いつも身体に合うスーツがなくて苦労しているライターも試着してみましたが、身体にフィットするのに窮屈さが無い驚きの着心地!工場でリングヂャケットのこだわりを見聞きしているのもあり、着心地に感動して「おぉっ!」と声が出るという初めての体験をさせていただきました。

レポート:神鋼鋼線工業 二色浜事業所

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神鋼鋼線工業は、ばね用鋼線やPC鋼線、ワイヤロープを製造する会社です。貝塚市にある二色浜事業所はワイヤロープを製造しており、約200名の方が働く工場で、ここでは年間約15,000tのワイヤロープを作っています。

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ヘルメットを被って工場内へ。最初は太い1本の″ロッド”と呼ばれる原料を所定の太さに引き伸ばし、それを機械で縒り合わせる事によって強さとしなやかさを持ったワイヤロープに。縒り合わせる数によって、ニーズに合ったワイヤロープを作ります。

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ワイヤロープが使われているのはエレベータやクレーン、吊り橋など命に関わる施設・設備。世界中で安全に使用されている実績・信頼性を改めて感じ、感動したという参加者もいらっしゃいました。

レポート:延生金属

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延生金属は日本国内に4社しかない帯鉄(荷物搬送の際にバンドの様に使用される帯状の鉄。布やプラスチックバンドでは切れてしまう重量物等を固定する際に使用されます)メーカー。その中で帯鉄専業でやっているのは延生金属だけ。写真は帯鉄で作られたピクトグラムですが、工場スタッフの遊び心が活き活きと伝わってきます。

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社長自ら、来場者に対して挨拶。そもそも帯鉄とは何か、市場がどうなっているのか等、どうやって作っているか等を社員の方と共にご説明いただいた後にヘルメットを被って参加者も工場内へ。工場内は残念ながら撮影禁止でしたが、数トンの鉄板が細い帯状にスイスイと裁断された後に、大型機械で延生金属にしかできない錆等を防ぐための熱処理が行われます。

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そして、延生金属では帯鉄を作り続けて培った熱処理という唯一無二の設備と技術を使って、建築機材の提供という新しい市場へ挑戦をしています。鉄が建築機材に使われにくいのは赤錆が出て強度と見た目が悪くなってしまうから、、、しかし、延生金属の持つ熱処理の技術であらかじめ青く錆びさせることで赤錆の発生を抑えつつ、鉄の重厚感や独特の質感を持ったブルーイングパネルを生み出しました。延生金属に訪れたデザイナーが帯鉄のビジュアル的な魅力に気付いたのがキッカケで、既に函館のホテルの内装として使用されています。

レポート:テラシタ

タオル織機 タオル

テラシタは貝塚市の隣:泉佐野市で、タオルやTシャツ等へプリントを行い、アーティストやスポーツチームのオリジナル商品を作っている会社です。泉佐野は日本三大タオルの1つ「泉州タオル」の生産地で、基本的には工場ごとに糸づくり・縫製・プリント等の工程を分担して行っていますが、テラシタはほぼ全ての工程を自社で行う比較的珍しい会社になります。

タオル織機 糸巻き

タオル織機

タオル織機では縦糸、横糸、パイル用の糸の3種の糸を組み合わせてタオルを作っていきます。巨大な糸巻きの糸は10,000メートル!建物の2階部分からぶら下がっている紐は約6,300本!!見学者たちの間に大きな驚きが広がります!

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テラシタには、刺繍部門もあります。機械を使用して高速で刺繍をしていきます。驚くほどの速度で刺繍が完成しますが、糸の送りに不備があると切れてしまいます。糸を再装填して途中から再開することもできますが、場合によっては、既に刺繡されている糸を全て抜いて最初から作業をやり直すなど、機械と人の手の両方を使って刺繍が織りなされていきます。

インクジェットプリント1

シルクスクリーンプリント1

タオルやTシャツに思い思いのカラーリングやロゴを素材や数量に合わせた機械で描きます。写真1枚目のインクジェット印刷の様にコンピューター制御ができる機械も多いですが、写真2枚目のシルクスクリーン印刷のように職人の経験が必要とされる場面もあります。
様々な機械が効率的に配置された現代的で静か、清潔感のある工場のなかに、昔ながらのプリント技術を感じられます。スタッフの方からも「タオルやTシャツ、何でも作れるからお気軽に相談してください」と自信がうかがえました。

