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noteで文化祭番外篇~小さな一場面物語~

noteの世界で文化祭が開かれている。

賑やかにワイワイと各コーナー。
まだ、見ていない人は覗くといい。
とても素敵だ。


あぁ、楽しい。
noteのみんなのことが大好きだ。

私は確かに、そう思った。


………でも。



私はその賑やかで温かな空気の場所をするりと抜けた。
誰も来ない、使われていない場所。
非常用外階段を登る。

見つかれば叱られる。
わかっているから、猫のように慎重に1歩ずつ。
それに、こういうところには
大抵ヤンキーという種族がいるのだ。
鉢合わせたくはない。

幸い誰もいない。

登り途中の踊り場に、秋の日差しが柔らかく落ちている。
そこに座り込む。高めの壁が私を隠す。
遠くに楽しそうな笑い声や、音楽が聴こえる。
近くの木に止まっているのであろう、小鳥のさえずりが大きく聴こえる。
風が優しく吹いている。

抱え込んだ膝から得られる、自分の薄い温もりと
秋の柔らかな光に暖められ、少しだけ目を閉じる。

それでも、耳は野生動物のように周囲の気配を探る。万が一誰か来たら、すぐに身を隠せるように。

私はずっと、そうだった。

人前で食べ物を食べる事も、目を閉じて眠る事もしなかった。
授業中、すやすや眠る同級生に、よくもそんな無防備に過ごせるものだと思っていた。
給食の時間は地獄。
給食は好きだったが、ものを食べなくてはならない。おかけで、早食いが身についてしまった。

「よく寝ないでいられるよねー」
と笑う同級生に
「無防備になるから」
と答える私の顔は能面のようだったはずだ。

笑うことも無防備だから、笑わない。
そういう時があったのだ。
人は笑わないと、笑い方を忘れる。

「そんな~時代も~あっ~たねと」

ひとりきりの非常階段の踊り場で、つぶやくように歌を歌う。

見上げた空は、透き通るように青くて、季節が冬に向かっていくのを感じる。


あー、真冬はみんなとお餅つき大会かな?

自治会のゴミ拾いのあと、つきたてのお餅が振る舞われるのだがそれが大好きだった。

マラソン大会もあるなぁ。

終わったら豚汁食べるの。みんなの学校はどうだったんだろ?

noteにありもしないイベントに胸を膨らませた事がおかしくてクツクツと笑う。

ひとしきり笑って、ふぅっと息を吐き出した。


もうしばらく、ここにいよう。
どうせもう少ししたら、お尻が痛くなる。
そうしたら、また、あの賑やかな場所に戻って
楽しい楽しいと、笑えばいい。


遠くに聴こえる誰かの声も、近くでざわめく木の葉の音も、どちらも愛おしい気がした。


妄想と事実の入り交じるショートショート。

素敵な文化祭を企画した
ららみぃたんさんに有難う!

そして勝手に番外篇として、誰も来ない場所を書き上げたけれど、きっと許してくれることも、有難う!!笑

各コーナー担当の人も有難う!!


文化祭。リアルでは、専門学校の時に少し。
あとはぜんぜん。

友達の姉兄達の高校へのは行ったことあるけれど。
あと、夫の母校のやつ。


でも、実はどれも少しだけ、怖かった。
私は…10代後半の人間の集団が怖いのだと思う。
今はだいぶましだけれど、どうしても何処かで身構える。

呼び込まれると困ってしまう。
どう体験したらいいのかわからなくなる。
何を食べたいのか…考えられなくなる。

逃げたくなる。

逃げ出した先の校舎裏や、人の居ない校舎内でさえ、人に会いませんようにと緊張している。

人の気配がしたらUターンである。
足音は立てないように。
前を歩く人に気づかれませんようにと祈りながら。

道路でも同じことが起きて、サイクリング途中に不審すぎるUターンを繰り返したりする。

友達がいたり、夫がいると、逃げたりは出来ない。
たまに困る。でも、大抵は護られている感じで、少しだけ緊張をといていられる。


そんな私だから。
想像した。
安心している人達がやっている文化祭。
それでも…
きっと何処かで休憩したくなる。


そうしたら、心地よい秋の日差しが、私を小さな一場面に連れて行ってくれた。


肉体のない電子の海は私向き。
その中でもnoteは面白くて大好き。

これからも、私らしく過ごそうと思った。




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