マガジンのカバー画像

ブライガー

46
銀河旋風ブライガーの二次小説BL要素あり
運営しているクリエイター

記事一覧

日の当たる方の君へ

 空き瓶が一本転がっているだけの、J区にしてはきれいな裏路地。ここを抜けてひとつ角を曲がればパーキング。
 J区のパーキングは実にピンキリだ。店舗の無料スペースは短時間ならまあ大丈夫。隕石ごとにたいてい地下に共有しているものは入りやすく安価な代わり、何をされるかわかったものではない。車も人も。それなりのお値段とチップを屈強な警備員に渡すタイプも数あるが、どのコネクションのシマか、時と場合、相性と金

もっとみる
消えないで H2CO3

消えないで H2CO3

 上になり下になり。裏返し表返し。さっきまで甘かった息が忙しく切れる。柔らかく波打つようだった体が、硬く、細かく、跳ねる。
 乱れても、きれい。言っても許されるくらいの仲にはなったと思ってる。男のくせに、って。
 きれいなままで終わんないでよ、ほら。
 珍しく俺を押し返しそうなくらい強ばるのを、開かせて押し入って体ごと。
 押されるままに腰が逃げたりしないキッドが、格好いいと思う。
 格好いい、い

もっとみる

まっすぐ

 ベッドサイドの壁に掛けてあるコレクションの銃の埃をちょっとはたいたら、つい細かい部分の埃まで気になりだした。額を下ろしてまで本格的なクリーニングをするつもりはなく、ベッドに膝立ちのまま中途半端にちょいちょい拭いていく。
 だらだらとそんなことをしていたらボウイがシャワーを済ませて出てきてしまった。
 しまった。俺もまだ風呂上がりでろくに服も着ていない。まるでボウイを待ちかまえていたような有様。

もっとみる
Milky Road

Milky Road

 熟睡とはほど遠そうな、リズムの整わない寝息の果て。もそり、とキッドが寝返りを打つ。

 寝返りなのか、それとも起きていて体の向きを変えているだけなのか。

 眠りに落ちる寸前のぼやっとした意識の中で、ボウイは男性にしては大人しいその寝相の気配を感じていた。

 だるい。なにもしてないのに。つまり隣で寝ている相手と。

 もういちど、ごそり。

 眠い。仕事が、、、しんどかった。

 四人とも別行

もっとみる

PINK!

「どっちが良いかそれぞれ選べってさ」

 ボウイが手にしているのは二着のパジャマ。ミントグリーンにライトグレーのお月様柄がプリントされた一着と、パステルピンクにシルバーのペイント柄の一着。
 どこぞの番組に影響されたお町が、パジャマパーティーをすると言い出したのだ。
 新しいパジャマをプレゼントされてお町の部屋へご招待までされては乗らない手はない。もちろん双子もアイザックも。

「どっちする?」

もっとみる
どこかで響いた銃声

どこかで響いた銃声

※診断メーカー※

【貴方はキッドとボウイで『どこかで響いた銃声』をお題に140文字SSを書いてください】

 街のどこかで響いた銃声に走り出す二人。仕事でもないのにすぐ反応していた。
 走ってからふと、ボウイは舌打ちする。二人で街歩きは久々だったのに、と。
 キッドが急に止まり片手でボウイを制止した。
 現場を窺う引き締まったキッドの表情。斜め後ろからのこの角度。

「やっぱコレ、最高よね」

もっとみる

たった二人の世界

※診断メーカー※

【貴方はKBで『たった二人の世界』をお題に140文字のSSを書いてください】

 ニュースの画面に映る痩せた狼が二頭。病で激減したメキシコオオカミの話題だった。

「よりによって狼かよ」

「どうする?俺とお前でたった二人の世界になっちまったら」

「そ、そりゃ、」

「南の島パラダイス想像してんじゃねーぞ?」

キッドによるサバイバル講義は小一時間に及んだ。

       

