うつになって気づいた100のこと|私には普通のことができない
私には"普通"のことができない。
元からそうなのか、
うつになってから加速しているのかは
よく分からない。
"普通”のことができている人を見ると
本当にすごいと思う。
普通に仕事をし、
普通に恋愛をし、
普通に生活をしている。
今の私にはそれが
何一つできていない。
なんでこんなにも自分は世の中の
多くの人が普通にやっていることを
することができないのだろうと
心底疑問に思う。
特に恋愛に関してはどうも、
"普通"ではない気がする。
もう5年くらい、まともな恋愛をしていない。
仕事が忙しかったとか
転職で大変だったからとか
それっぽい言い訳をしようと思えばできるが
それらが理由ではないことは
自分が一番よく分かっている。
転職して割とすぐにマッチングアプリに登録した。
長らく浮いた話がない私を心配した妹に
強く説得されたので思い切って始めてみた。
友人や会社の人に見られているのではないか
という不安で居心地はすこぶる悪かったけれど、
世の中にはパートナーを欲している男性が
こんなにもいるのかと、遅ればせながら
日々そのことに素直に驚いた。
逆に、こんなにもそのような男性が
巷には溢れているのに、
なぜ私には相手がいないのか、と
不毛な疑問を抱いてしまった。
素敵だな、と思う人から
いいねされることもあれば
ふた周りほど上の人からいいねされることもある。
本当に色々な人がいる。
私は数ヶ月前、マッチングして
メッセージを重ねた一人の男性と会うことになった。
アプリによれば趣味や価値観が近く
相性がとても良い。
メッセージでのテンポや雰囲気も心地良く
とても好印象だった。
アプリで出会った人と対面するのは
初めてのことだったので、口から心臓が
飛び出るのではと思うほど緊張した。
私は待ち合わせの時間よりも異常に早く
最寄りの駅に到着し、トイレで精神を
落ち着かせた。
大丈夫、なるようにしかならないし。
お互い気に入らなかったら、それまでじゃん。
勉強だと思えばいい。
そんな風に言い聞かせながら、
入念に鏡で化粧と髪型をチェックし、
待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせぴったりに彼は現れた。
初めて会う彼は、アプリのプロフ写真で
見るよりは少し、ゆるりとした印象だった。
挨拶をし、軽く会話をしながら、
彼が予約してくれたレストランに向かう。
丸の内にある、素敵なイタリアンのお店だった。
趣味や好みが似ていたのと、
メッセージで交わした話の続きなどもあり、
話題には困らなかった。
想像した通りの優しくて穏やかな方だった。
ランチをした後、少し歩きましょう、
と言われ、皇居前のあたりなどを散歩した。
1時間くらいは歩いただろうか。
家族の話、仕事の話、好きなことの話、
不思議と話題は絶えなかった。
その後もなんとなくの流れで、
近くのショッピングビルに入り、
何を買うでもなくブラブラとした。
彼が穴場だというビルの屋上テラスに行った。
ベンチに座って綺麗な夕景を見ながら
また色々なことを話した。
仕事熱心で、家族想いな人柄が
会話から伝わってきた。
あたりが暗くなってきて、
さすがにもう解散の流れだろうなと思ったが
「お腹空いてないですか?」
と聞かれ、そのまま夕食に行くことになった。
行きつけの和食居酒屋に連れて行ってくれた。
どれを食べても美味しく、会話も弾んだ。
ここまで自分で振り返ってみても、
なんの問題もない。
なんの問題もないことが、
問題だった。
問題なのは私だ。
彼にはなんの問題もなかった。
そんな彼を、
私は「良い人間だ」としか
思うことができなかった。
もっと親しくなりたいとか
お付き合いしたいとか
そういった類の感情は
一切、1秒たりとも、
湧くことがなかった。
むしろ、会う前にメッセージを
交わしていた時に上昇し続けていた私の
感情線は、会ってからゆっくりゆっくりと
下降し続けていた。
私は異常な人間なのだろうか?
愛情のない人間なのだろうか?
下品だが分かりやすい表現をすると
彼は非常に高スペックな男性だった。
その上、優しく穏やかで相性が合う。
彼にときめかなければ、
いったいこの先誰にときめくというのか。
自分でも困惑した。
後日、彼からまたデートのお誘いがあったが
私は既読スルーすることしかできなかった。
そのことがあってからますます、
街を歩いていてカップルがいると
尊敬と羨望の眼差しで見てしまう。
彼ら彼女たちは
いったいどのようにして出会い、
恋人になったのか。
インタビューして周りたかった。
私は普通に恋愛がしたいだけだった。
しばらくはアプリをお休みした。
私には普通のことができない。
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