「Withコロナ式葬式 happy death Day」
葬式も様変わりした。
そもそも集団で移動することも集まることも禁止になったことが、きっかけだった。
その後、ワクチンの開発等で沈静化したが、一度変わった形式は一変した。それだけそれまでの葬式というのは時代にそぐわなかったのだろう。
まず、死者はなくなると、そのまま直に火葬される。死者に対面する機会がなくなった。
そも前から葬式の費用面での不透明性から、明瞭化の運動もあったが、それに拍車をかけた。
当初は、リモートでの参列などが形式上されたがそれさえも無駄だとされ、バーチャル上で葬式がおこなわれるようになった。
チャット上でお悔やみが述べられ、参列者は会場というURLへログインをする。
葬儀業者はその波に乗り遅れた。葬儀業者のいくつかは独自のバーチャル空間サービスを展開しようとしたが、それらは技術蓄積のあるIT企業がサービス提供を請負、さまざまな効率化が図られた。
そもうちにリモート参列さえも、代行するAI ボットが登場した。
お悔やみが述べられ、挨拶をする。テキストか、合成音声が。
香典で電子マネー決済が主流となった。
葬儀を行う葬儀業者も、なるべく費用を抑えるべく、効率化を進める。
ベースをIT企業に取られているので、費用の一部が手数料として持っていかれるのだ。
結果、リストラが進み、古くから業界を知るものは去り、退かれ、古い付き合いの寺のお坊さんにも支払いを省くべく、効率化。
最終的には、お経は音声録音され、よくて合成音声、せいぜい音声配信がせきのやまとなった。
旧態依然の葬式形式は一変し、火葬費用くらいしか、かからなくなり、
最後の決め手は、大手通販サイトの年間契約サブスクリプションサービスの一環に組み込まれたことだろう。
これにより、費用を払うという実感を持つものはいなくなった。
最終的に、
すべては仮想上で執り行われ、参列者もなく、ボットとボットがはなし、
テキストデータが親族に送信された。
親族はその血も気持ちもこもっていないデータをあけることはなかった。
だれもかれも気づいていた。
こんなものに意味はないと。
けれどもそれが言い出せず、形式だけの葬式は毎日行われる。
仮想空間で、無限に近いクラウドの情報空間の中、負荷にならない程度のミニマムな無人の葬式が今日も執り行われていた。
続けられた。
きっと、人がいなくなるまで。
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