もっとみる
★Overflow   The second act

★Overflow The second act

 俺の腹の上に二人分ぶちまけて、息を整える間もなくボウイが囁く。

「もっかい、、このまま、、」

「ねーよ。カートリッジ空だぜ、俺は」

 押せ押せで続行させようと頬をすり寄せてくるボウイに、俺はつまらない仕草で、、つまらないって言うのは、そう、服を着ている時みたいな雑な仕草で、、頭をぽんぽんしてやる。

「うっそだー、まだ余裕で撃てるだろ?」

 ボウイの声からも色気が抜けて、少しだけ体の距離

もっとみる
★Make

★Make

   風に声
   星に面影
   あの日と同じ 月の光
   いつかその指が

「キッドさーん、おっじゃまー」

 上っ調子な声をあげて、夜半過ぎにキッドの部屋へ乗り込んでくる不埒者。
 あと数分もすれば灯りを落とすスイッチに手が伸びる頃合いだったキッドは、ベッドで改めてぐだっと脱力して大きくため息をつく。それが煩わしさから来るものか、それとも安堵なのか、本人も突き詰めはしない。

   嘘と

もっとみる
寄せたらカエシテ

寄せたらカエシテ

 俗にオーバーオールと呼ばれているカプセル形の医療機器から起き上がって、俺はあくびをしながらサイドのワゴンに置いてあった自分の通信機でキッドに呼び掛けた。ここはメディカルルームだ。
 しばらく待ったが応答がない。ハズレ感を味わいながら通話をオフにすると、通信機じゃなくてメディカルルーム内の通話パネルが返事をした。

『ボウイー、そろそろ終わったかー?』

 オーバーオールから出たばかりのパンいち姿

もっとみる

その硝子、あの鏡

 キッドは手元を見ていた。一人掛けのソファーにふんぞり返って、組んだ足を低めのガラステーブルにどかっと乗せて。
 そのテーブルの反対側。ボウイはキッドを見ている。キッドのベッドで足を投げ出し、壁に寄りかかって。手にしているのは何かの拍子に買った立体パズルだ。観光スポットであるビカビカの中で、最もシルエットが美しいと言われているサウスタワーの形をしている。
 キッドの手にあるのはタブレット。手のひら

もっとみる

A A65

 くらっと、、、起き抜けに目眩かと思ってボウイが目を細めたのは一瞬だけだった。

「ちょ、おいおいおいおいっ、、!」

 慌てて掴まる場所を求めた手に毛布がまとわりつき、その毛布の端がベッドのヘッドボードの上の物を幾つか宙に踊らせた。メイがくれた子供らしい鉢植えの造花が天井に向かい、シンが起きっぱなしにしたブロックの車が壁に飛ぶ。壁に激突する寸前で車をキャッチすると、ボウイは今度は慎重に壁に手を付

もっとみる

★Overflow

 広い駐車場の真ん中あたり、ブライサンダーの横でボウイが立っているのが目に入る。そわそわもキョロキョロもせず、ただ、立っている。
 ルチアーノと会った射撃場へ通いはじめて三日目。とうとう呼びもしないのに迎えが現れた。
 まあそうなるだろうとは、思っていた。
 お調子者で、うるさいくらい口数が多くて、いちいちオーバーアクションで、、、軽いヤツかと思っていれば、ウェットでヘビィな裏もあり。今にして思え

もっとみる

Wolfs take a VANILLA

 ジャン・ビーゴの愛人リタが、ウエストJ 区から地球のビーゴの元まで自分を送って行って欲しいと依頼してきた。特に荒っぽい事があるわけでもなく、単なる足代りとして。

「暇だったからいいけどさー、姐さんが出歩く度にタクシーやらされちゃたまんないぜ?」

「今回だけよ。ちょっと急いで帰りたいの。あなたたちに頼めば地球でも月でも直行だもの」

 J 区のお高いホテルの前で、パーティにでも出席したのか落ち

もっとみる