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UD Connect : ブランドを生み出し、成長させるためにマーケティング部は何をすべきか

登壇者
ウォーターデザイン代表 坂井さん
Office Wada 代表 和田さん
UT 代表 石川さん モデレータ

テーマ
・プロダクトの想像、ブランドの持続適成長
・ブランドを生み出すためにどう関わるべきか、どうやって育ててくか

▼坂井さん自己紹介

60年代でアメリカへ、メルカリ代表山田さんや猪子さんとブランドデータバンク設立、SFCで教授をやった、KDDIで携帯端末もたくさん作った。
一番大変なの根回し、デザインは簡単(笑)

▼和田さん自己紹介

P&Gで長く務め、傾いているプロダクトを元気にするようなことをやってきた。ダイソン社長、トイザらス社長を経て、コンサルタントとして活躍中。

マーケティングとは消費者の認知に変化を起こすこと

石川:まずはマーケティングってなんなのかという話。僕がマーケティングってこうですよね?って話をした時は「お前は何もマーケティングをわかっていない」と言われました(笑)。それで事前の打ち合わせも含めてマーケティング部をまとめる図も用意したので、これも踏まえてマーケティングとはなんなのかのお話を伺いたいと思います。

和田:マーケティングっていうのは色んな側面があるよね。輪っか(図参照)はブランド育成のためにどこを操作しながらやるかという話ね。ただもっと重要なのはBtoBtoCでどういう変化を起こしてるかを考えること。お客さまが欲しがってる情報をまるで自分が知りたかったから知ったような状況を、しかも好感を持って知ってもらう、というところまでの環境づくりをビジネスとしてマーケティングがやらなくてはならない。知らなければそれが存在するということもわからないでしょ。
まずは「知る」、その次に思うのは「使って見たいな」、つまり自分の体験として取り込みたいなと思うこと。それから、「売上」ね。売上市場主義のみなさんの大好きな「売上」。(会場笑)「売上」に至るためには「知ってもらう」そして「使いたいな」と思う、そしたら「買う=売上」になるわけでしょ。それから使い切った時に「また同じものを手にしたい」と思う継続購入の気持ち。これらのビヘイビアの変化を起こすのがマーケティング。

石川:このことを実際の業務に落とし込んでいくと、図のような仕事の内容になるということですね。

まとめ
マーケティングは消費者の認知に変化を起こすこと。
[ 知る ] → [ 使って見たいと思う ] → [ 買う ] → [ もう一度買う]


ブランドはどうやってできるのか

石川:つぎにブランドはどうやってできるのかとう議題です。

坂井:製品は工場でつくる。ブランドはお客様の頭にあることだから、もしそれを操作しようとなると宗教に近いよね。それほどに商品に対する愛を持つ。そういった愛や欲望を体現するもの。
ブランドを作る時に、よく「あなたの中でブランドが生まれるわけじゃなくて、人々の心の中に生まれるわけだから」って話をする。企業がよくやりがちなのは、新しいブランド作ろう!ってなって作ったはいいけど、既存の製品とよく似たものを作って、カニバって終わる。
例えるなら僕はブランドは熱気球だと思う。宣伝、マーケティング、デザイン、CS、、いろんなエネルギーで噴射しつづけていかないと落ちてしまう。

和田:消費者は日々の生活で様々なプライオリティがある。でも開発者はずっとプロダクトのことを考えてるでしょ。消費者の日々の生活の中でブランドやプロダクトをトップオブザマインドにしたいなら、常に情報をプッシュし続けていかなきゃいけない。「知る。使いたい。買いたい。」の流れにのるように、自発的に「私がこの製品を欲しいんだ」と思わせるようにリフレッシュしていかなければいけない。

石川:そういえば、こないだ見つけたある商品が”運動にも使える、健康促進シーンにも使える、病気の時にも使える”って打ち出してるのをみたのですが、この場合ってその「リフレッシュ」しているってことなのか、一本に絞った方がいいのかどっちなんでしょう。

