元デパート受付嬢の無駄な特技(1) 虚言癖を見破ってしまう
日々、尋常じゃない量のお客様をお迎えしていると「普通の人」と普通じゃない人の区別がつくようになります。
そして「普通じゃない人」にあまり驚かなくなります笑
今日は、そんな中でもめずらしく印象に残った方のエピソードを書きます。勿論年齢や性別、お話した内容は微妙に手を加えてますので個人やデパートを特定することはできません。
それは、60代くらいの物腰柔らかな男性でした。お話いただいた内容はいわゆるクレームでした。
内容は、3カ月前に忘れ物をしたので売り場で問い合わせをしたところどこの店員も態度が悪かった。というものでした。
まずテーラーメイドコーナーで問い合わせたところ、忘れ物をしてから時間が経っていたため売り場のおばちゃんに「そんなもんすぐ戻んなきゃ見つからないわよ」とタメ口で話され笑われた。仕方なく時計売り場でもう一度、問い合わせたが、そこの店員もニヤニヤしながら販売員同士顏を見合わせるだけで、忘れ物カウンターに問い合わせをしてくれなかった。極めつけはそのあとお客様が「では総合受付で聞いてみます」というと、ニヤニヤしていた店員の1人が「無駄だと思いますけどね」と捨てゼリフを吐いた。。という流れでした。
もしこれが本当だとしたら大変です。天下の老舗デパートにこんな失礼な店員がいるなんて。
実際、大手で働く人が多いからかある一定数いるんですよ。失礼な人。
お客様にタメ口を使ってガチギレされているおじさんを1度みました。ガチギレはかわいそうだけど…タメ口はダメですよね。コネ入社なんですかね。来世頑張って欲しいですね。
そう思い、お客様の話は100パーセント信じることを心がけるんですが
この忘れ物の方はちょっと違和感があったんです。
違和感その1
話し方がまとまりすぎている
クレーム言うときのお客様の特徴として、感情的になるあまり話がとっ散らかっちゃう傾向にあります。
お話があっちこっち飛んだり、次々場面が変わったり、次々話に登場する人が入れ替わったり…あれ、今はどの売り場のどの出来事の話してるんだろう?って思ってしまうことが多々ありました。だから責任の所在をはっきりさせるために、こちらからも色々と質問をして積極的に聞く姿勢が大切でした。
あとは意図のよくわからない質問から始まって、よくよく聞いてみたらクレームだった…なんてケースもありました。
最初「この受付って正社員ですか?みなさんとってもしっかりしていますよね。」と言われたので、お褒め頂いたのかと思ってヘラヘラ話していたら「ここの紳士服売り場に明らかに正社員なのに態度悪すぎなおっさんがいますよ!貴方たちから責任者に伝えてください!」というお声だったり。
「ここの百貨店には大きな荷物を持ってはいってはいけない決まりがあるのですか?」と聞かれたので大丈夫ですよー!クロークもありますのでお買い物中は宜しければご利用ください!と言ったら「大きなスーツケースを持ってる人にぶつかられたからお客様に注意喚起してほしい。」というお声だったり。
思い返せばたくさんありますが、
この違和感のあるお客様の話し方はとっても整理されていて、紙に書いて練習して来たんじゃないかと思うくらいに綺麗だったんです。まるで話し慣れてるみたいに。古典落語みたいにスラスラと筋道立ててお話しておられました。
その2
自分がどんな気持ちだったかを最後にまとめて言う
最後「私は私の忘れた物が戻ってこないことではなく、このような気持ちにさせられてしまったことが残念で寂しかったんです。こんな話聞いて頂いて悪いね。」と言ってからお帰りになりました。
結論を最後に言い、結びの挨拶として話を聞いた私に労いの一言…完璧すぎる。すごーい違和感でした。
なぜならクレームを言うときのお客様は自分の気持ちを最初に言う、もしくは何回も言うことが多いからです。
「今日すごく腹が立つことがあったので言っていいですか?」から始まったり
「私の言ってること間違ってますか??おかしいと思いますよね?」と何度も同調を求めたり。
こんな感じがよくある流れなんですが、このお客様はまるで文章にして、台本にして、練習してから来たかのようでした。。
その3
話そのものへの違和感
デパートにだって失礼な店員はいる!と書いた後なので矛盾するようですが、このお客様が立ち寄った場所は皆デパートのなかでも一流の店員がいるはずなんです。
まずテーラーメイドコーナー。スーツをオーダーしようとする層ですからデパートに来ている人のなかでもブランドや生地に詳しく、こだわりのある方が来ます。そのため店員の年齢層は高く、紳士服売り場でリーダー経験のある男性しかいませんでした。つまり「おばちゃん」はいないのです。
次に時計売り場。時計もかなりの高級品です。これもテーラーメイドコーナーと同じでお客様のことをヘラヘラ笑うような人種が働けるところではありません。しかもそんな人が複数人いただなんて、、違和感ありまくりです。
以上3つの理由からお客様のことをほんのり疑惑の目で見ていました。
その後、念のため売り場に共有するべく責任者に電話をしてみました。
責任者の方は言いました。
「その人って、もしかして60代くらいの男性?白髪でハンチングお召しの?」
「はい!そうです!売り場でもお声受けてましたか?」
「いや、そのお客様1年おきくらいに受付に来て、そういう話してお帰りになるんだよ。本当かどうか分からないけど多分嘘だと思う。その都度話の内容も少しずつ変えてくるんだよね。受付の女性に笑われたとか、代表電話にかけたら問い合わせ内容を調べてくれなかったとか、ブランドを探していて近くの店員に聞いたら「そんなこと私に聞かれても」と鼻で笑われたとか…
受付の先輩に聞いたら、受けたことある人いると思うよ。恐らく何処かの商業施設でそういう目にあって、クレーム言ったけど軽くあしらわれて…何かのきっかけでうちに来れば話聞いてくれるって分かっていらしてるんじゃないかな。下手すりゃそのお客様、この辺の別のデパートでも同じ話何度もしてるかもしれないね。。」
やはり、かなり高い確率で嘘を言っていたようでした。
ちなみに受付の先輩にもお話をしてみたところ、「そのお客様会ったことあるかも…」と言った先輩が3人くらいいらっしゃいました。先輩のときは「女性に贈るためのプレゼントを選んでいたら店員が追い出し行為をしてきた」という内容だったそうです。
そんな感じで、色んなお客様を見ていたら嘘を言っている人の話し方が分かるようになってしまいました。
以上、元デパート受付嬢の履歴書に書けない特技です。
嘘はつくもんじゃないですね。。。
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