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「石ころの価値ーー不可能を可能にする人たち」ショートショート

「できない! というのは簡単です。ですが、できないではなく、どうできるか!? を考えるのが皆さんの仕事です!」

そう男はいった。

「そうはいっても! と思うかもしれません。しかし、そこで一歩踏ん張って、もうひと頑張り、もう一つ努力を重ねることが、組織の発展や個々人の成長につながるのです

みなさんの子供の頃を思い出してください。
自転車に乗ること、泳ぐこと、だれも初めからできませんでした。自転車に至っては、発明されるまで人類が誕生してからだれも「乗ったこと」がないものでした。それが多くの人が乗れるようになっています。

もっと早く走れるように、ということは限界があるでしょう。
けれども目的は早く、疲れずに移動することだとすると、走る必要はないのです。
努力とひと工夫。そうすれば、できないができるに変わるのです!

みなさんの努力次第で、いまできないことが、明日のできることにつながるのです!」

そう言い切ると、拍手喝采。

「やればできるんだ!!」

「やらなきゃ始まらない!!!!」

その反応に男はさらに応える。

「そうです! いままでの延長線上でいいのでしょうか。いや、いいのかもしれません。誰にも否定はされないでしょう! しかし! 自分自身がそんなことを許せるでしょうか!? 10年後、どちらの自分が誇れるでしょうか? いや、だれに誇らなくてもいい。自分が自分で誇れるのは、どちらでしょうか?

もし、ちょっとだけ自分を変えたいのならば、不可能な状況に身を置いてみてください。

そうすれば、死に物狂いで、自分の頭が汗をかかなくてはいけなくなります」

「そうか!! まずは自分をそういう環境に置かないといけないんだ!」

「まずは行動です!! 行動すれば! ここには仲間がいます! 自分も不可能と思えることに挑戦できるのは皆さんがいるからです!!

本当にありがたい!!!

今度は皆さんがその気持ちを感じてほしい! ちょっとだけ勇気を出してもらえたら! わたしとそしてきっとみんなが協力してくれるはずです!!」

「「「おおおおーーーーー!!!!」」」」

会場に熱気が渦巻く、そして、発露する。

ガラガラガラガラ

そんな中、男の前に机が用意された。
そこには大小さまざまな石ころが載っていた。

そしてそこにはこうかかれていた。

【人生チャレンジセット】

「今日は会場の方だけに特別なモノを用意しました。ただの石ころじゃないか? と思った方・・・あなたは正しい!!!!! これはなんの変哲もない石ころです。その辺にある、石ころです。なんの価値もないと言われればそれまでです」

そう言って男は笑い、会場に笑いをさそい、

「しかし、間違っている!!!」

いきなり叱責する。

「これをただの石ころにしているのはあなた自身だ。もし、あなたがこの石に価値を込めれば、これはいくらにでもなる!!!! そう、いくらだって売れる!!!」

そう熱気を込めて発する。

「無理だと思いますか? 難しいでしょう! でも、無理じゃない!!! 無理だとあなたが考えているだけだ!!

逆に考えてください。これが売れたら、どんなものだって売れるでしょう。これが誰にでも価値がわかるものだったら簡単だ。でもそうじゃない。

だからこそ、あなたにとってやる価値がある!!!

あなたの人生を変えるには、このぐらいの逆境が相応しくないですか?

石ころを誰かに買ってもらえるだけの価値をどうしたら作れるか!? いまは思い付かないかもしれない。でも、そのために必死に汗を流す必要が、あなたにはあるんじゃないでしょうか!?」

男の気迫に皆が、静まり返っていた。

誰もが、みな、一様に聞き入っていた。

「もしーー人生を変えたい人は、いえ、変えたいと思っている人がいたら、これをあげましょう。

ただし、タダではないです。タダ同然のものですが、これをタダであげても、なんの意味もない。

一つ。✖️万円にしましょう。いくらでもいいですが、出したぶんだけきっと、あなたちは頑張れる。そして、僕はそんな人を全力で応援します」

男が微笑む。

「一緒に幸せになって、笑いましょう」

そこまで言うと、パチパチと拍手が起こった。

あっという間に石ころの山はなくなった。


男は、いま自分が説明した通り、石ころを預金口座の数字へ変えたのだった。





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