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カンボジア初の現代的な博物館にて、同僚からクメールルージュの話を聞いた

国立博物館でアンコール時代の彫像を堪能した後に、カンボジア人同僚2人と待ち合わせしてSosoro Museum(貨幣経済博物館)に行き、博物館をハシゴしました。国立博物館編はこちらです。

このSosoroミュージアムは訪れるのは2回目で、ピッタリ2年前の2022年4月に来ています。「貨幣経済博物館」という名前からはあまりその面白さが伝わらないのですが、実際行ってみるとその設立の経緯も展示方法も興味深く、今はプノンペンに住んでいるみなさんにお勧めしています。

SOSOROミュージアム入り口。同僚はSOROROミュージアムと言っていました笑
確かに言いづらいです。

7世紀の金貨がプノンペンのトゥールトンポン市場で売られていた

博物館に入ってすぐに、この博物館の設立経緯が展示されているのですが、2012年にトゥールトンポン市場(通常ロシアンマーケット)にこの扶南時代の金貨が売られていたのが始まりだったそうです。

確かに、私が初めてプノンペンを訪れた2015年頃はロシアンマーケットはまだ骨董品を扱っていて、00年代のホーチミンのレ・コン・キウ通り(骨董通り)のようなちょっと怪しく宝探しのようなワクワク感もある市場でした。

このカンボジアのローカル市場で売られていた金貨は、全く同じものがホーチミン歴史博物館のオケオ時代の展示室にも展示されており(扶南は現在はベトナムとなっているため)またその博物館は1979年開館だったことから、隣の国で博物館に保管されているものが市場で売られていたことになります。

3つの歴史区分

1.扶南からアンコール

1世紀から6 世紀あたりまでの時代のアンコールボレイ遺跡群(Angkor Borei, 現在のタケオ州)で発見された金貨が展示されています。

École française d’Extrême-Orient - École française d’Extrême-Orient https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5688104

上記の地図のように、当時はアンコールボレイからオケオ(Oc Eo, 現在のベトナム、アンザン省)までは直線の運河が繋がっていたそうで、ホーチミン歴史博物館で見られるオケオ時代の展示品とこのアンコールボレイ出土の展示品が一部重なっています。

2.王国から仏領インドシナ

ここではメコン川の物々交換の展示が興味深かったです。米と鉄の棒、米と蜂蜜、牛革と米など、貨幣が流通しない地域での価値の交換を中国、ラオス、カンボジア、ベトナムに至るまでメコン川で行っていたとのことでした。

奴隷と奴隷の交換もあったのですが、中国人、クメール人、少数民族など出身によって価値が違い、生々しかったです。

博物館公式ホームページより

これを見ながら、同僚Vさんが「私の親はクメールルージュでプノンペンから追い出された時に、持っていたお金は紙切れになってしまったので、米を持てるだけ持って行って、それを塩と交換したりして生き延びた」と言っていたのでした。

3.独立・戦争・復興

なぜ貨幣がこんなに大きなテーマとなるのか、そこで理解ができました。カンボジアは、貨幣が価値を持たなくなった時代があったのでした。クメールルージュのことを本気で理解するには、歴史を知るだけでなく毛沢東のイデオロギーまで突っ込まないといけないのだなと感じています。

Vさんは1990年くらいの生まれなので、内戦の直接的な被害は受けてはいないものの、両親から昔の話は聞いていたそうです。お父さんは10人兄弟、お母さんも兄弟は多かったものの奇跡的に全員助かったそうで、その時代としてはかなり幸運だった(しかし親戚の赤ちゃん2人は亡くなってしまった)そうです。オルセイマーケットの近くに家があり、ポルポト政権ですぐに離れ、1979年に戻ってきた時には家は破壊され跡形もなくなっていて、別の場所に住まざるを得なかった、とのことでした。

「だから私の両親は教育を受けていないのです」と非常に流暢な英語でVさんは言い、そのたった数十年の間の激動のカンボジアの歴史と、彼女の両親世代・彼女の世代の違いを感じたのでした。

博物館公式ホームページより。仏領インドシナ時代の紙幣は、ベトナムのホーチミン市博物館の貨幣コーナーで見るものと全く同じでした。

おしゃれな併設カフェ

外気温39度、博物館を出た時にはクラクラしました。まず博物館の外の露店で売っていた棒アイスを3人で食べてから、今度はまた併設のカフェに入り直しました。

棒アイスの6倍の値段のカフェラテ…しかし室内はキンキンに冷えています!

カフェの前には、50,000リエル札を模した柔らかな絵が飾られていました。

これ、この前行ったコーケー遺跡群のワットドムラウの象です。博物館の展示で様々な時代に思いを巡らせた後の、この優しい象と子供にはグッときます。

背景ぼやけさせすぎて、象が写っていませんが、あれが本物です。


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