レポート:中出農園

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貝塚オープンファクトリーはファクトリー=工場のみならず、地元の農家さんでの収穫体験も実施されました。案内していただいたのは中出農園の中出さん。水ナス栽培の有名人で、様々なテレビ番組への出演、全国農業コンクール全国大会では名誉賞・農林水産大臣賞を受賞しています。

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「水ナス栽培の条件は、土壌・気候・肥料。そして1番大切なのは思いやり。水ナスは泉州の特産品です」
「水ナスの収穫期には最大で1日約4,800個の水ナスを収穫します。その時は早朝3~4時から夜19~20時まで働いています。自分たちの直売所で売るのはそのうちの1割。それ以外は加工用として、自社で加工品を販売している他、全国の飲食店や一般のご家庭にお届けしています」

水ナス栽培に必要な細心の注意力と強靭な体力は高校野球で鍛え上げられた賜物との事。中出農園では水ナス以外にも壬生菜(みぶな)や菊菜(春菊)、サラダケールにサラダカブ、青ネギとブロッコリーも栽培しており、大手コンビニチェーンや飲食店等へも卸されています。

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惜しい事に水ナスの収穫は時期がずれてしまったので、今回は京野菜としても知られる壬生菜の収穫を体験します。実際の収穫と同じく鎌を使って収穫!女性や子どもの参加者もいらっしゃり、怪我無いように安全第一で作業を行っていきます。壬生菜は葉や茎が長いのでドコで刈り取れば良いのか、なかなか迷い所ですが、中出さんに教わりながら根っこの部分から刈り取っていきました。

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収穫した壬生菜は参加者でお持ち帰り。持ち帰った南海社員はおひたしにしていただきました。採れたて新鮮、シャキシャキ感やみずみずしさあふれる美味だったそうです。壬生菜は冷たい状態でも温かい状態でも美味しい万能野菜で、中出さんおススメの食べ方は浅漬けや春菊の代わりに鍋に入れても美味しいとの事でした。

レポート:貝塚寺内町ツアー

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最後にレポートするのは貝塚寺内町の案内ツアー。貝塚は平安時代からつげ櫛を特産品とした商工業が発展したこともあり、江戸時代には岸和田藩から独立した寺内町として栄えました。その寺内町の中心になったのが願泉寺(がんせんじ)。表門や本堂は重要文化財に指定されている、浄土真宗の由緒正しいお寺です。

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寺内町ツアーでは区画1軒、道1本、建屋の装飾それぞれに歴史的背景を1つ1つ丁寧に解説をいただきました。古い家屋を改装して住居や店舗にされており、住んでいる人・地域の人の生活に現役で使用されています。

メディアからも注目された「貝塚オープンファクトリー」

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取材風景

今、オープンファクトリーは企業の新たな取り組みとしてメディアからも注目されています。貝塚オープンファクトリーにも某テレビ局や新聞社が訪れて、工場見学の模様や主催者たちの想い、参加した方々の感想等を取材していました。

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「今回は約250名の方々に参加していただけましたたが、初めてだったこともあり、良かった点も改善点も様々にあると思います。次の開催に向けて更に良いイベントとしていきたいですし、その先2025年の関西万博の時にいらっしゃるであろう、多くの外国人の方を迎えられるように整えていきたい。貝塚、そしてテラシタさんのある泉佐野は関西空港のすぐ近く。泉州が更に元気になっていけるよう、来年に向けて準備していきます!」

貝塚オープンファクトリー2021は終了しましたが、延生実行委員長達は次の開催、そしてその先へと向けられています。

あとがき

工場へ向かうバスの中、「貝塚駅に降りたのは初めてだ」とお話ししている方がいらっしゃいました。私ども鉄道会社の人間にとって、ありがたいと同時に、沿線のまちが元気になる事が私たち南海電車にも直結していることが明らかな一言で、参加して早々に嬉しく温かい気持ちになりました。
オープンファクトリーの主役は工場で普段行われている工程です。もちろん、工場に入れること自体が特別ですし、通路を整備したり、案内してくれる方がいるのは非日常です。しかし、目にするほとんどは日常の姿。まちの日常が貝塚に訪れたことが無い人をも惹きつける魅力を持っていることに、貝塚オープンファクトリー2021を通じて、肌で知る・知ってもらうことが出来たと感じています。

また、南海沿線では堺でもオープンファクトリー(FactorISM)が開催されており、貝塚オープンファクトリーにも堺のメンバーが見学に訪れていました。私たち南海電鉄は100年以上、線路でまちを繋いできましたが、加えて人・情報を繋ぐことで、もっと元気な南大阪・和歌山に向かって、沿線・まちの皆さまと共に走り続けます。

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