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広島港と、瀬戸内の風景を満喫できる元宇品(もとうじな)エリアの話。

イラスト担当のかわずです。
自分が描いている広島4コマ(うちらのフォークビレッジ)で「ずっと舞台にしたい」と考えていた「広島港」を題材にした短編漫画が出来上がったので、今回は本作に登場する風景を交えながら地元民にとって馴染み深い広島港と、その近くにある「元宇品(もとうじな)地区」の紹介をします。
↓のリンクから作品は読めるので、ぜひどうぞ。


広島の海の玄関口「広島港」

広島市南区にある、広島港宇品旅客ターミナル

全国各地に港があるように、目の前が瀬戸内海の広島にも港が存在します。それが「広島港」。範囲自体はとても広く、海運・物流・貿易が行われたり、豪華客船からローカルな定期船まで、様々な客船が行き来したり、海岸沿いの散策路や公園など市民の憩いのエリアがあったり・・・と、周辺には多種多様な風景が広がっています。

広島駅から広島港行きの路面電車に乗ると、約35分で終点の広島港(宇品)電停。大屋根のついた広い停留所を降りると、目の前には広島港旅客ターミナルが。

ターミナルは2003年に完成した比較的新しい建物で、お土産屋や飲食店も入る3階立て。屋上は展望台となっており瀬戸内海に浮かぶ島々も望めます。その反対側にはマンションや商業施設、飲食店がひしめく宇品エリアの街が。もともと土地が少なく古い家屋の多かった宇品地区は大規模な埋め立て工事や都市整備により近代的に生まれ変わり、今では広島市中心部へのアクセスの良さから居住エリアとしてファミリーにも人気の街です。


広島港から出港する松山行きフェリー

広島港に着岸する、広島ー呉ー松山航路のフェリー

広島港旅客ターミナルからは基本的に近辺の島(世界遺産・宮島行きの高速船もあります)へ向かう船が出ていますが、かつては大阪や九州、韓国の釜山などへの長距離航路も存在していました。

現在唯一存在する県外行きフェリーが、愛媛県の松山市へ向かう松山行きフェリー。松山へは途中呉市の呉港を経由し、3時間弱(少し割高な高速船だと約1時間)の船旅。

「クルマの方が便利なんじゃ?」て声もありそうですがクルマで広島市から松山市へ向かうとなると、まず高速道路で1時間半かけて尾道市へ向かい、そこから1時間かけてしまなみ海道を渡りさらに今治から約1時間かけて松山へ向かう・・・と“コ”の字型の移動となり距離も手間もかかるため、車輌運賃込みでも船に乗っておけば一直線で松山へ行けることから現在でも需要はあるようです(長距離トラックの利用もかなり多し)。

船内には売店、食事エリア、ゲームコーナーなどがあり、ごろ寝できるスペースもあるので仮眠も可能。海の上からの景色も素晴らしく、退屈しません。近年では瀬戸内の船旅をより楽しめる「シーパセオ」なる特別仕様の客船も誕生し、追加料金なしで乗ることができます(1度乗ってみたい・・・)。

そんな松山行きフェリーの乗り場は、ターミナルのフェリー乗り場では一番東寄りになります。その東側にはもう1つ、歴史を感じる建物が。現在のターミナルができるまでのメインターミナルで、松山行きフェリーに乗船する場合はこちらが最寄りの待合所になります。

この趣の良さが、たまらない。

ただ売店等はなく基本皆さん新しい方のターミナルで出発まで過ごされることが多いようで普段は写真の通り、それほど人はいません。以前はこちらにも飲食店(釜山航路の名残か、韓国焼肉店だったはず)や土産店があったりして割と賑やかでしたが・・・路面電車の電停もかつてはこの建物の目の前にありましたが、現ターミナル完成により西側へ移動しています。


都会のオアシス・元宇品地区

ターミナル屋上から。左手奥に見える島が、元宇品。歩いて渡れます。

そのレトロなターミナルからもよく見える小高い丘のようなものが、「宇品」という町の名前の由来にもなった元宇品(もとうじな)地区。ターミナルからも徒歩で向かえますが、広島港電停の1つ前にある元宇品口電停から降りて
もたどり着きます(漫画でも1ページ目1コマ目で描いていますが)。

この元宇品。半島にも見えますがれっきとした「宇品島」という島です。明治時代に港が整備された際に陸続きとなり、現在は小さな橋で繋がれています。元宇品には民家や小学校もあるので人々の日常も普通に存在しますが、森などの部分は「瀬戸内海国立公園」として整備・管理されており広島市中心部のそばでありながら原生林といった貴重な自然が溢れています。

