オペランド条件付け〜プロダクトマネジメントで使える哲学〜
今回のテーマに関しては、哲学というよりは、心理学(強いて言えば行動主義心理学)に基づいた考察になりますが、非常に興味深く、かつ現代のプロダクトマネジメントに転用できそうな理論ですので、こちらを深掘っていきたいと思います。
オペランド条件付けとは?
オペランド条件付けとは、バラス・フレデリック・スキナーというアメリカの心理学者で行動分析学の創始者が実証した概念で、オペランド反応に報酬刺激ないし、嫌悪刺激を随伴させ、その反応の生起頻度を決定する手法になります。
簡単に、現在のプロダクトに置き換えて要約してみると、とあるアプリを起動した際にそのアプリの起動回数に応じてポイントがもらえたとします。
ここでいう「とあるアプリを起動する」という行為が、「オペランド反応(もしくは、オペランド行動)」になります。また、「そのアプリの起動回数に応じてポイントがもらえる」というものが「報酬刺激」になります。
この例えで言うと、人によっては「ポイントがもらえるのであればアプリを沢山起動しよう」という気持ちになり、自発的(随意的)にアプリを沢山起動するようになると思います。
今回の例に対して、抽象度を上げてまとめると、
あるオペランド反応に
報酬刺激を与えることで
行動の生起頻度を増やす
がオペランド条件付けにあたります。当然のことながら、逆も然りで、
あるオペランド反応に
嫌悪刺激を与えることで
行動の生起頻度を減らす
ということにもなります。
スキナー箱の実証実験
バラス・フレデリック・スキナーは、上記のオペランド条件付けをネズミのレバー押しの実験で実証しております。動画内の右側のレバーを押すと左の受け口に餌が出てくるという仕組みになっております。
見ていただければ一目瞭然ですが、ネズミは餌という報酬が得られ続けることを理解すると、餌を食べてはレバーを押しという行動を繰り返します。
これをオペランド条件付けに当てはめてみると以下のようなことが言えます。
レバーを押す(オペランド反応)
↓
餌が得られる(報酬刺激)
↓
レバーを押す行動がさらに誘発される(行動の生起頻度が増える)
そして、さらにスキナーは、以下のような4つの条件を設定して、ネズミがどのパターンで一番レバーを押し続けるのか、という実験を行いました。
1. レバーの押し下げに関係なく、一定間隔で餌が出る。
2. レバーの押し下げに関係なく、不定期間隔で餌が出る。
3. レバーを押すと、必ず餌が出る。
4. レバーを押すと、不確実に餌が出る。
『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』山口周(著)
実験によると、4→3→2→1の順でネズミがレバーを押す回数が減少することがわかっております。この実験から考察すると、単純にオペランド行動に対して報酬刺激を与え続ければ、比例的に行動の生起頻度が増えるわけではないということがわかります。
抽象的な言葉で説明すると、オペランド条件付けには「不確実性」が重要ということになります。
この不確実性と報酬の関係は、各界の著名人の方も著書やSNS上で発信しております。
「不確実性」の事例
前の章でスキナーの実験に基づき、生起頻度を増やすためのキーワードとして以下が明確になりました。
・「オペランド反応」に対して「報酬刺激」を与える。
・「報酬刺激」に対して「不確実性」を盛り込む。
このキーワードが、今話題のWebサービスやアプリにどのように盛り込まれているのか、簡単に分析してみました。
SNS
Facebook、Twitter、note、Qiitaについては、不特定多数の人から「いいね」や「スキ」をされると言う点で、自らが発信したどんな投稿に報酬が得られるかの不確実性の高いサービスだと思います。
情報サービス
グノシー、スマートニュースなど色々なサービスがありますが、特に注目したいのが、NewsPicksの口コミ機能です。
口コミ機能では、様々なニュースに対して各界で活躍されている方々の見解を垣間見ることができます。また、自分のコメントした内容に対して「いいね」を押せる機能あるため、自分のコメントに対してどんな方がリアクションをしてくれるのか、というワクワク感が得られます。この機能については不確実性の高いものだと考えます。
Eコマース
メルカリ、ヤフオク、Paypayフリマ、アマゾン、楽天市場、ヤフーショッピングなど、Eコマース事業はかなり盛んになってきておりますが、特にフリマアプリを中心とするCtoC向けのサービスに注目すると面白いです。
メルカリでは、出品者が自分の出品する商品について、商品説明や価格設定を行いますが、内容によって購買者の反応がかなり変わってきます。そして、機能としてはリアクションやビューの数でどの程度市場が反応しているのかがわかります。
ヤフオクでも同様に購買者のリアクションに応じて、出品額が上げ幅が変わってきます。
出品者にとっては、出品した商品がどんな値段で売れるのかわからないワクワク感、そして、購買者にとっては新品で定価だとXX円の物が破格の値段で買えるかもしれないワクワク感が得られると言う事で報酬刺激に対する不確実性の高いサービスということが結論づけられると思います。
オペランド条件付けをプロダクトにどう活かすか
SNS、情報サービス、Eコマースの各業界のプロダクトを踏まえて、ユーザーの生起頻度をより増やすための取り組むべきこととして見えてきた結論は以下になると考えます。
・不特定多数のユーザーに対するリアクション機能を充実させる。
・数多くのユーザーをできる限りプロダクトユーザーとして多く取り込む。
まとめ
今回は、スキナーの「オペランド条件付け」の概念を元に現在のプロダクトへの転用を考察してみました。ここで考察した内容をベースにより良いサービスが世の中に登場することを期待しております。
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