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じゃんぴんぐまうす 伊藤孝成さんに、デザインのお話を伺いました。

2021年9月17日(金)開催のコミュニティサロンNanairo。
今回は、ゲストをお招きしての回となりました。
お越しくださったのは、グラフィックデザイナーの伊藤孝成さん
ブランディングを中心に、グラフィックデザイン全般やアートディレクションを手がけられています。
Webデザイナーとして、駆け出しの私たちに、伊藤さんのポートフォリオを見せていただきながら、ご自身のご経験など、とても貴重なお話をしてくださいました。

伊藤さんのプロフィール

伊藤さんは、多摩美術大学グラフィックデザイン学科をご卒業され、広告の企画制作会社に入社。デザイナー、アートディレクターのご経験をされた後、じゃんぴんぐまうすを設立。
現在は長野県に移住し、活動されています。

まずは、会社員時代の作品をご紹介くださいました。

広告賞を狙え!

最初にご紹介いただいた作品は、富嶽三十六景をモチーフにした
大手家電メーカーの新聞広告。

波のレタスとナスの富士山だったり…
髪の波と富士山の櫛だったり…

って、文字で書くとなんのこっちゃですね(笑)

富嶽三十六景を思い出してみてください。。。
その波の形。。。
富士山。。。

実際に、レタスを何枚もちぎって、波の形に近いものを当てて組んで、撮影していく。
髪バージョンは、カツラのウィッグみたいなものを設置して、撮影していったそうで。
「これは、レタッチャーさんの腕も良かったので、この出来栄えに仕上がりました。」と伊藤さんはおっしゃいます。

ーレタッチャーの仕事って何ですか?
伊藤さん:レタッチャーは、カメラマンが撮った写真を加工するっていうイメージですかね。画像加工の仕事です。
アートディレクション、アートディレクターは何をやるかっていうと、企画を考えて、コピーライターと一緒に。
コピーライターに「言葉」をお願いして、カメラマンに「こういうものを作りたい」というふうに伝えて、美術さんが作ってくれて、後、「仕上げる」みたいなとこまで。出来上がったものを納品するって感じですかね。
目に見えるもの全部最後責任持ってやるのが、アートディレクター
という職業だと思っていただいて。

これらは、メーカー側に技術や多くの商材があるので、それを新聞広告を使って訴求する。
で、たくさん打ち出す広告ではなく「広告賞を狙え!」のオーダーがあって、それに応えるものを作った作品だそうです。

そんなオーダーもあるのか!と、広告の世界を少し知った場面でした。

365日の三行コピーの広告

そして、驚いたのは、「365日3行コピーの広告」

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毎日、365日、小枠広告に、3行コピーの広告を掲載するというもの。
これは、メーカーの思い入れもあっての企画だったそうで。

毎日、違った3行コピーを考えるライターさんに脱帽の、
365日目に、
365個の小枠広告が新聞の見開き全体をバーン!と覆った見開き広告の、

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圧巻なこと!

これだけのコピーを一人のライターさんが、365日全部作られたそうです。それを聞いたサロンメンバーは…

「いやすごい!やっぱりプロだ!はぁぁぁ。恐ろしい!!」

どういう思いで、このコピーを作られていたのか、ライターさんのお話も伺ってみたいなぁと思ってしまいました。

初めは自ら交渉して、作品作りに取り組んできた

ドラマ広告や電車の中吊り広告、AC広告、海外の広告などなど本当に数々の大きな広告を手がけていらっしゃる伊藤さんですが、駆け出しの頃は、ご自身の作品作りのために、会社でのお仕事以外に「タダで作らせてください」と企業に直接交渉するなどして、作品作りをされてきたそうです。

「作ったやつは差し上げるので、自由に使ってください。その代わり、たわしだけ無償で貸してほしい」と、話を持っていったのは高田耕造商店さん。

名前を借りて、作品作りに取り組んでいたところ、高田耕造商店さんが気に入られて、そこから、メンビジュアルやwebサイトを作ってほしいというお話になり、今もご縁を繋いでいるそうです。

世界三大広告賞 The One showで受賞

そして、この高田耕造商店さんのたわしの広告で、世界三大広告祭の1つであるOneShowでMeritAwardを受賞されています!

大根足ー!
野菜にも体にも優しいタワシ!野菜も洗えるし、体も洗える!

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これは、サツマイモとかごぼうに絵の具をつけて、紙にゴシゴシ押し当てて、ゴロゴロ回転させて出てきたテクスチャを拾って、作られたそうです。
名だたる企業が、この賞に挑んできてる中で、「無償で作らせてください!」の伊藤さんの受賞!
デザインは、ネームバリューでも、お金でもない!ってことなんだなぁ。

「世界レベルの方に、zoomで繋がって、お話を聞かせていただいてる!」
と思うと、すごく贅沢な時間でした。

ーデザインの発想、アイデアが凄すぎる。
 こういう案って、すぐ閃くんですか?

