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この旅を終わらせてしまう理由がまだ見つからない
決して綺麗とは言えない湘南の海だったけど、あそこで見る夕日は好きだった。
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日当たりの良い室内に柔らかい西日が差し込み、「今日はきっといい空」そう思い立ったら風に乗って自転車を漕いでいく。まだ太陽の暖かさを感じるアスファルトに腰をかけて、夕方5時とかに優雅に砂浜を散歩する犬たちを横目にただただ夕日が海へ沈んでいくのを眺めた。
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「夕日が毎日みたいから海沿いに住みたい」
そんな欲望のままに住む場所を決めた海沿い生活。楽しかった思い出もちょっと苦い思い出も全てがあそこに詰まっている。
わたしたちにはそんな思い出のありかが複数あって、一生住みたい場所を見つけるため長い旅をしている。そんな旅の目的はきっと決めの問題で、一生住みたい場所を選んでいるうちに人生が終わってしまうかもしれないけど、それでもまだわたしたちは旅をしている。
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思い出のありかと、大事にしたい友人が住む大好きな場所が増えていくこの旅を終わらせてしまう理由が、まだ見つからない。
そして今住むこの場所に来て昨日で2年が終わり、3年目の日々がはじまった。
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歩いても走っても自力ではどこへも行けない
人間は本当に無力でちっぽけな生き物だということを痛感した2年前。体力のある限り歩いても走っても、求めるような安心できる便利な世界には簡単には辿り着かない。これが今わたしがいる世界の現実。
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都内から片道5時間の森の奥、谷の中にあるような、そんな場所にご縁があってやってきたけど、横浜生まれ横浜育ちのわたしが瞬時に馴染めるわけもなく来てすぐは帰りたくて帰りたくて仕方なかった。
喧嘩をした日なんて最悪だった。当時は名前すら知らなかったド田舎に甘えられる友人がいるはずもなく、免許もなくて歩いたってどこへも辿り着かない。どんな人生の試練なのだと過去の自分の選択を何度も後悔した。
嫌いになりかけた世界は想像以上に「豊か」だった
不便さに慣れない都会っ子が田舎移住に挫折して、元の暮らしに戻っていくパターンは移住あるあるなのだろう。そういう人たちの気持ちが痛い程よくわかる。
わたしが嫌いになりかけたものは何なのか、向き合えば向き合うほど改善策が見えてきて、なにより新天地でうじうじしている自分が一番嫌いだった。
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そんな感情とは裏腹に、都会から来た誰か分からぬ若者へ、これでもかとばかりの優しさを村の人たちは日々与えてくれる。その愛に応えようとお礼なんてした時には今度は倍以上の愛が返ってきて、どうしたらいいのか分からなくなったりもした。(正解は分からないけど、愛は必ずしも愛で返さずとも労力で返してもいいよね。それも愛。)
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わたしがめげずこの地にいたいと思い続けられたのは、紛れもなくこの村の人々が理由で、こんなにも愛を持って見返りを求めず他人に優しさを分け与えることができる人々ばかりの村があるのだろうかと思うくらいにわたしには居心地がよく、正直内緒にしておきたいくらいずっとここにあってほしい場所。(いい人とか言葉で言い表せない温度はぜひ村で体感してほしい)
だけど知っている、内緒にしなくても大丈夫な理由を。
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都内から5時間もかかる辺鄙なこの場所に本気でやってくる友人たちは「遊びにいくね」と言ってくれた人の10人に1人で、この遠くて何もない田舎というフィルターが絶妙に、本気で今ここを求めてる人たちだけを呼び寄せる。
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顔を上げれば、空が青くて、眺めれば雲がゆったり流れていき、西日に照らされる木々が神々しい。時おり「今日はきっといい空」と思う光の日には、近くのパラグライダーが飛び立つ山の上まで車で駆け上がる。
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空気が澄んでいる日には遠くに広がる都会が見えるくらい全てが見える場所でわたしたちは今日も太陽が沈んでいき、一瞬の空の移り変わりを眺める。
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大切なのって、きっと素直で豊かさを愛でられる心
きっとわたしたちはどこへ行ってもその地での暮らしを楽しめると思う。だけどここを知ってしまったら、これからもみんなと共に生きていたいなと思ってしまう。
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隣のお家の子供たちが年々大きくなって、産まれたと思ったら歩いて自分の意思を表現し始めること。2年前、3年生だった女の子はもう5年生になりお姉さんになって少し気を遣ってくるけど、日曜日の昼下がりに遊ぼうってピンポンしてくること。村の商店で「あら、ななちゃんじゃん!」って村のおばあちゃんが声をかけてくれること。
誰かがわたしの名前を覚えてくれて、家を出れば誰かに会って立ち話をしたり。いつの間にか海沿いに住んでいた頃よりも深い安心感を感じる。
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そして大好きな村の友人は「いつまでもここにいてほしいけど、2人の人生だからこれからが楽しみだね!ずっと2人を見ていたいけど、、。」と言ってくれる。実に素直で愛があって、最高の応援メッセージ。わたしたちの人生の応援団がこの村にはたくさんいる。
数年後の今日は今の自分が作れる未来
未来のことはまだ分からないけど、ここに来てよかった。これだけは心の奥底から素直に思える。
この村の人々も、森の景色も、川で泳ぐ夏も、雪景色で真っ白になる空気が透き通る寒い冬も全部大好きで新しい発見と気付きをわたしの人生に与えてくれた。
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海好きだった、わたしが森に住むなんて数年前まで想像もできなかった。
数年後も想像できないわたしでいられますように。
3年目はもっと素直に表現したいことを形にしたいな、ということでまずは久しぶりに文字を起こしました。
この自然と人々と、日々にいつもありがとう!
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2022.5.16
Kaupili nana.
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