和田:それは一番あかんパターンだね!(会場笑)聞いただけで、大体あそこかね、って解る。みなさん(会場)も解るってことは、そういう企業が世の中に多分にあるということだよね。あれもこれもと取りこぼしがないようにするのがいいことだと皆さん思ってるんでね。そういうところでポジショニングが重要になる。みなさんはコンセプトという言葉の方が馴染みが深いんでしょうか。「ここにいる」ということは、そこにいない、あそこにもいない、と選択して可能性を捨ててしまうということ。そこがしっかりしていれば、同じ”メッセージ”、ここでいうのは文字ではないですよ、”同じ概念を持ったメッセージ”がその媒体にふさわしいテキストや映像といった絵になって、エンドユーザーに飛んでいく。

まとめ
ブランドは正しいポジショニングを通して人々の心の中に生まれる。
そのために、企業側は発信やメンテナンスし続けていく必要がある。


石川:そういう考えでいくと、僕らデジタル業界の人たちが今みてるコンバージョンレートとか申し込み率って、媒体に合わせてメッセージを変えてくと、やっぱその場では数字が上がるんです。例えば旅行業界とか。でもそれってブランドっていう観点だとどうなんでしょう? 

和田:そんな点の話だけだと私はわからないけれど(笑)。例えば、旅行を通して得られるベネフィットであるでしょ。旅行のベネフィットじゃないわよ、旅行の時に得られるベネフィット。そのベネフィットの定義がずれなければいい。

私がいたP&Gは今年で181年目、ずっと右肩上がり。ブランド戦略としてマーケティングが取り入れられてから80年。80年の間で新しい手法なんかが取り入れられたけど、ポジショニングと呼ばれるものは80年かわってない。181年だろうが80年だろうがずっと検証されてるものだから、ポッと出のあなた(石川さん)が「こっちの方がいいんじゃないですか」って言われてもねえ、そういうことだし。(会場笑)

坂井:P&Gでマーケティングの歴史が80年と聞いて面白いと思ったんだけど、デザインの歴史も100年くらいなんだよね。美術なんかは色々あったけど、ブランディングのためのデザイン技法といのは別であるからね。ブランディング、マーケティング、デザイニングみたいなのが出て来たのはおそらくここ100年のことなんだよね。

和田:デザインというのは、既存のもの(ディファクト)とは違う設計をして世の中に売り出していくってこと。それは土台となるディファクトを超えて世の中を魅了するものをデザインするということだから、未来永劫デザインというのは古びない手法よね。

和田:ブランドが死なないためには、不老不死の命を与えてあげなきゃいけない。未来永劫そのブランドが生きていくためにを考える。そのためにもっと上位の機能を付与してあげなければならない時はそうするし、より崇高なイメージをアップグレードしてあげるのが結果的にブランディングに繋がる。ポジショニングのそういう意味での調整はいい。

石川:そうなると、どんな切り口でポジショニングするかというのがすごく重要そうですね。

和田:うん、まあそうなんだけどね。。実際色んな企業と話をしてみると、どのクライアントもそんなに深く考えてない。(会場笑)この媒体にはこのポジショニング、こっちの媒体にはこのポジショニングって振り分けてるので、力が削がれると。
まあ、それは業務として「もう一歩やりたい」って余力があるのかもしれない、時間もあるしね。ポジショニングっていうのは、さっき坂井さんとも話してたけど、折になって人々の頭の中に溜まっていかなきゃいけない。このブランドって何ですか?と聞かれた時にプランナーは100%知ってる。でも世の中に聞いてみると知らないかもしれない。ブランディングする時に、例えば世の中の30%の人の認知をとるって目標なんだったら、それをとるまでは違うポジショニングに手を出しちゃだめ。

