短編📕夢の中の自分は本当の気持ちなのかもしれない

僕は今日、目が覚めた時、涙が止まらなかった。
考えたことが無かった。
起きてすぐに涙が出た。凄く泣いた。
もしかしたら、夢の中の自分が『本心』なのかもしれない。

僕は、本当は…結婚して子どもが欲しいのかもしれないと。
1ミリも思って無かったはずなのに…。
でも、今日の夢が『正夢』になったらと思うと心が満たされる幸せがあった。
そう思っているのかもしれない。

だから、残さなければいけないと思った。
忘れないうちに、この感情が薄れないうちに、
涙の意味が分かっているうちに…。
だって、初めての気持ちを知ったから。
記憶を記録に…。

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夢を見た。

夢の中で愛する女性のお腹に、2人の血が繋がった子を授かっていた。
相手は分からない。顔も見えない。

愛しているなんて恥ずかしいけど、
どこかに特別な想いと、言葉にできない感情を確かに持っていた。
その人の着ている洋服が少し盛り上がっていて、お腹をさすりながら、
「ねえ！今動いたよ！」と、嬉しそうに言っていたこと。
そして両親もお腹を触ってくれたこと。
「女の子だって！！」と、そんなやり取りをしていた。
愛する人の身体が1人では無くて、
少し膨らみ始めたお腹が、とにかく愛おしい。
大事に、大事にしながら過ごしていた。

僕はそこで目が覚めたんだ。
内容はとてもシンプルだけど、
でも『夢』とはいつもデタラメで。
あり得ないシチュエーションだったり。
話が繋がることも無い。
自分が出てきた時ですら、優しくて良い子の時と極悪人のような悪い子の時と。
空を飛んでいたりすることもある。

現実的な夢を見ることは、ほとんど無い。

けれど今日は違かった。
普段、喜怒哀楽が激しく心が不安定な僕が、
別人のようだった。

気持ちが温かくて、穏やかで。
両親が大好きで。
気持ちが温かいと笑顔が増え、不安も無く…。皆んなに優しく接していた。

お腹の子の為に僕が何をすれば良いのか。
それしか考えていなくて。
心も身体も強くなって、人に流されていない自分が存在していた。
ただただ…
『子どもと一緒に生きていきたい』
それが見た夢。
そして僕はとても気持ちが温かくて、穏やかだった。
夢から覚めた時、心が満たされていて、
言葉に出来ない温かい気分になっていた。
もしかしたら、本当の僕なのかもしれない。
本当の僕の気持ちが詰まった夢なのかもしれない…。

きっと人間としてこの世に生まれ、
憧れだったり望んでいた人生そのものを映像として観たような…。
あまりにも幸せな夢だったから、
沢山の涙が出た。
それに、普段の泣き方とは違った。
思い切り叫びたかった。

現実との違いに悲しくなってしまったのだと思った。
夢の中の僕が、本心なのだろうとも思った。

現実は…
・家族とは連絡を取らない
・沸点が分からない父親。用が無ければ近づかないに越したことない
・同じ内容の会話でも機嫌が悪ければ怒鳴られる、機嫌が良ければ話に乗ってくれる
・母親は不器用で、そもそも会話が成り立たない
・必ず誰かと比べられる

誰も悪くないよ。
ただ、理不尽な事で腹が立つことも多く、
僕は正直疲れてしまった。

だから…結婚しなくていい。
子どもも…いい。
だって比べられるから。

それに僕には持病がある。
通院することはずっと続くだろう。

パートナーが出来たとしても迷惑かける前提になってしまう。
縛りみたいなものが嫌で。
自分のことで精一杯なのに、相手のことを想うほどの余裕もない。


どこか噛み合わない家族の中に居ると、
今でも思う。
早く1人になりたい…と。

だから見た夢はきっと、
私の頭と心が手と手を繋いで、
本当の気持ちを教えてくれたのかもしれない。

そして、もしかしたら僕は自分に嘘をついているのかもしれない。
きっと涙は気持ちに蓋をしてしまった僕に、
「もう、その考えは卒業しなさい。自分が自分の心に1番寄り添わなくてどうするんだ」
と…。
本当の気持ちを教える為に出て来てくれていたのかもしれない。

先の人生なんて分からない。
でも、今日見た夢は忘れずに心にしまっておきたいと思った。