まさか自分が
世界で起こっている色々な事件を見て心を痛めたり、同情したりすることは多いけど、それは画面の奥の出来事で、自分の身にも起こる可能性があるということを私たちはなぜか忘れがちである。
私も、多分に漏れずその1人だった。
「白血病…?」
突然の宣告に、いやいや意味がわからない、と思った。
もちろんこの病気の存在は知っているし、数年前に大ブームになった映画でもその病気をテーマにしたものがあったので、知識がないわけではなかった。
でも、いざ目の前に、身近な存在に同じことが起きると、頭が混乱した。
しかしそれも一時だった。
当時高校一年生だった私、何故か冷静に、その後の自分の生き方について考えはじめたことを今でもはっきりと覚えている。
「多分、お金が厳しくなる。お金のかかる部活はやめて、アルバイトをしよう。」
「心配なのはお母さんだよなあ…お父さん溺愛だから、ダメージを受けそう…どうやって支えようか?」
火事場の馬鹿力ということわざがあるが、人は究極に追い詰められると逆に強くなるのかもしれない(笑)数時間後には冷静になってそんなことを考えていた。
そんな矢先、
響き渡った声。
「容態が急変しました!!」
さっきまでたしかに、「仕方ない、治療頑張る」と悲しげな表情を浮かべていた父の姿は、いつのまにかもうそこにはなかった。
どうやら、脳出血を起こしてしまったらしい。
今でもたまにフラッシュバックする、人形のような姿。
意識が戻らない時間が続いた。
記憶が曖昧だけど、そうして闇の中で震える時間が3日間ほど続いた。
「今夜が山かもしれません」
そう言われて集中治療室に入って見た父の姿が、最後だった。
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