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システム開発で孫請けが多発する原因について考えてみる

三井住友銀行の業務システムのソースコードが、開発の委託先から流出したことが1月に明らかになった。発注者や1次請負の事業者の知らないところで、委託先とみられるシステム開発の技術者がインターネット上に投稿。漏洩させた技術者に罪の意識はなく、委託先の管理が行き届かなかった。システム開発には「孫請け」のような慣習があり、同様の事例が他にも埋もれている可能性がある。
(上記記事より一部抜粋)

下請けの下請けを「孫請け」と呼んだりしますが、雇用者からしてもコントロールが効きづらいため情報流出などの危険性があり、被雇用者からしても直接雇用と比べ自社、元請け業者の利益が差っ引かれる分収入が少なくなってしまいます。なぜ、こういった誰にとってもいいことのない慣習が生まれたのかについて考えてみようと思います。

ズバリ、正社員を解雇しづらい日本の雇用制度が原因

委託元

そもそも、委託元がシステム開発を外部に委託しなければこういった問題は起こらないんですが、システムを内製するのであれば人員を社内に確保する必要があります。ただし、正規雇用として人員を確保することは、その被雇用者を雇用し続けることと同意なので避けられます。そのためIT企業でもない限りシステム開発は外部に委託することになるのです。

一次請け企業

比較的大きめのIT企業が一次請け企業になることが多いです。何故自社で請けた仕事を他社に委託するのでしょうか。こちらも正規雇用で人員を確保すると、受注できる案件が減った時などに社内に業務のない人員があふれることになります。そのため、正規雇用の人数は案件が減ったタイミングで暇な人が出ない程度に抑えられてしまいます。逆に案件の工数が思ったよりもかさんだ場合や、想定以上に受注した場合は、二次請けや派遣会社に依頼することになります。

二次請け企業(三次~請け企業)

比較的規模の小さい企業が二次請け企業になることが多いです。こちらも一次請け同様正規雇用の人数は案件数が減っても暇な人が出ない程度に抑えられます。

イメージですが、一次請け企業の案件受注の凸凹を埋めているのがこの二次請け以降の企業で、受注の流れは有機的に絡まりあってぐっちゃぐちゃなイメージです。例えば、同じ案件について、二次請けと、四次請けの依頼が同時に来たり。

被雇用者

被雇用者の多くは安定した収入を望んでいて、日本では正社員になれば解雇されることは滅多になく、スポットでの雇用は数が少なく安定していないため、基本的には正社員を目指すことになります。

ただ、この正社員というのが曲者で、新卒という特殊な条件を除けば、正社員での雇用は各会社が企業規模を拡大してもよいと判断したタイミングにしか転職市場に出てこないため、転職市場に出回る求人の数は、企業数の関係で下に行けば行くほど多くなります。

そのため、安定を求めて正社員にこだわると、給与の安い小さい不安定な企業で労働する可能性が高くなります。

まとめ

日本的雇用の構造的に孫請けは多発せざるを得ないことを説明したかったんですが伝わったでしょうか。

被雇用者の立場からすると、今は運よく良い会社に正社員として雇用された人が旨い目に会う社会です。ジョブ型雇用への切り替えを推し進めているので、今後は実力主義の社会になると考えられます。

まぁ、どちらかというと、運頼みよりも実力主義の方がベターな気がしますが、その実力も本人の努力とは関係ない環境要因で作られると考えると結局運頼みなので、ジョブ型雇用への移行すれば、すべて解決というわけではなくそれによって損する人に対する社会保障はしっかり進めて欲しいなぁと思ったりします。

#日経COMEMO #NIKKEI

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