坂井:ジョブスが最初にiPodを売り出す時にUXについて言及してる。これはジョブスがマーケッターとしても優れてたんだと思うんだよね。当時いた携帯会社では日本では当初30万とか50万台iphoneが売れるって見込みを出したが、実際は10億台売れてる。それぐらい誰も当たらないんだ。つまり30万台とか50万台って根拠がないってこと。で、今度パイオニアが似たような商品作ったけど、これが全然売れないんだ。どういうことかというと、本質的にUX自体が商品であるという認識が薄かったんだ。
0-1を作るというのは人々のその後のビヘイビアを変えるということ。この10年ではiPodしかないんじゃないかと思うよ。シビアにいうとiphoneはipodに携帯をくっつけただけだから0.5-1とかだね。

まとめ
0-1を作るというのは人々のその後のビヘイビアを変えるということ。
ブランドが浸透するまでは、他のポジションに手を出さずに注力する。


和田:ビヘイビアの変化はキーよね。みんな営業だから売り上げとか、客単価とか好きでしょ。どこの企業も客単価。客単価ってなんだよ!、客は単価かよって。(会場笑)そうじゃないでしょ、と。お客様が気持ちよく使ってくれて、また使いたいな、関連商品も使いたいな、と思ってくれるのが客単価に繋がるわけでしょ。売り上げは大事だけど、500万円を500万回見ても1億円にはならないでしょ。500万円を構成してる人々のビヘイビアを見て、そこから対策と改善を考えれば500万円が5000万円になるかもしれない。
営業が営業を担当しててお店を見てるんだから、マーケの人は営業を見なくていいんです。P&Gでよくいうのは消費者のことを見てるのはマーケだけだよって。マーケティングは人々をみないと。消費者の気持ちを理解して、消費者の気持ちをより高いところに上げるような施策を打ち出さないと、誰が消費者をみるの?誰が消費者を動かすの?って。私たちは消費者係ですよ。

坂井:そういえば石川さんからの事前質問で「消費者を動かすイノベーションは消費者の中から生まれるの?」っていうのがあったよね。それは結構シンプルで、発見は消費者のインサイトの観察から生まれる。観察はこちらがすることで、消費者はあくまでも消費する人だから。

和田:「事件は現場で起きている」ってすごい言葉よね。たぶん事件が現場で起きてるのを見てる人ってこの中にはなかなかいないんじゃないかと思うの。マーケの人がデータを見ててもそれはデータでしかないし、営業の人が店をみてても、それって店に人を押し込んだだけでしょ? そうじゃなくて現場なんだから、店で買ってお家でどう消費されて、どう満足してるのか見ないといけない。きっかけは毎日の暮らしの中で行動観察することだと思いますね。
どんな人も買っただけでは、欲望は満たされるけど、欲望が高すぎて使ってみてがっかりすることってあるでしょ。そういう人はもう一度買おうと思ってくれない。そうじゃなくて、買う瞬間もワクワクしてて、家に帰って使って見て「やっぱり期待どうりの使い心地だったわ」と、あるいは「これを持ってる自分は素敵な自分だわ」というような、プロダクトの満足感と自分の高揚感がうまく合致した状態が続けばいいですね。

和田:デジタル的にいうと、自分の製品がディファクト(通常化すること)になれば、買われるわけよね。ナンバーワン以外の人はディファクトではない。一番じゃないならディファクトを超えるものを作ってぶつければ勝てるかもしれない。
皆んな毎日自分のディファクトを使ってるわけじゃないですか。ディファクトなら安心よね、信頼あるよね。普通はディファクトを変えようとも思わない。そうじゃなくてマーケティングではそのディファクトを引っぺがして「うちの方がいいんですよ」って新ディファクトを作らなきゃいけない。iphoneが出たばっかの時はみんな慣れてないし、やっぱ今までのケータイがいいよねとか言われてたけど、今やガラケーなんて呼ばれちゃって…。かわいそうよね!(笑)だから、HRも経営も、営業もマーケティングマインドを持つべき。本当に冗談じゃなく、マーケティング組織であるのがいい。

まとめ
営業活動は営業担当に任せ、マーケは消費者係であるべき。
発見は消費者のインサイトの観察から生まれる。
マーケティングは消費者のディファクトを剥がして、新しいディファクを与える行為。


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