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「つまらない」出会いの後に

今度の日曜日、お店どうしようかな。
楽しみにしてます。お店どうしましょう。
何が好きとか、行きたいお店とかある?

2人での食事を前にして、こういうやりとりが交わされることは多い。相手の好みを知らないような関係からの初めての食事だとお互い気を遣いあって、話を進めるのが難しいこともある。この時の正解について、こうしてほしい!と思うことはあるが、それは置いておいて、さっきの2人の会話に戻る。

駅前のイタリアンとか、あとは学校の近くのカフェとかどうかな?
いいかも。でもそうだ、ちょっと駅から遠いんだけどおしゃれなバルがあって!
いいね。
そうなんだよね、この間見つけて行きたいなと思ってて。ワイン好きなんだよね。
そうなんだね。
ワインとか好き?
好きなんだけど、次の日朝早くてちょっと早めに帰りたいかな。
大丈夫だよ!じゃあ、ワイン一緒に飲めるの楽しみにしてるね。

はじめから行きたいお店があったならそう言ってくれたらよかったのに。でもいつまでも行き先が決まらないくて、気まずい時間を過ごさず済んだのはよかった。そう思って迎えた当日。バルの次に行く予定のバーもしっかり決められていたりする。その話を持ち出す流れもあらかじめ用意していたかのよう。「あ、そういえば、近くにいいバーがあるんだけど」とか、早めにかえりたいという人の話を全く聞いていなかったような誘い文句で、あたかも今思いついたような口調で。

バーを断られた帰り道、誘った方はふとこう気づく。「あれほとんどなにも話してくれなかったな。」

***

そこに、シナリオがあるのを感じるから。そして「もうわたしの中では、あなたの評価は決まってしまっている」シナリオはそう思わせる。

こういうことは、男女の関係以外でも往往にしてある。いくら相手の様子を伺うような言葉を取り繕ったとしても、こうしてほしいんだろうなとか、こう言ってほしいんだろうなとか、選ぶ言葉や文脈から感じてしまうことがある。頭の中のシナリオに合わせて、現実を進めようとしているのが伝わってくる。それは優しさの表れとも言えるかもしれない。答えやすいような質問を選んでくれ、こういう返事が来るだろうなと想像しておいてくれる。答えがすぐには出ないようだと思ったら、こういうことかな?と会話を導いてくれる。

その気遣いに応えるように、期待を汲んで、シナリオ通りに行動することになる。しかしいくら頑張って期待に沿ってもその行動は私の評価を上げることにはならない。それは相手にとってはまったくのシナリオ通りで、私に対する評価が正しかったことを強く納得されるだけだから。

***

私はあなたの気持ちを考えられていただろうか。私が主人公の物語に、申し訳程度のセリフを与えてあなたを登場させていただけじゃないだろうか。

せっかくの出会いが「つまらない」ものだったなと思った時には、そこにシナリオがなかったか、振り返りたい。あなたを「つまらない」人にしてしまったのは、私かもしれないから。

追伸、相手のシナリオに合わせて何も話さない方針は、モテないことないです。


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最後まで読んでいただきありがとうございます。こうして言葉を介して繋がれることがとても嬉しいです。