伊藤さん:いや、すぐは全然閃かなくて、もう、うーんうーん唸りながら、やってるのが、現実ですね。

私たちとは、レベルもお仕事のスケールも違いすぎる伊藤さんも
「生み出す苦労」
ここは私たちと同じなんだとなぁと、妙に安心してしまいました(笑)

ブランディング- YAKUSHIMA BLESS-

その高田耕造商店さんの繋がりで、手がけることになったのが、屋久島の
老舗のお土産屋さん。「YAKUSHIMA BLESS」のブランディング
そのお土産屋さんを初めて訪れた頃は、キーホルダーや屋久杉の壺や置物を扱っているような、いわゆる昔ながらの、
「地方のよくあるお土産屋さん」という感じのお店で…。

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伊藤さん曰く「買って帰りたいと思うものがなかった」そうです。
だったら、「全部ブランディングさせて欲しい」とお話をされ、お店のコンセプト、置くモノ、プロダクト品、建物の内装まで全て手がけることになり、この仕事をきっかけに、フリーランスへ転身されたそうです。

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そして、このお土産屋さんに新たに設定したコンセプトは、

もので、ひとで、伝えていく屋久島。

島外の作家さんともコラボレーションして、
屋久島にしかできないものを作っていく、
屋久島の伝統を人やモノで伝える、
屋久島にしかない魅力を発信する
そういうお店、そういう場所にしていこう

と、企画され、“屋久島の香り”のお香や、屋久杉の粉が練り込んである石鹸、屋久島の特産「たんかん」の花の蜂蜜と百花蜜を元杜氏の女性の手によって調合した「合わせ生ハチミツ」といった今までにない商品が生まれたそうです。

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その中でも「屋久杉を磨こう!」のワークショップは、私も参加してみたいなと思いました。
今では伐採できない屋久杉のカケラを、自分で選び、自分で好きな形に磨いて、オリジナルの一輪挿しやお香立て、キーリングなどを作れるそうです。
残念ながら、現在はコロナ禍でワークショップはお休みのようですが、オンラインショップで「おうちでセット」が販売されており、自宅で制作できるようです。

そして、BLESSのロゴマーク。

お店のブランディングを進めていく中で見えてくる課題。
ロゴマークをどうするか考え、提案したデザインキーワードは、

「neo primitive」 "シンプルで原始的なデザイン”

”primitive(原始的なもの、太古の)”なものである象形文字の面白さとBLESSを組み合わせて、島を表現したマークを作りたい、と考えて生まれたのが、YAKUSHIMA BLESSのロゴだそうです。

「B」は、雲とか神様とか。
 字のフォルムからイメージした形。
「L」は木を。
 木が地面から立っている、「立つ」っていう感じからのイメージ。
「E」は手。
 島の人たちの「手」や暮らしを表現。
「S」は川。
 屋久島は、雨が多い”水の島”なので、Sは水を表現しようと。

で、屋久島は、島の形が丸いので、ぐるーっと島を廻れる。
そのイメージで、ロゴもぐるーっと読めるみたいな形にして提案されたそうです。

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そして、ロゴ提案までに至った色々なアイデアやラフを描いたものも見せてくださいました。
本当にたくさんのアイデアが書き込まれたもので、1つのロゴにも、クライアントのことを考えて、イメージして、課題解決に向けて、試行錯誤して作り上げていくんだなと。プロのデザイナーさんのノートを見せて頂ける機会など、そうそうあるはずもなく。
とてもありがたいなと思いました。そんな中、参加者からでた一言。。。

ー絵が下手すぎて、もはや私のラフって一体…???ってなるのですが。
伊藤さん:やっぱ絵が上手い人もいるし。
書けないけど、パソコンで作れる人もいて、それで“イメージ”を伝えることができる人もいたので、別に描けなくても。
「こういうイメージ」ってことは、画像で探してくれば、パソコンで作れれば、それでも全然良いと思いますね。
僕の場合は、何か手書きで書いた方が、イメージが膨らみやすいタイプなんで、そうしてます。

私も壊滅的に絵が下手なので、この質問は本当にありがたかった!
「イメージを伝えられること」それができれば、ひとまず、絵が下手でも大丈夫と伺って、絵の下手さをカバーする「伝える力」で、なんとかやっていこう!と心の中で、一人こっそり決意いたしました。

-駆け出しの私たち、今後どういう取組みをしていったらいいんだろう?
伊藤さん:とにかく、手を動かす。
課題を出し合って、制作するのもいいし、でも、それだと実現性がない。
だったらそれよりも「仕事として」というよりは、知り合いとかの実際のお店のチラシを無償で制作してみる。お金にならなくても、実践練習できるんだったら、まずは、とにかく積極的に動いてみちゃうのがいいと思います。

伊藤さんご自身も、会社勤務の傍ら「無償で作らせてください」とお願いしたところが、最初のきっかけで、その時は、そこでそれを仕事にしようとは思ってなくて、とにかく「練習できるんだったら」という意識だったそうです。実際のご経験からのお話なので、とても響くものがありました。

この日のサロンでは、ここに載せた以外にも喫茶店のロゴ作りのお話やアクセサリーブランドのブランディングのお話、移住されてからの地域でのお仕事のことなど、本当に書ききれないくらいの多くのご経験について、お話しいただき、21:30に始まったサロンも、気づけば深夜をまわっていたほど。伊藤さんのたくさんの作品を拝見して、デザインを作り上げる過程やコンセプト・デザインキーワードをどうやって設定するかなどのお話を伺い、レベルの差に慄くとともに、感嘆と高揚感を覚えた3時間弱でした。
伊藤さん、本当にありがとうございました。


「まずは積極的に動いてみる」

ひよっこのメンバのみんな!頑張りましょう!

                         文:たけお


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