短評:平成も終わったいま、全然変わっていない 〜 「赤い水」1963年、山本薩夫 監督
シネマヴェーラ 「赤い水」1963年、山本薩夫 監督 伊藤雄之介と西村晃の特集のうち、伊藤の作品(準主演作) 伊藤雄之介は地主で役人と結託して私腹を肥やしてゆく住職を演じる
これは救われないハナシ ムラの役人は公費を使って豪遊 …… 若い人は仕事なくて食えない …… 組合トップを抱き込んで切り崩し …… 一般庶民を投機に引き込んで損させて坊主丸儲け …… 主婦層を取り込む宗教 …… アセスメントでサンプルを偽造 …… 偽装データを利用して町おこし …… マスコミ抱き込みによる告発の握りつぶし …… そしてインテリはポジションを得ると安住 …… 酔っ払って息巻くが、ふと冷静になり、自分の発言が過激すぎてクビにされないかキョロキョロする
昭和38年の作品だが、なんか平成も終わったいま、全然変わっていない 公費問題、オリンピックや築地移転問題など、ほぼほぼこういった構図がそのまんま残っている
戦後間もない映画「村八分」(1953年)では、そういったムラ社会の悪弊打開を行うマスコミの役割に希望を持たせていたが、1963年の山本薩夫 コメディの枠を借りつつ、ここまで悲観的な作品
芸者で町役人の愛人やってるヒロイン いつも理想的な生活を夢見ている 彼女が旅立つところだけにかろうじて救いがある でもこれは大塚英志が指摘していた、マンガ「ホットロード」結末のような旅立つ終わり 現実に着地しないオープンエンドであろう