近年では地区内のリゾートホテルがG7サミットの会場となったことで世界中から注目を集める・・・なんてこともあったのでTVで元宇品に触れた人もいるかもしれません。(こんなこと今後あるのだろうか?💧)

サミット開催時には厳戒態勢が敷かれ、パトカーやお巡りさんだらけで物騒だった元宇品も普段は穏やかな時間が流れる静かな場所です。その元宇品の丘の上には徒歩で辿り着ける展望台があり、そこからは広島港を行き来する多くの船を眺めることもできます。ここは自分にとっても、とてもお気に入りの場所で、また特別な場所でもあります。


村下孝蔵さんの歌にも登場する、宇品の風景

実際こんな光景が旧ターミナルでは結構繰り広げられてたのかも…

当サークル「ななほしサミット」は歌手の村下孝蔵さんファン同士の夫婦で活動するサークルです。そんな村下さんは広島で音楽活動をしていたことから広島が舞台の歌も多くあり、デビューシングルのB面に収録されているのが広島港を舞台にした「松山行きフェリー」

そしてその続編的な歌に「丘の上から」があり、自身の代表曲である5枚目のシングル「初恋」のB面にも収録されていますが、その内容が「松山行きフェリーに乗り地元へと帰っていく元カノを広島港から見送る際、照れ臭いので近くの丘の上から彼女の乗るフェリーを見送った・・・」というもの。これは村下さん自身のほろ苦いエピソードをもとに作られたとも言われており、元宇品の丘の上からは、港から発っていくフェリーを眺めることができるのです。

昔はもっと海がよく見えたそうです・・・。

ただ現在は、この展望台からも、元宇品の端にある灯台からも草木がかなり生い茂ってなかなか海もフェリーも眺めることができません。一度だいぶ前に訪れた際には珍しく草刈りが行われており、素晴らしい景色が見られましたが・・・常時整備されているわけではないのが残念です。

この展望台のそばにある階段を降りると、すぐ浜辺に出ます。瀬戸内特有の穏やかな海の上に浮かぶ島々と飛び交う鳥たち・・・美しい景色が広がっており、散歩やジョギング、魚釣り、はたまた日光浴をする人・・・など市民の憩いの場として愛されています。都会の喧騒を忘れ、波の音を聞きながらリフレッシュするにはぴったりな空間です。


元宇品を題材にした漫画を描きたかった

そんな自分にとって特別な場所を、自分の作品のキャラに散歩してもらいたい。ストーリー自体は以前から頭にあったので前回の帰省の際には広島港や元宇品へ出向き、背景用の写真をたくさん撮りました。

関西へ戻ったあとにいわゆる「背景が多めの、旅が大好きな女の子が主役の男性向け漫画」を参考にしながら作業に取り掛かかるも、思ってた以上に作業量の多いこと多いこと・・・。

背景で魅せることが大事な作品になるので普段以上に背景に気合を入れた結果、撮った写真をトレースするにも線の数が尋常じゃなくなり、限られた時間の中では1カットの背景を描くだけでも大変でした。(プロって一体何者・・・?)ただ基本4コマばかり今まで描いてきた人間なのできちんとストーリー漫画を描く良い経験には確実になったかな、と思います。

また、さりげなく当サークルのフリーゲーム「キミまで700km」のキャラも登場させています(もちろん作者のナナさんに許可をとっています)。元宇品には結婚式場もあり、海辺の散策路から海をバックによくフォトウェディングの撮影が行われているのです。


おわりに

地元民の目線から、広島港周辺の風景をご紹介しました。
やはり自分は村下さんが歌い、自分の父親にとっても馴染みがあったであろうかつての宇品の風景に惹かれるので、まだ現役の旧ターミナルには今後も頑張ってもらいたいです。

実はその目の前にはかつて「松山ゆきフェリーのりば」と書かれた味のある大きな立て看板が立っていたのですが、数年前久々の帰省の際訪れた時には残念ながら撤去されていました。どの風景にも永遠なんてないわけですから、その時その時の景色をしっかり味わっておかないとな、と改めて思いました・・・。

広島港も元宇品地区も瀬戸内本来の風景が静かに楽しめる地元民おすすめの素敵な空間です。路面電車やバスで気軽に向かえるので、広島のディープな側面を覗いてみたいと思ったら広島港エリアも旅の行程にぜひ組み込んでみてください。


おまけ

ターミナルから西へ20分ほど歩くとトラックが往来する物流拠点(出島地区)があり、なんとここの商店には広島市周辺では(恐らく)唯一の、うどん自販機があります。

以前この近くのバイク屋のお世話になっていた際によく食べましたが、こちらもかなりディープなスポットです・・・。

最近、1つだった自販機にもう1台仲間が加わったようです。

過去の広島4コマ作品はpixivにて全て読めます↓

過去作をまとめた書籍版もございます↓


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